トロントにて乗り換え。
覚書(辺見庸 著 独航記 われわれはどんな曲がり角を曲がろうとしているのか より)
僕が戦場に何度か行って感じたのは、非常に身体的なことですね。吐き気がするほどの恐怖感、底無しの虚無感……。おそらくいまの若い人たちは小銃弾というものがどのぐらいの大きさをしているかも知らないと思う。小銃弾が人の身体を貫通したときの穴の具合も知らないでしょう。被弾した男はどういうふうに悶え泣き叫ぶか。それから迫撃砲で吹っ飛ばされた人間の肉というのがどういう色をしているか。ロケット弾が宙を飛ぶときの空気が焼けるにおいがどういうものか。
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