一本のクバの木が北側の庭の隅にある いつからそこにあるかは定かでないが 幾度かの北風に耐えたように南に傾いた姿で踏ん張っている 背丈は三メートルはあるだろうか 幹周りは私が両腕で抱えるにはムリがある 葉は一メートルはあろうか扇を数枚広げた様に上部にある 十メートル越える者があることから彼女は若いといえる
今年になって数個の房を付けていた やがて黄金色の花になり鈴なりの実をつけた 初めてのことに驚きこれからの事を思うと不安でいっぱいになる いつしか子供達は彼女の下を離れ旅に出た 彼女はヤシの仲間らしく子供達に言っていた 雨が降り体が浮くと水と共に川に行き海を越えなさい 狭い庭の出来事である 子供達はいつまでも眼下に留まっている
如何なる場所でも子供達はたくましく生きていくだろう 日の光を欲しがる彼等を見てどんな思いになるだろう 大きな葉を思い切り広げる事ができるだろうか
私は勝手に彼等を集め南側の広い庭に解き放った
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