蜂の王様へ
遠くへ、旅をしようね・・ とっておきの景色をみせてあげるよ。
船に、釣具をつみこんでさ、あの島に渡ろう! 岸壁に腰掛けて、釣り糸をたらそう。釣れるさ。アジや、かわはぎ、ちょっとやっかいなバリ。 いわしだって、釣れるよ。いわしの腹の、青いラインはとっても綺麗なんだから。
潮が止まったら、昼寝中の猫を見て歩こう。島のネコは親戚同士だから、顔が似てるんだよ。
オナカが空いたかい? これはオニギリって言うんだよ。中にはいってるのは、鰹節?昆布?鮭? 梅干はね、釣りの時には持って来ちゃだめなんだよ。 何故って? 師匠が言ってたんだよ。意味までは、教わってないけどね。
・・・風向きが変わったね。 太陽が西に傾いたね。
迎えの船に乗り込む時は、なんだか足取りが重いね。
・・・わかってるよ。その一言が言えないんだって。
二人の「旅」は、決して「暮らし」にはならないんだって。
でもね、「暮らし」は終わったら続けられないけど、「旅」は終わっても、また新しい旅を始めることが出来るんだよ。
思い出は、いくら増えても重くないから平気だよ。 だから また、二人で旅をしようね。
たくさんの思い出たちが、果たせない約束を、過ぎ去る時間を嘆いてもさ。
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