余談ですけど。
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2001年09月08日(土) |
セイレーン、あるいは永遠の一瞬。 |
女の人が騒いでいました。 「ダイヤの指輪がなくなってる」
そこは海で、 地元のヒトだけがこっそり泳いでいそうな 穴場の小さな入り江でした。 連れの男の人が慌てて波打ち際を探します。
海にダイヤなんかつけて入るほうが まちがってるよね、と 私たち家族は砂浜でひややかに見ていました。
指輪はみつかりません。 女のヒトが泣きそうになっていました。 パーマの髪がぬれて、きゅるきゅるに巻いていました。 そのヒトの向こうで、波の色が濃い方で、 みんなの前で、ゆっくり、船がしずみました。
わたしは。 水中眼鏡のガラスで切った手の血を止めるために、 右腕を横断歩道を渡るときのように掲げながら それを見ていました。
…余談ですけど。
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