リーマンものか? - 2001年09月09日(日) 深夜の東京。某オフィス街に聳えるビルの一室で。 モバイルの画面を睨み、パタパタと文字を打ち込む男が一人。 それは、珍しく髪をセットしてネクタイまで締めている弥勒。 他の者はこの時間、皆既に帰宅しているのだが、明日の締め切りを控えている弥勒は孤独に残業中。 弥勒はイライラしながらバタンとデスクを手の平で叩き、フッとため息をつく。 どうやら終わりそうにない…。 煙草に火をつけて、胸の奥まで煙を吸い込むと、 思い立ったように窓辺へ行き、ポケットから携帯を取り出した。 ピッ、ポッ、パッ… ---犬夜叉--- ピッ… コール音を聞きながら窓の外に目を遣ると、 どこぞやの橋がブルーにライトアップされて、週末を迎える恋人達を喜ばせている。 RRRRR… 「何で出ねぇんだよ」 RRRRR… 「くそッ」 ブチッと切ろうとした時、フロアの端にあるエレベーターがスッと開く音がして… と、同時に、携帯のコール音が途切れ「ハイ」と聞きなれた声が聞こえてきた。 「犬夜叉ぁッ…」 携帯に寄せた弥勒の唇から驚きとため息交じりの声が零れる。 電話の相手は「クククッ」と笑いを噛み殺しながら、エレベーターの中から自分に向かって歩いて来ようとしている。 「よおッ!…あれれ?今日は随分と男前だな。もしかして俺とデートするため?」 受話口から聞こえてくるふざけた声に、呆れながら答えになっていない言葉を返す。 「何で、会社にまで来るんだよ…」 「おめーが遅ぇから、迎えに来てやったんじゃねえか」 犬夜叉はヘルメットを片腕に抱えながらニヤニヤ笑っている。 「たく、しょーがねえ奴…」 互いの声が聞こえる所まで来ているのに電話越しに会話しているのが馬鹿馬鹿しくなって、 弥勒は携帯をブチンと切った。 本当は約束をボツるなら、電話で「好きだよ」とでも「愛してる」とでも言ってやるつもりだったのだが。 いざこの御目出度い顔を見てしまうと、ついつい冷たくしてしまう。 心の中にはとても温かい灯がともっているのに… 「終わらねぇんだ。朝までかかるかもしれない」 椅子にドカッと腰を下ろして再び画面を睨みつける弥勒。 犬夜叉はそんな弥勒の首に後ろから腕を回して囁く。 「いいよ。ここで待ってる♪」 「集中できないんだよ、お前がここに居ると…」 弥勒はモバイルから目を離さずに言う。 「フン、内心嬉しいくせに。何だよ、この髪…このネクタイ…気合入りまくりじゃん★」 「昼間、ホテルの取材だったんだ。当然だろ」 「へー。でも、仕事のためにこんなに甘いコロンをつけるかな?ン?」 背後から弥勒の首筋に顔を埋めて犬夜叉が満足げな笑みを零す。 ついでにネクタイを緩め、シャツのボタンを二つほど外して、ほどよく締まった胸に手を忍ばせようとする… つづく え゛、つづく? 『雨風君』の連載もまだ終わっていないのに? ところで、最近の河村隆一君はアレでいいのだろうか? いや、好きなんだけどね、結構。 23:10。 ...
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