後ろ姿 - 2003年06月03日(火) 何気ない景色の中に溶け込んだ一つの影は、 その輪郭を知覚した瞬間にコントラストが変化し、 周囲とは相容れぬ像となって視界に浮き上がる。 淀んだ瞳は活気を取り戻し、影を全力で追いかける。 もはや何を以てしても目を逸らすことはできない。 視界に捉えたのではなく、視覚を囚われたのだ。 次の瞬間、影は振り向き、魔力はあっさり解ける。 記憶の像を侮辱されたかのような憤りすら覚える。 彼女であって欲しかった願望と、彼女ではなかった安堵。 交錯する二つの思いのやり場に困り、我を失い立ち尽くす。 似ているだけの後ろ姿でさえ、この身を凍らすのだから、 貴方の瞳に見つめられたら、その声で名を呼ばれたら、 その手で触れられたら、僕はどうなってしまうだろうか。 会いたい、です。心から。
|
My追加 |