覚書 春の嵐(ゲルトルート) ヘルマン・ヘッセ 著 高橋健二 訳 より
同時に、バイオリンで即興曲をひいて、瞬間的な落想や多彩な気分の陶酔を味わい、熱中する日もあった。しかしまもなく、それは創作ではなくて、警戒すべき遊戯、耽溺であることを知った。夜を追い、陶酔的な時を味わいつくすことと、敵と戦うように芸術的な形式の秘密を相手にかしゃくなくはっきりと取り組むこととは、別なことであるのに気づいた。その当時すでに私は、ほんとうの創作は人を孤独にし、私たちが人生の快楽からもぎとらずにいられないものを犠牲にすることを要求するということを、いくらか気づいた。
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