2004年11月16日(火)  精一杯の恋文。  





 あたしの口に含んだ、最後の君の体液の味は、
 正直、覚えていない。
 ただ、どろどろとしたものをあたしの口は拒否をした。
 「気持ち悪い」が浮かぶ。
 それでも、あたしは口をあけて君に見せて、
 目を見つめながらそれを流し込む。




 君の"モノ"についた体液。
 舐めてあげようかと思ったけど、そのときはしなかった。
 後に君とのいつものメールで、
 「してくれると思ったのに」そう告げられた。




 君にも意思はあるのか、なんて思った。
 ああしてほしい、こうしてほしい、
 そういう意思を君から感じ取ることはなかった。
 されるがままにされ、望んでいるだろうことをあたしはする。
 さっと手を出し、さっと手を引く。
 君に干渉したいと、何度思ったか計り知れないけれど、
 実際、君の本当の核と言うものに触れたことは、
 無いに等しいと思う。






 君、と言う存在に触れること、
 怖かったけれど、あたしは望んだ。
 君が触れてくれることで、あたしの何かが満たされていた。
 君は滅多に、あたしがしてほしいことをしてくれなかったけれど、
 時々垣間見える君の優しさに、
 あたしはきっと恋をしていた。




 メールだけでつながる関係。
 他の恋人たちは何をしているんだろう。
 毎朝学校へ一緒に来て、
 そして一緒に帰っていく。
 休み時間にたまにおしゃべり、
 彼に冗談を言われて、彼女は軽く彼の腕を叩く。


 そんな光景が、あたしを日々苦しくさせた。
 どうしてもっと近くにいないんだろう。
 口に出したことは、一度も無かった。
 でもきっと、心のどこかで、頭の隅で、
 どうして。と、常に思っていた。





 街中で、手をつないで歩く恋人たちを見ては、
 自分と君が浮かんでくる。
 あたしの右にいない君の存在。
 あたしから、何百キロ離れたところにいる君の存在。
 距離が、数ミリもない時間もある。
 でも、それより多い、何百キロ離れている時間。


 どうしてドラえもんいないんだろ。なんて、
 馬鹿みたいなことを、本気で考えたりもした。













 それでも、君との時間は何より変えがたいもので、
 あたしを見つけて、すぐに頭をなでてくれることは、
 初めて逢った時から、変わることは無かった。
 どんなあいまいな関係になっても、
 よしよし、ってしてくれた。
 君は、本当はわかっているのかもしれないね。
 あたしが、どれだけ君とはなれて苦しいことを。
 それとも、君も同じように苦しいのだろうか。
 「会いたい。」そう言われること、
 あたしはどんな言葉より嬉しかった。


 一緒にいるときは四六時中手を離さない。
 あたしの手にキスをする。あたしの手を噛む。
 目が合えばキスをして、身体中でお互いを確認する。








 そんな時間は、もう傍にはなくて、
 そんな時間は、本当にもう、二度と戻ってこなくて、
 悔しいけれど、悔しいけれど、
 やっぱり君に出逢って、本当によかった。


 つらい時間も、苦しい時間も、
 こんなにも心が痛むことは無かったかもしれない。
 けれど、
 君と出会えなきゃ、間近で愛を感じることは無かったし、
 こんなに温かい人の体温を感じることも無かった。
 君の前で笑って、君の前で泣いて、
 君の前で不機嫌になって、君の前で拗ねた。
 そんな時間は、きっとなかった。






 君と歩いた道や、行った場所、言われた言葉、会話。
 君の部屋、別れ話をしたミスド、きつく抱きしめられた朝6時の改札。
 ココアばかりを飲む君と、オレンジばかりを飲むあたし。
 ずっと離れなかったカラオケと、君の大好きな歌。
 君の歌声と、君の悲しい声。
 最後のデートの帰り、君が嘆いた「寂しい」
 それがどんなに嬉しくて、君がどんなに愛しかったか。
 きっと君は知らない。





 大好きだった。
 


















 もう、君を口に出すことはしないから、
 これ以上、君を思って泣くことなんてしないから、
 この届かない思いを、大好きだったことを、
 君の心に残しておいてください。




 あたし以上に、しあわせにならなくて良い。
 あたしといたときを、次の恋人の前で思い出して。
 そして、あたしをたまに思って。
 あたしを、少しで良い、愛しく思って。
 あんなことをして失うんじゃなかった。そう後悔して。






 君は最悪で、君は馬鹿で、何も考えていないやつだけど、
 でも、全部あたしに似ている。


 違うのは、前向きな君と、後ろ向きのあたし。
 そこが違ったから、きっと離れていく。
 プラスマイナスなら、一緒になれたかもしれないね。













 君とあたしの間に「愛」なんて似合わないけれど、
 あったのはあたたかさ。


 それを一度でも感じてくれてありがとう。









 さよなら、最低男。















  

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ほっとけない 世界のまずしさ 

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