数日前、ふらりと骨董市に出掛けてみた。
古いものが特別好きというわけではない。 寧ろ、物に対する思い入れがさほどない方なので、古かろうと、新しかろうと構わない。 安くて珍しいものがあればいいな、と思って行ったのである。
そこで、なにに使うものなのか知らないが、黒い鉄製の猿を見つけた。 長い手が、鉤になっていて、掛けられるようになっている。 単なる飾りなのか、それとも他に用途があるのか判らないが、気になったので値段を訊いてみた。
「みっつで千円」
「ひとつでは?」
「四百円」
わたしは、何故か作戦さんには『おっとこまえ』と言われるのだが、買い物時は優柔不断になる。 しかも、この猿たち、よく見ると、ひとつひとつ表情が違っている。 その場では決められず、館内を一回りして戻ってくると、猿は、ふたつしか残っていなかった。
「おねーさん、もう殆ど売れちゃって、こんだけしか残ってないよ」
「あー、じゃ、こっち頂戴」
その後、更に、その辺をふらついて、もう一度前を通ると、あとひとつしか残ってないはずの猿が、山積みになっていた。
……まあ、残り少なかろうが、たくさん残ってようが、気に入ったものだから買ったし、後悔するような値段でもないが……
骨董初心者が受ける洗礼のひとつなのかもしれない、と思うと、面白かった。
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