ミロサンか? - 2001年09月24日(月) 「彼女の所にでも行くの?」 ネオンの中、車を走らせる珊瑚が助手席の弥勒に言う。 「ま、そんなトコかな。何か文句でも?」 「も、文句なんてあるわけないでしょ。弥勒クンの彼女じゃあるまいし」 弥勒はちらりと横目で薄く色づいた珊瑚の頬を見遣った。 「そんなに怒らなくたって良いじゃないか。 お前にはこの三連休の間、ずっと付き合ってやっただろ?せめて今晩くらいは…」 「付き合ったって…仕事でしょ! もう、そんな言い方しないでくれる!?それじゃまるであたしたちがデキてるみたいじゃない! 大体、弥勒クンはいっつも…」 早口でまくし立てる珊瑚に耳を傾けているのかいないのか、 弥勒は不意に「あ、そこで停めて」と言い出した。 珊瑚は慌ててウインカーを出す。 「っ…急に言わないでよ」 車を路傍に停めて、ひとつため息をつくと再び機関銃のように文句を浴びせようとする、が。 「じゃ、お疲れ」 弥勒はさっさとドアを開けて出て行った。 突然孤独になることを押し付けられた珊瑚は、 通りに面したケーキ屋に入って行く弥勒を呆然と眺めた。 …… 弥勒は某出版社に勤める駆け出しの編集者。 フリーカメラマンである珊瑚は弥勒の取材に同行することが多い。 現にこの三連休も都内で行われた某イベントを取材する為、ずっと一緒に行動していた。 初めて出逢った時は気さくで感じのいい人だと思っていたが。 一緒に過ごす時間が長くなるほど…親しくなればなるほど… 本当は何を考えているのか判らない。 そう、珊瑚は感じていた。 「ヤな奴…」 弥勒の姿が明るい店内に吸い込まれると、珊瑚は何かをふっきるように車を走らせた。 でも、耳元には弥勒がドアを閉める直前に呟いた言葉がまだ残っていて… 「ありがとう、珊瑚」 …… 「スペシャルモンブランとスペシャルショコラをひとつずつ」 「以上でよろしいでしょうか?」 「それから、スペシャルなあなたをひとつ」 女子高生風のアルバイト店員がおぞましいオヤジギャグに背筋を凍らせているのも構わず、 弥勒はウキウキで店を出て行った。 通りから狭い路地に入って少し急な坂を登り切った辺りに、犬夜叉のアパートがある。 ケーキの箱を大切そうに抱えながら、弥勒はくくくっと笑いを噛み殺した。 連休は仕事だって言った時の、あいつのがっかりした顔… 突然行ったら驚くだろう、絶対… 「弥勒っ、今日も仕事じゃなかったの?」 「お前の為に早めに切り上げたんだよ」 「マジ?」 「ほら、お前の好きなモンブラン♪」 「うわ〜ん♪もー弥勒っ、大好きっ(ちゅっvv)」 それから、あんなコトとかこんなコトをして… ん?じゃあ、明日は朝帰り? うわー、そのまま会社に直行かよ? ワイシャツはあいつのを借りるとして、ネクタイは…持ってんのかな、あの野郎…。 ま、ノータイでもいっか。 でも、こういう時に男同士だと便利だよな♪ 思いっきり怪しげな笑いを浮かべていたら、 道に面した民家の柵から顔を出していた犬にバウバウ吠えられた。 うっせーな、犬っころ。 犬っころ?どっかで聞いたような? 気のせいか…。 弥勒は足早に坂を登って行った。 …… ピンポーン♪ …… ピンポーン♪ 「……はい」 しばらくすると、中から犬夜叉の不機嫌そうな声がしてガバッとドアが開けられた。 「み…ろく、あれ?」 「フン、仕方ねぇから仕事を早めに切り上げてやったんだ」 「マジ?」 「ほら、モンブラン♪」 「うわっ、大好きだぜ、モンブラン♪(ちゅっvv←ケーキの箱に…)」 思い描いていた筋書きとは多少?違ってはいたものの、犬夜叉の満面の笑顔に免じてここまでは許す。 しかし…しかしだ。 弥勒は予想もしていなかった事態に遭遇した。 「犬夜叉ぁ〜?誰か来たの〜?」 可愛らしい声を上げて奥からスリッパを履いて出てきたのは、見知らぬ女で…。 つづく ---------------------------------------------------------------------------- 連休は如何お過ごしでしたか? 遊丸にはあんまり関係なかったです。 フリーな生活も良いのか悪いのか。 今日はアニメがお休みなので、空耳の仕様がありません。 替わりに要らん現代版をお届け致しました。 いや〜それにしても「弥勒クン」って…。 でも、現代モノにすると、本来は使用できないはずのアイテムが使えるので書いてて楽しいです。 来週もアニメが休みなので、このつづきは来週ということで。 22:55。 ...
|
Home--七変化 |