彼女の言動に関しては驚くまいと思っていたのだが…… またやってくれた。
休憩時間や、仕事を終えた後には、わたし以外は、休憩室で煙草を一服する人が多い。 何故か、喫煙派が圧倒的に多いので、却って非喫煙派の方が肩身が狭いくらいなのだが……まあ、それはいい。 天然娘がまだ十九であるにも関わらず、煙草を喫うのも、まあ、よしとしよう。 わたしは、警察官でも、親でも、彼氏でもないのだから。
「今日、遊びに行くんで、着替えてもいいですか?」
と、煙草を喫いながら言うので、ああ、いいよ。それくらいの間なら待っていてあげるよ、と応えた。 倉庫街とは、こういう場所をいうのだろう、というくらい、周囲には倉庫しかなく、ひと気の無いところで仕事をしているので、暗くなってからのひとり歩きは危険なのである。 しかし、見かけによらずおっとりした彼女が煙草を喫い終わる頃には、喫煙組も含めて、帰り支度が出来てしまった。 それで、彼女は、「あ、やっぱりいいです。帰りましょう」と言って席を立ち、倉庫の外に出た。
が、もうひとりの男性が、来ない。 彼女が、
「ちょっと着替えてきます」
と、いうので、休憩室に戻るのかと思ったら、会社の門の傍で、いきなり脱ぎはじめてしまった。 こ、こらっ。
「あ、大丈夫です。トレーナー脱いで、ジーンズからスカートに履き替えるだけですから」
だから、それが問題だろう。 確かに、寂しくて人通りは少ないが、車は通るし、一緒に帰ることになってる男性はいつ来るかわからんだろう。 それに、まだ秋とはいえ、寒風吹き荒ぶ中、なんで外で着替えるんじゃ。
とりあえず、彼女が着替えてる前に立って、だれも来ないか見張る。 暫くして、
「あ、もういいですー。ありがとうございました」
振り返ると、紫のセーターに、ミニスカート姿になって、腰にベルトを巻いているところだった。 それから、持っていた紙袋から更にブーツを出してスニーカーと履き替えている。
きっちり着替え終わるまで、だれも来なかったが……いいのか。これで。
彼女の行動が理解できないのは、ジェネレイション・ギャップじゃないよなぁ。絶対。
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