2001年05月10日(木)



北国にもようやく遅い春が来て、
遅咲きの桜が少しずつ色づき始めました。
東京では3月の末にはもう満開でしたから
1ヶ月以上も遅い桜前線の到来です。
函館とか、ここより北の札幌とかでは
もう咲いているんだけどね。
この街は海辺にあるせいか気温が低くて
桜の開花が遅いのです。

でもこれでようやく春って気がしてきました。
今はまだ5分咲きくらいだし、
種類によってはまだ蕾なんだけど
もう間もなくそれらもすべて花を広げるでしょう。
楽しみです。

毎年この季節になると
子供の頃のあの日を思い出します。
淡い思い出ってやつですね。
誰にでもあるでしょう。
僕の思い出とはこうです。

小学生の頃だったでしょうか。
市内にある大きな公園で桜が満開になったということで
家族で花見にでかけました。
それはもう素晴らしい景色でしたよ。
たくさんの桜がピンク色に色づいて。
大人達が酒飲んで騒ぎたくなる気持ちも分かりました。
気分がふわぁ〜っとしてくるんですよね。あれ。

僕は桜をもっと近くでみたいと思いました。
でも花は僕の頭上の遥か上。
もっと近づかなければ。
そこで僕は桜の木に登ることにしました。
普通なら大人が止めるでしょうが
その公園はとても大きくて人気のないところがあったんですね。
誰も邪魔する人はいませんでした。

木登りは得意でしたから
花の見えるところまで登るなど簡単でした。

近くで見た桜のキレイなこと。
心奪われますね。
今でもよく覚えていますよ。
できれば家に持って帰りたかったんですけど
桜の木の枝を折ってはいけない。
ということくらいは僕も知っていたので
時間をかけてその美しさを記憶に留めることにしました。

そうして花を眺めていると
いつの間にか木の下に女の子が立っています。
僕より少し年下くらいでした。
その子は無言で僕をじっと見ています。
整った顔立ちで、かわいい子でした。
目がぱっちりと大きく、肌の白さに桜の桃色が写っているかのよう。
ああ。かわいい子だなぁ。と思った記憶があります。
何か用?とでも言う風に彼女に視線を合わせたのですが
その子は相変わらず僕を見たまま。
僕に興味があるのでしょうか。
それとも自分も木に登りたいのでしょうか。

なにか不思議な間が漂っていて
僕も声をかけることができずにいました。

こんにちわとも言えず、
お前誰?とも言えず。

どうしていいか分からなかったけど
なぜかその子から目が離せませんでした。

そこで僕はなにを思ったか、
桜の花を一輪だけ、そっと摘み、
彼女の方へと放りました。

それはヒラヒラと舞い落ちる花びらと共に
ゆっくりと彼女の足元へ。

それを見届けてから僕は
一輪といえど桜の花を摘んでしまったことに
ちょっと罪悪感を覚え、
自分のとった行動を不思議に思いました。
自分はなにをしてるのだろう?

えも知れぬ自らの感情に動揺していると
その子は足元に落ちた一輪の花を拾い上げ
僕に、にこっと笑いかけると
走って向こうの方へいってしまいました。

その笑顔を見て、
先ほどの罪悪感は消え去り
彼女の消えた方向へ
一人でニヤニヤと笑うのでした。

あっという間の出来事です。

あの時のことは誰にも話していません。
誰にどう話してよいのか
その頃の僕には分かるはずもなかったからです。
その一件は
なんというか。
大部分が心の中の出来事だったので
それを説明する言葉を持っていなかったからでしょう。
今でもそれをうまく説明することはできませんね。


だから桜の季節になるといつもあの事を思い出します。
あの女の子はなんだったんだろうなぁ。
あれから毎年のように
春になるとその木に登ったんだけど
2度とその子が現れることはありませんでした。

不思議で淡い
思い出です。


まぁ、なんですか




































木から下りる時

がっつり落ちましたけどね。


痛かったなーアレ。


オチまで前置き長いとか言うなっ。



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日記才人