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書くほどのこともない日常
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2003年10月09日(木) 江戸懐古美白

わたしは、頭部前方の塗料、身体各所に装着する鉱物、布、革製品に愛着を持てない女である。
大抵の基礎化粧品が、肌に合わない、というのを自覚したのは、結婚して、仕事をやめ、滅多に化粧ををしなくなってからである。
ファンデーションを使わず、眉と口紅だけ描くようになり、化粧水や乳液を使うのをやめてからの方が、肌のトラブルが減ったのである。
脂、乾燥、違和感、吹き出物の数々をなんとかするために、何種類の化粧水を試したことか。
金返せ。
いやいや、己が根拠も無く、イメージだけで「今度こそ効く」と自分に言い聞かせてやっていたことだ。

石鹸で顔を洗いっぱなしで放置していたのだが、やはり歳なのか、乾燥を感じるときもある。
一時、古いTシャツで糠袋を作ってそれで身体を洗っていたが、いつの間にかやめてしまった。
此処最近は、糠でパックするようになっていたのだが、この前コンビニで立ち読みしたイブニング連載中の「おせん」が、湯船の中で可愛い柄の糠袋を使ってるのを見て、「お。いいなぁ」と思った。
この糠袋、なにで出来てるんだろう。
生活の総てが半ば無意識にエコロジーなヒロインのことだから、古い着物のはぎれだろうか。
裁縫は苦手だが、小さな袋くらいならなんとかなりそうだ。
日本手拭いで作ってみよう、と思いつつ、ネットを検索してみた。
……流石に、作り方まで紹介してるところは無いか。
江戸時代の娘たちは、七、八歳から母親に縫い物をきっちり仕込まれるものだったらしいから、掌に収まるような小さな袋が如きものの作り方など習うまでも無かったのだろう。
糠袋の出てくる江戸落語なんかも引っかかってきて面白かった。
座布団の中身を出して巨大糠袋にして、湯屋に持ち込む「たらちね」だか「延陽伯」だかを随分前に聞いた覚えがある。
で、あちこち見て回っていたら……糠袋というのは、紅絹で作られることも多かったらしい。
絹と紅花かぁ。糠の保湿・美白効果と相まって、肌に良かっただろうなぁ。
おせんさんが持ってたのも、紅で染めた絹の下着で出来てたのかもしれない。
着物なんか、今まで生きてきて数回しか着たことが無いので、下着のはぎれなどあろうはずもない。
と思ったが、以前中国土産に貰ったシルクのハンカチがあったのを思い出し、箪笥を探って引っ張り出した。
手縫いで袋状に縫い、紐をつけるのは面倒なので、髪の毛を括るゴムで口を縛ることにして、糠を入れ、風呂場に持ち込んだ。

なるほど。

湯船に入れてあちこちこすると、なかなかいい感じである。


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