「サクリファイス」/近藤史恵
sacrifice−犠牲。高校英語で覚えた単語だけど、このタイトルから自転車競技は思いつかなかったなあ。自転車競技の奥深さを知った作品。
最近のミステリブームで、この小説はミステリ的な紹介をされることもあるが、決してそういうものではないと思う。普通の小説としてみたほうがよい。
主人公が独特な考え方をもっている。人一倍気を遣って、他人のために犠牲になることの方が楽だという生き方。物語としてそのような人物が出てくると、「なんて頼りないんだろう」と思ってしまうだろうが、逆に言うとドキっとした人も多いんじゃないかなぁ。
しかし、そのような性格も、自転車競技の“アシスト”として活躍する力にはなる。自転車ではアシストという仕事があるらしい。チームとしてエースをサポートするのがアシストの役目。自分が主役になるわけではない、縁の下の力持ちとしての仕事だ。そのポジションとして主人公は成功するわけだ。
なんだろう。ちょっとこの小説を読んでヤキモキしてしまう自分がいたりする。もっと自分の思うまま生きていくことだっていいんじゃないか、とか思ってしまう。だけど、この主人公にはこのような生き方が向いていて、そういう生き方をも肯定するんじゃないかなぁ。
一歩引いて全体を見渡す、ということも重要だし、そのおかげでこの物語の中核をなす部分は解決するんだけど。でも、最後までこの性格に対する不満がくすぶり続けた。
結局何が伝えたい物語なんだっけ(汗
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