ヨウスイさんの家に遊びに行く途中にある 角を曲がった所の歩道にイスが置いてあって 雨が降っていない限りはそこにいつもじじいがいる。 そんでいつも目が合う。 私は車に乗っているにも関わらずだ。 いや私もついつい彼を見てしまうのだけど それにしたってなぜ毎回目が合う? 思うに彼は通行人を観察しているのだろう。
それは慎ましい老後の過ごし方ではあるけども いや。じじい? アナタ明らかに見つめすぎですよ? 食い入るように見すぎですよ? 私は美人な女性でもなければ もの珍しいファッションをしてたり いつも顔に鼻くそつけているわけじゃないですよね?
私も目を伏せるのは なにやら悔しい気がするので いつもじじいの注視を正面から見つめ 自分からは目を逸らさないようにする。 私の何倍生きてきたか知らないが 私にとて色んな意味での修羅場をくぐって来た経験がある。 腰の曲がっじじい如きには負けない。 若者の恐ろしさを見せてやろう。 ガンの付け合いなら受けてたとうじゃないか。
じじいの前に差し掛かる。 じじい私に気づく。 私の目にフォーカスし微動だにしないじじい。 置物みたいに体は動かないのに 首から上だけのこの動作だけは いつもロボットのように正確。 キモイ。 しかしながら全精力を振り絞ってじじいを見つめ返す私。 じじいの視線など跳ね返して見せる。 車を運転していながら前など見ない。 なに見てんだゴルァ。 とばかりにじじいだけを見る。 じじいの前を通り過ぎる約20mの間 無言で見詰め合う二人。 じじいが私の視界から消えるまで やはりじじいは私を食い入るように見たままだ。 またも決着つかず。 手強いじじいだ。 次回こそは。
などと考えながら ふと、じじいの前を通り過ぎバックミラーを見ると じじいまだこっちをみている。
あー。 やっぱこえぇよあのジジイ。 こっち見んなよー。
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