以前、わたしが書いた日記を彼女は読んだだろうか。 今は、それを確かめる術も無い。
彼女に、読んでほしいとも思ったが、自分に彼女をこの世界にとどまらせる力があるとも思えず、あの日記を書いたとは言わなかった。
「だれも信じられない。だれもが偽善者にしか見えない」
と、いうようなことを、彼女は言った。
その通り。
この世界は、生きるに値するほど美しくはない。 だれもがそうと知りながら、誤魔化して生きているのに、おそらく、彼女はそれと真正面から向きあってしまったのだ。
彼女が消えて、また少し絶望が深くなり、傾いたこの世界で生きるために、今宵、わたしは、酒を愛した彼女を偲んで飲もうと思う。
|