オーストラリアの乾いた大地を疾走するトラックの車内。 「ところで相棒、バックミラーにかかってるこの銀色のメダルは何なんだ?」 「いや、ちょっとしたお守りみたいなもんさ」 「おい、ちょっと待てよ。これ、本物の銀じゃねえか!」 「そんな目で見るなよ。昔、あるスポーツの大会でもらったのさ。そう、俺はオリンピックに出たんだ」 「オリンピック? 冗談よしてくれ。あれは選びぬかれたスポーツエリートだけが出られる大会だろうが。お前みたいに一日中トラック転がしてる奴がどうやってオリンピックに出るんだ?」 「それもそうだよな、ハハハ。」 「わははは」 しかし、遠い地平線を見る運転手の青い瞳には、ある一日の光景が焼きついていた。ありあまる資金で高級ホテルに泊り、薄ら笑いを浮かべながら会場に現れる東洋人のチーム。彼らのほとんどが一年で百万ドルを稼ぐプロの選手だという。 若いオージー達は燃えた。そして、全力で立ち向かい、ぎりぎりの勝利を掴みとったのだ。ほとんどの人間が野球というものを知らないこの国では、誰も彼らを賞賛しなかった。しかし、胸の奥で今も燃え続ける小さな誇りとともに、今日も彼はハンドルを握り続ける。
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