Sun Set Days
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2002年07月09日(火) 無料の新聞+『ローマ人の物語3 ハンニバル戦記[上]』

 最近、最寄の駅の入り口で無料の新聞を配っている。『HEADLINE TODAY』という名前のその新聞は、なんでも、日本ではじめての無料の日刊ニュース・ペーパー・メディアなのだそうだ。
 無料というのはもちろん収入をスポンサーからの広告収入に頼っているためで、紙面の中には全面広告などもいくつか含まれている。
 実際の紙面は、「Business」「World」「Feature」「Town News」「Shopping」「TV Guide」「Show biz」「Sports」などからなり、それにいくつもの「Ads(広告)」が含まれている。1面と最終面といくつかの広告がカラーで、残りはモノクロの紙面。ヘッドラインという名前の通り、1面左側には「LINE UP」として今日の紙面の紹介を行っている。それを見て、興味をもったところをすぐ読むこともできるというわけだ。
 実際の創刊は15日とのことで、現在配布されているのは創刊記念の「Campaign Issue」と書かれている。
 それなので、実際に創刊された後どのような配布形態をとるのかもよくわからないのだけれど、おもしろいとは思う。もちろん全国紙とは異なるけれど、ニュース内容自体も分量も、短時間にちょっと読むには適しているし、ネットニュースの紙版といった雰囲気があるのかもしれない。
 昨年、「SEVEN」という似たような大きさの100円の新聞が創刊されていたけれど(これはまだあるのだろうか? 最近見かけないけれど)、こちらのほうはどうなるのだろう。


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 8日の夜は、関西から出張でやってきた人を囲んでの、久しぶりの部署での飲み会。ビール1杯+ウーロン茶2杯。


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『ローマ人の物語3 ハンニバル戦記[上]』読了。塩野七生著。新潮文庫。
 3巻目。3〜5がハードカバーの2巻目にあたるのだけれど、その内の[上]では第一次ポエニ戦役が描かれている。
 シチリアとその海域を舞台にした北アフリカの大国カルタゴとの戦いは、紀元前264年にはじまるもので、いまから2000年以上昔ということになる。
 過去の上に現在が連綿と続いているということを日々実感することはなかなかないのだけれど、それでも歴史にまつわる本を読んでいるときには、そういったことについて考える。
 現在はある瞬間に唐突に生まれ出たものではなく、少しずつの改善や改革の上に導かれていっているものなのだということ。
 それだけに一本一本の糸で模様入りの絨毯を織り込んでいくように、簡単にはほどくこともできないだろうということ。


 そして、最初の読者へというところにはこのようなことが書かれている。


 ハンニバルやスキピオをはじめとするこの巻の登場人物たちと私たちの間に、二千二百年の歳月が横たわっているとは思えないほどだ。そして、それを書く私が愉しんで書いているのだから、読むあなたも愉しんで読む権利は充分にある。高校時代の教科書ではないのだ。プロセスとしての歴史は、何よりもまず愉しむものである。
 ちなみに、一年間で世界中の歴史を教えなくてはならないという制約があるのはわかるが、日本で使われている高校生用の教科書によれば、私がこの巻すべてを費して書く内容は、次の五行でしかない。
 ――イタリア半島を統一した後、さらに海外進出をくわだてたローマは、地中海の制海権と商権をにぎっていたフェニキア人の植民都市カルタゴと死活の闘争を演じた。これを、ポエニ戦役という。カルタゴを滅ぼして西地中海の覇権をにぎったローマは、東方では、マケドニアやギリシア諸都市をつぎつぎに征服し、さらにシリア王国を破って小アジアを支配下に収めた。こうして、地中海はローマの内海となった――
 これが、高校生ならば知らないと落第する、結果としての歴史である。これ以外の諸々は、プロセスであるがゆえに愉しみともなり考える材料も与えてくれる、オトナのための歴史である。(15-16ページ)


「結果としての歴史」と「プロセスとしての歴史」という対比は言われてみるとなるほどなのだけれど、結果としての歴史を覚えなければいけない時期はとうの昔に終えているので、プロセスを自分のペースで読書という形で追うことができるのは確かに愉しみであると実感してしまう。前述のように書かれている時代と現在とが同じ線上にあるということを普段はなかなか実感できないでいるのだけれど、そこに描かれている人間は自分たちと同じなのだということはわかり、それだけに、ときに共感したり呆れたり驚いたりすることができる。そして共感したりするためには、テンポやスピードはともかく、細部を知っていくことが必要なのだろう。
 これは、中学時代に三國志がものすごく好きで、けれども歴史の教科書では三国時代と短くしか書かれていなかったのにショックを覚えたのと同じことなのだろうと思う。
 僕が当時愉しんだり共感したりしていたのは、劉備や曹操たちの繰り広げる様々な細部であったわけだし。


 また、この巻でも何かにつけてマニュアルをつくりシステム化してしまうローマ人の特質に触れられているのだけれど(たとえば、軍団編成や遠征中の宿営地建設など)、その理由が指揮官や兵士たちが毎年変わるというローマ独自のスタイルのためだったというのはおもしろい。そのスタイルゆえにローマは仕組み化せざるを得ず、その結果として大国となっていくのだから。
 確かに、誰がやっても同じ結果をもたらすためには、細部までしっかりとシステムを作ってしまいそれを遵守してもらうことが重要だ。
 僕は個人的には(あくまでも個人的には)マニュアルが人を縛るからきらいだというような考えはちょっと違うのではないかと思っているので、これには納得してしまう。
 世の中にはたくさんの人がいて、その人たちに同じことをやってもらいたいと思うのであれば、やっぱりマニュアルやシステムが必要になってくるわけだし。もちろん、それを超えた応対ややり方というものもありだけれど、それはまずシステムをしっかりと運用することができている、という前提の上でのことだと思うし。
 変な話、マクドナルドにはびっくりするくらいの数のマニュアルがあるとのことだけれど、そういったマニュアルがなければ日本だけで何千店舗も展開することなんてできないだろうし、あの入れ替わりのおそらくは激しいだろうアルバイトたちがスムーズに処理を行う事だってできないはずだし。

 それなので、マニュアルに縛られることは嫌いだと言い放ってしまうのを聞くと、ちょっとだけ「うーん」と思ってしまう。それは個性に関する問題とは違うような気がするのだけれど、と。


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 お知らせ

 8月からマクドナルドで59円ハンバーガーがはじまるみたいですね。しかも、今度は平日休日の区別なく。


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