HIT AND RUN
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この日は、楽しみにしていたライブの日でそれ以外は何も無いはずだった。 何よりもライブだったので、その日はお昼休みに学校に行って、みんなと ゴハンを食べて、午後の授業を受けよう。そんな感じでゆっくりと準備。
学校に行く途中に、友達から「昼にマックを食べたいから買ってきてくれ」 ってメールが入って、私もチーズバーガーとポテトを食べたいなって思ったから 学校のある駅のマックで買って行く。 マックの袋をぶら下げて、自転車で学校まで飛ばす。
ライブがあるからウキウキしていること以外、何もいつもと変わらなかった。
学校に着いて、「買ってきたよ〜」とマックの袋を取り出してお昼休み。 自販機でジュースを買う私に、友達の一人が近づいてこう告げた。
「Nさんが亡くなったんだって」と。
Nさんは50歳くらいのおじさんで、会社を辞めてから家業を継ぐために学校に来た。 (私の通う専門学校はわりとそういう人が多いから年齢がすごいバラバラなのだ) 一人暮らしで、本当は家業なんか継ぎたくなくて、イヤイヤ来ました(笑)って 入学したての頃の自己紹介で言っていたのを凄く覚えていて 定年退職して、趣味の延長で通ってるような人もいれば、このように必要に迫られて 来てる人もいるのか。って思った。
夏休みを終えて、前期のテストを終えて、後期の授業が始まる時にNさんは入院してしまい、 休学という事になってしまった。 だけど、みんな、そんなに悪いとは考えてなくて まぁ、しばらく休んで、来年度の後期授業からまた復活するんだろうなって思ってた。 また、イヤイヤ来ました(笑)って照れくさそうに来年の生徒に自己紹介するんだと思ってた。
10月の上旬にNさんは地元の大学病院から、実家がある茨城の病院に転院するって 聞いて、友達と「茨城に行く前にお見舞いに行こうか」って話した。 話したんだけど、なかなか予定が合わなくてそれは実現しなかった。
そして、それから一月後の思いも寄らぬ知らせ。
私たちは、あの時お見舞いに行けなかったことを悔やんだ。
午後の授業を受けながらも、みんなどっかでNさんの事を考えていた。 楽しかった記憶を思い出していた。 あの席に座っているような気がした。
翌日、Nさんと後期の実習で同じ班になる予定だった友達2人はお通夜に行った。 場所が茨城のすごく遠くのほうなので、みんなが行ける訳じゃ無かったんだけど 「若い女の子が来ればNさんの事だからきっと喜ぶから行ってきなよ」と言った。 2人は大人たちに混じって行ってきた
今日、友達に話を聞いたら おそらく50過ぎのNさんの遺影は38歳の頃のものだったという(笑) 実に12年以上前のもの。 でも、すごくいい笑顔の写真だったんだって。 髪の毛もフサフサしてたんだって。
Nさんの親族一同は、皆Nさんにソックリだったんだって 「うぉう、Nさんがいっぱいいる!!」って思ったらしい。
そんな話をしながら笑った。 いつも楽しい事が好きだったNさんもきっと照れながら笑っているんだろう。
年齢も個性もバラバラのクラスだけど、皆同じゴールに向かって行く。 その途中でNさんがいなくなってしまった事は悔しい。 けど、これから先はNさんの記憶を胸にまた走りつづけよう。
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