| 2006年01月31日(火):泣いた |
それは、ごくごくつまらない理由だった。 久しぶりすぎて操作方法がよくわからないゲーム。 どうスタートさせればいいかわからなくて。 skypeで操作を聞こうにもゲームの音量が大きすぎて。 設定をいじっている間に、ゲームがスタートしてしまっていた。
ひとりだけ、置いていかれた。
瞬間、ものすごい勢いで巻き戻される記憶のテープ。 幼い頃のコーヒーがそこにいた。 習い事からの帰りが遅くて、独りだけ買い物に連れていってもらえなかったっけ。 弟ばかりが可愛がられて、家に居場所がなかったっけ。 結婚前のコーヒーがそこにいた。 マリッジブルーにかかって不安でいっぱいだったのに、ずっと放っておかれたっけ。 なのにあのひとは毎晩友達と遊びに行ってたっけ。 不安になって鳴らした携帯にも出てくれなかったっけ。 離婚前のコーヒーがそこにいた。 いつもコーヒーのことばかり考えてるって、あのひとはずっと自分勝手だったっけ。 ふたり一緒に住んでいたはずなのに、こころは独りだったっけ。 煙草と一緒に住んでた頃のコーヒーがそこにいた。 MMORPGにはまった煙草が、どんどん遠くなっていったっけ。 最後には名前も呼んでくれなくなったっけ。
独りじゃないのに、独り。 あんな思いは、もう嫌。
急いでゲームをログアウトした。 寝ると言って回線を切断した。 でも、記憶のテープがエンドレスで再生されて、眠れなかった。
彼に電話した。 どうして待ってくれなかったの。 音量を下げたいから、操作がわからないから教えてと言ったのに。 勝手にスタートしちゃうなんてひどい。 独りにしないで。 独りはもう嫌。 まるで駄々っ子のように彼に当たって。 うわあぁぁん。 そして彼の前で大泣きした。
「こんなことで泣くな、恥ずかしいだろ?」 コーヒーはもう、子供そのものだった。 きっと、買い物に連れて行ってもらえなかった頃まで、幼児退行していた。 痛くて痛くて、涙が止まらなかった。 「わかった、わかったから。 ごめんな」 その一言で、記憶のテープの再生はぴたりと止まった。 同時にコーヒーの涙も止まった。 たとえその「ごめん」が、コーヒーを泣き止ませるだけの口から出任せだったとしても。 ほんの一瞬のうちに、随分と落ち着いた。 電話の後はすぐに寝付くことができ、夢も見ないくらい安眠できた。 あの時コーヒーがほしかったのは「ごめん」の一言だったんだね。
このところずっと、子供みたいになっては彼を困らせてばかりだった。 彼にはついつい甘えすぎてしまう。 彼に謝らないといけない。 大事な彼に、嫌われたくないもの。 |
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