乗った電車が 時速100kmで建物に突っ込んだらどうなるだろう。
なにか事故のニュースを見るたびに 自分だったらどう対応したか。 どうしたら生き残れるか。 側にいる人を守れるか。 私は考える。
電車は100km/h以上の速度で脱線した。 脱線箇所からマンションまでの距離は約57m。 例え、急ブレーキと脱線後の摩擦で 速度が90km/hに落ちても 脱線してから約2.3sec後にはマンションに激突する。 何があったのか理解する時間も 身を守る時間もない。
90km/hで壁にぶつかるとはどういうことか 高速道路などで90km/hで走ることは珍しくないが ぶつかった時のことを想像するのは案外難しい。 分かりやすくするために、 どのくらいの高さから落ちたのと同じか計算してみると 運動エネルギーの式(m*v^2)/2と 位置エネルギーの式mghから 約32mの高さから自由落下し、地面に叩きつけられたのと 同じ衝撃を受けることになる。 ビルにして約10階。 落下地点が固ければ どんな防御姿勢を取ろうと即死の高さだ。
ましてや、車の事故とは違って 電車にはシートベルトなどなく 一瞬のうちに襲い掛かる制御不能の力に ただ翻弄されるだけだ。 吊革などにつかまっていれば 叩きつけられずに済むかと思うかもしれないが 実はそうでもない。 体重60kgの乗客が90km/hの速度で壁に激突し 0.5s後に速度が0m/hになったとすると 運動量の式p=mvと 力積の式N=Ftから 乗客の体は衝突の瞬間、約300kgの重さになったのと同じになる。 両手で吊革にしがみついていたとしても 片手で150kgの体重を支えなくてはならない。 そんなことは世界一の力持ちでもムリだろうし 第一、吊革が切れる。
だからもし、自分が乗っている電車が脱線したら もうとにかく座席で丸くなって 死を覚悟するしかないのかと思う。
こうやって考えると 1両目に乗っていた乗客がほぼ全員即死しているらしい っていうのは悲しいことだけど無理もない話であるし 私なんかはあの2両目から生存者が発見されたことに 逆に驚いた。すごい奇跡だ。 叩きつけられた先が座席だったのか それとも他の乗客がクッションになったのか とにかくすごい奇跡だ。 ほんとうに良かったと思う。 しかし、まだたくさんの乗客が中に残っているらしいし 事故の原因もよく分かっていない。 普段、なんの疑問もなく乗っている電車だけに 2度とこんな事故は起きて欲しくない。
自分の体の上や横で 生き絶える他の乗客を見ながら 救助を待つなんて 私には耐えられるだろうか。
私の大切な人が 性別も判別できずDNA鑑定が必要なほど ひどい死に方をするなんて 私なら耐えられるだろうか。
笑えないね。全然笑えない。
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