ここんとこの円高のおかげで薔薇が安いのはありがたい
北から届いた 春の便り 律儀な女性が覚えてる 酒飲みとの口約束
東風に煽られて 身もココロもへばり気味 見すかしたかの様な 救いの包み
ひとりココロの薄雲を晴らすがごとく 一寸ほど皮を剥き 鬱憤ばらしにしゃかしゃかと
気に入りの皿に 紫さして 刺身にちょちょとつけて 食べてみた
本ワサビの つんと気の強そうな刺激もなく 今のあたしには よい塩梅のやさしい刺激
二度三度 箸を運ぶ そのうちに 憂い が 嬉し に取って変わった
ひとり宴も切なくも淋しくもなく ほのほのと よい酔いかげん
そのうちに あいかたもお帰りあそばし 喰いしんぼの倣いにて 着替えるのもそこそこに 口に 頬張る 北の春便り
物の怪が訪れるには 半刻早い 小さい家の 夜半のこと
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