「カルテット」/鬼束忠
なんだろう、普通に楽しめました。
両親は離婚しそう、姉貴は不良と化している、そんなばらばらな一家の長男・開はバイオリンを習う中学生。 一家がバラバラなのに気づいて何とかしようとする開は、ふと見つけた10年前のおばあちゃんの誕生日に開いた家族の演奏会の写真であるアイデアを思いつく。
両親は音大出、まだ小さい自分たちもいっしょに楽しそうに演奏していたのをみて、もう一度これをやろうとする。 もう、ほとんど離婚をきめている母親を説得するのに一苦労しつつも、なんとか演奏会を開くことにはしたものの、上手くいかない練習が続く。 やはり、心がばらばらになってしまった家族は、その旋律もバラバラになってしまう。 それでも演奏をしてほんのちょっと絆ができたり、でもやっぱり離れてしまったり。結局、すぐに来てしまった演奏会の日は、ぼろぼろの演奏で幕を閉じる。
それからもめげない開。母親にしかれたレールの上には、プロへのバイオリニストへの道もある。自分自身が迷いながら、それでも家族をまとめようとする開には頭が上がりません。
この数百文字の感想文ではかけないんだけど、揺れ動く家族の様子をうまく描いていて、一人一人のキャラクターも、愛らしく描かれていると思います。 音楽的な背景にはあまり詳しくなく、その部分をもう少しきちんと描けていれば、というのと、文章に動きとセリフしかなくて、まるで台本みたいだというところを差し引いても、さわやかな読後感を得られる作品でした。
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