「フィッシュストーリー」/伊坂幸太郎
今年最初の1冊。さて、今年も目標50冊。
表題にもなっている「フィッシュストーリー」は、伊坂お得意の時間をわざと入れ替えた作品。もともと短編で、その中が4つのブロックに分かれているようなものだから、それほど大きな話じゃない。仕掛けも実にシンプルだ。
ここでふと考えてみた。この話は時代順に並べたら普通の話として成り立つんじゃないだろうか。 はっきりいってYESである。それ以前に、時間軸通りに正しく並び替えるとかなり面白味に欠ける作品、日の目を見ることはないような作品になる。
じゃあこの作品はなぜオーケーなのか。伊坂はすでに手の内を明かしている時系列を狂わせるという手段を用いるのか。1つには“井坂らしさ”という言葉があるだろう。時系列が狂ってこそ井坂幸太郎だと思う読者も多い。僕もその1人かもしれない。 実際のところどうかというと、僕はこう思う。つまり、各セクションが短い中にうまく納まっていて、なおかつリンクさせる部分が上手いところがよいのではないか。 時系列のトリックに気付いたからよい、というミステリの時代は終わっていて、そのトリックを使うからこそできる、小説だからこそ実現できるような見せ方を追求しているんじゃないかなぁ。
最後はお気に入り作品。どれもよいけど「フィッシュストーリー」はお勧め。あと同じぐらい「ポテチ」もよかった。終末のフールでも書いたけど、最近の伊坂は“ちょっといい話”が多いかもしれないけどね。でもそれが心地いいよ。大体オチは分かっていたんだけど、タイトルの意味に気付けなかった自分は愚か者だ。途中で気付くべき場所があったのに。
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