何件目かの不動産屋は、活気に溢れていた。 なのに 何かひっかかるものがあった。
やたら若いにいちゃんが多く、 押しが強く、店長と名乗る奴は言葉使いからノリから 「キャッチ」な男で、 思わず 「あなた調子いいって言われるでしょ」 と 初対面の人間に真顔で言ってしまったほどだ。
こいつだ、こいつが客に「図面は頂きました?」と連呼していたアホ店長だ。
A担当者から最初に希望の物件を電話で聞かれ 細かく説明した後、「すぐ来いすぐ来いカムォーン」と請われ 出かけていったら「担当者はおりません」 「代わりに伺います」「どんな物件をお探しですか」とB担当者。
・・・・・ またいちから喋るんかい。 なんで引き継ぎしとかへんねん。
それを言ったら 申し訳ないと言ったのでまぁ許してやる(甘) で、いろいろめぼしいのを見つけて下見の予約をする。
予約日不動産屋に行くと 「担当のBは本日休み。」と店長がでてきた。 もう どうでもええわ。物件みせてーな。 店長が 「他もいろいろ探してみますねー。どんな物件がご希望ですかー」
・・・・・・・ また聞くか。 来店者カルテみたいなんに、希望かいとけよ。 なんで毎回毎回・・・。(諦)
それでもそこで決めたのは、 年越しの場所をいい加減にきめないと というのと 物件がよかったこと、あと 女子社員たちの対応がよかったからだ。
車に乗って物件を回ったり、夜遅くまでそれにつきあったり それは相手の仕事だから当たり前だが、対応が親切でよろしかった。
最初に対応してくれためがねに事務服のおばちゃんは 決してなれなれしくなく、私が内件する物件を丁寧に説明してくれたり、 「あ、お客様 髪に葉っぱが・・・」とカウンター越しにとってくれたり 物件を見にいく前には「寒いですから予めお手洗いに行かれては如何でしょうか」 と気を使ってくれたり。
おお そうじゃそうじゃ とおちょうずをお借りした。 まぁほどほどに世話焼き、黒い腕カバーでもしてそうな事務おばちゃんだった。 あぁ 営業マン以外は いい。
んで、家に電話がかかってきた。 「私 担当になりましたCと申します(また 違う奴かい)。 契約書書いてほしーので 来店してくれ」という。
「仕事があるので、明後日、明々後日なら行けます」と言うと その日は自分がいない、契約は自分にしてほしい、では書類を郵送する と言う。
なんか ピキッと耳の上で音がしたが、もうここの営業マンには期待しない。 あぁそうですか と言って電話を切る。それが月曜日。
書類が来たのが四日後。おっそー。 しかも、押印して不動産屋に返送必着が翌日。 あほな。保証人に印鑑証明とってもらって印鑑もらって、てなこともあるのに。
いや なによりも同封されている書類に 「重要事項説明書」が含まれているのにびっくり。
これは賃貸する物件の詳細が書面に書かれているものだ。 ココとココに印鑑押せよ と付箋がいっぱいついている。
あー。もう 怒った。 この書類は 宅地建物取引主任が口頭で説明すべきものなのだ。
電話口にでてきたのは例のキャッチ店長。 私「明日が締め切りだが それは無理だ」 店長「あー、それは、最後に鍵渡す時に持ってきたらいい」 私「重要事項説明書、これは郵送はまずいんじゃ?口頭で説明しないとだめでしょ」 店長「お客さまが、郵送しろって言ったから送った」
・・・・・・・・・ 私は一言も送ってくれと言ってない。 4人目の担当者が、てめーが休むから送ってきたんじゃないか。
「これは、宅建主任者が口頭で説明するものですよね。そちらに行きます」 と言ったら 「いつも居るわけではないから、来る日時を決めろ」という。
物件が決まるまでは いつ来られますかいつでもいいですよとか言っといて その言い草はなんだ。
キャッチ「いろいろ出かけてるんすよねー」
てめえ。
わたしは、宅建主任資格持っとるんじゃ!!!
私「宅建主任者が いつもいない? 従業員5人以上の事業所には 宅建主任者が常駐していないといけないでしょう?」
「第一、重要事項説明書を説明なしに郵送だけで済ますってどゆこと? (法律で口頭説明するようになっているのと、 宅建主任者はそれが仕事なので 常にいることが義務付けられている。 第一そこは10人以上従業員がいるので 宅建主任は2人はいないといけない。)
そしてそちらは、宅建主任者がいつもいるわけではないんですね。 はいはい、そうですか。わかりました。
私も 宅建主任資格持ってるんでわかりますが、 それ、おかしいですよね。」
キャッチ沈黙。
それから相手の態度が コロっとかわった。
結局日時を決めてそこの宅建主任者から説明を受けることになり 不動産屋にでかけたら やたら営業マンたちが 親切で キャッチ店長もピリピリしているような。
「わざわざお越しいただいて すみません」とかゆってる。 「では当社の宅建主任者(社長)に説明させますんで・・・」 と出て来たのは なんと
最初に対応してくれためがねのおばちゃんだったのだ。
こ、この人が社長?
宅建主任者証という 免許証の提示も義務つけられいる。 それもちゃんと行う。 そして、賃貸契約に対する説明を書面と口頭をもって進める。
相変わらず親切で、 説明もわかりやすかった。
だけど社長としての威厳はあって 「担当者!」と呼びつけて契約の流れを聞かせる。 店長とC担当者は直立不動で聞いている。
ただ、このおばちゃん社長、恐らくここまでのいきさつは知らないんだろうな。 キャッチ店長のところで 止めているような気がする。 もういーや。 クレームを言ってもらえないのが 客商売にとって痛手なんだよ。
私が説明の合間に質問をすると、 その不動産屋が「しーん」となるのが不思議でおかしかった。
無事に契約を交わし、敷金などを渡したり 事務手続きをしていると、店長が聞いてきた。 「宅建は、一回でとられたんですか?」
今でこそ、3年以上の実務があると、免除される試験があるが このご時世 国家試験なので受験者が多いようで15%程度の合格率か。
当時は5人に1人くらいは合格してたんじゃなかろか。 いい時代だ。 民法とか建蔽率とかの勉強は 知らないことばかりで面白かった。
しかし、建設屋だった父。無資格。(うちは母が持っていた)
大学生の私は 受験何回目かという父親と一緒に試験会場に出かけ、 あらかじめ 「俺をおまえの後ろの受験番号になるように届けよ」 と、カンニングの意志を明確にした父のために、 そうなるように届け出をしたのに
そこで見たものは 一番後ろの私の席と その次の受験番号である父の 隣の列の最前席。
父の寂しそうな背中を見て 心で大爆笑したっけ。 私は一発合格。父は・・・。
さぁ 引越しだ。
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