日記
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2007年03月12日(月) 名著


「若者はなぜ3年でやめるのか − 年功序列が奪う日本の未来」という本を読んだ。

非常に面白い本だった。よくある「最近の若いやつって忍耐がなくてさ〜…」って内容ではない。ちゃんと若い人の視点にもたち,例えば「就職活動が昔と違い今は自分探しとなり,入社後何をやりたいかまで考えなくてはいけなくなったため,若者の就業意識が高くなっている」などと,なるほどと思える分析を色々としている。就業意識が高いのに,多くの会社は年功序列というシステムをとっているので若い世代がやる仕事はハードな単純作業ということになる。そこにギャップが生じて,3年以内に30%が会社をやめるということになる。

ということが一応の本筋。じゃあ今の40歳こえている人達が若いときは就業意識が高くなかったのかというと,これもそうらしい。当時は経済成長の絶頂期。大学生は金の卵と呼ばれ,新入社員獲得のために,各企業とも採用部門なるものをもうけ,大学生を会社の金を使い接待して獲得,場合によっては企業の人間が学生の親にまで挨拶に伺い,人材を確保していた時代らしい。信じられないような売り手市場というやつだ。学生本人は今の学生に比べれば業界研究だとか,自分の今後のキャリアだとか,そんなことは考えなかったらしい。さすがに本当かと疑いたくなるが…。

就業意識が高くないと就職はできないが,若い世代がやる仕事というのは就業意識とはかけ離れた仕事ということになる。でも,じゃあ年取ればそういう仕事もできるようになるのかというと,これもそういうわけではないらしい。実は,もう日本企業が今後高成長する可能性自体が絶望的であり,年功序列制度の維持が困難になっているのだそうだ。

年功序列制度は,若い時の苦労を,歳をとってから役職を与えて返すことが必要になってくる。当然,みんながみんな管理職になれるわけがないなんて社会システムの基礎も無視している。管理職がなければ作ればいい。そのために会社の発展が必要になるわけだ。しかし,グローバル化がすすみ,アメリカのような莫大な儲けをあげた後に何千人規模のリストラを行うような企業と戦うことになった場合,年功序列システムをとっている限りアメリカにはビジネスで勝ち目はない。

成長がなくなった日本では,関連会社を子会社化して,本社で管理職になれなかった人間を子会社の管理職にするなんて天下りも行われている。子会社に勤めているのはまぁ数年前まで大学生という人間だったりするんだが,そういう人間がここの会社の管理職になって大きくしてやるんだ!なんて野望を抱いていたとしたら萎えまくる話だ。それでやめない若者のほうがどこかおかしいと思う。

現在なお続いている不況において,国も企業も新卒の採用を見送る方針を打ち出している。公務員などはそのいい例。公務員を5%減らすということで,新卒の採用数を減らし,自然減で対応するという対策をとっている。だが,親父が公務員だから余計よくわかるんだが,公務員の世界というのはこれ以上ないというほどの年功序列の世界で,僕の親父も30〜40は「親父って毎日23時帰りなんてやっているのに…給料少ないんだな…」ってくらいにはぶりが悪く,50すぎてから急にはぶりがよくなりだすような世界。新卒がもっていく税金なんて民間の新入サラリーマンと大して変わらない。新卒を減らしたからって結局課長部長クラスは減らないんだからトータルとして公務員がもってく税金は今とまったくかわりゃしないのは自明である。大卒の採用獲得数は5%減ると思うけどね。

が,問題は新卒レベルの話ではなく,日本全体の問題に発展しつつあるらしい。企業,政府とも新卒採用を見送り,その穴埋めを大多数を派遣やアルバイトで担うようになった。これによってコストは目減りしたが,それに伴って,企業の老化がすすみだしたのだ。派遣やアルバイトは,ある一定期間でしかそこで働かないからだ。

特に,30〜40世代の正社員がぽっかりいないような企業が多く,40〜50,50〜60が蓄えたノウハウがこのままだと消える可能性があるという。僕はいまさら30〜40を大慌てで雇いなおしても20〜30企業でやるべき下積みをやっていないんだから,ノウハウは伝承されないと思う。

つまり,若者のいない企業には将来性がないから,多くの企業が自滅の道に向かって突っ走っている状況だという。その一方で40すぎた人達は全員管理職にしなくてはいけないから,お金を払わなくてはいけないし…という事態がおきているのだ。

さらに,ロクに若い人を派遣だのフリーターだのにしちゃったから,管理職自体が本来なら新入社員がやってくれそうな仕事をやらなくてはいけなくなった事態もあるという。

つまり,不況における新規採用数のカットによる人員削減で,年功序列制度が崩壊を迎え始めたのだ。

そこで,今多くの企業では年功序列制度にかわる新しい制度,成果主義を考えている。成果主義とは簡単にいえば学校の成績システム,出身校や年齢を問わず,結果さえだせればそれを評価してあげましょうということを行う。本来この制度は若い人にこそ有効に働く。自分ががんばれば20代で幹部だって夢じゃない…。

しかし,それを許さない体質があるという。まず,成果の尺度が違うという点。野球に例えると,今の成果主義は,単純にホームランの数が多い奴をチームの監督にするというシステムだという。つまり,でれば必ずホームランをうつ代打が監督になり,打率は低いが名キャッチャーの選手は監督になれないと。これでは,サーバの保守をやっている人間が出世できるわけがないということだ。と同時に,そういう人間は企業なんてやめて自由にいきよっかな〜なんて現実逃避をはじめることになる。

ということが延々と書いてある本で,結構深い。色々な人に読んで欲しい名著。

ではでは。

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