紅い猫の落とす影 生きた記録|夕方|明け方
ひとりぼっちでゆっくり歩いていた。 見たこともない人や みたことあるかもしれない人が 次々と僕を追い越していく。 肩が当たっても見向きもせず 点滅した青信号を見て走って横断歩道を渡っていった。 三宅島のアンケートやビラ配りのお姉さん達だけが僕に話しかける。 今度は僕が無視した。 知らない場所じゃないのに 誰もが知ってる場所なのに みんなが通っている場所なのに 知っている人なんて全然居ない。 知っている人は何処に居るんだろう。 知っている人なんて居るのかな? 寂しげな青の空だけが僕を心配して追ってきてくれる。 人なんか頼りたくない。 だから誰にも弱いところなんて見せない。 だけど僕は今日も僕の前で泣いてしまう。 そして僕が僕を慰める。 人が人を可哀想だと思うのなんて ただ自分よりも不幸な人間を見て哀れんで 優越感を得たいだけ。 哀れまれるなんて惨めなだけだから 他人に慰められたくなんかない。 そう思うようにして 明日もひとりぼっちであの街を歩く。
傀儡
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