留名(るな)は、膝よりも低い手摺のこちら側に立っていた。 手摺から向こうは崖であり、もっと向こうには闇に映える住宅の明かりが点々としていた。 彼女のいる場所はコンクリートで固められた平面のところであった。 その辺りはデートスポットになっているらしく、手摺の下には等間隔にスポットライトがあり、カップルたちにムードのある空間を提供していた。 そんな中彼女は一人、その手摺の向こうに見える風景に視線を漂わせていた。
私は留名の右隣りの、彼女の膝より低い手摺の位置に目線を置いた。 そして左上方に視線を向けた。 彼女の程良く肉付きの良い太股が私に迫った。 近すぎて足しか見えなかった。
私は目線を彼女から離れるように僅かに平行移動させた。 今度は彼女の花柄の白っぽいはずのスカートと、そこから伸びる白いはずの二本の足が見えた。 辺りでは穏やかな夜風が吹いており、彼女のそのスカートは重力に逆らうかのように下の方がふわふわと漂っていた。 それに対して、彼女の足は重力に従順なまでに地面に同化していた。 まるで以前からそこに、彼女がいるようだった。 しかし、彼女は私の目線の方へ歩いてきた。 そうか、彼女は動くのだった。 そう思った時には彼女は私の目線の真上に位置していた。 つい私は真上に視線を向けた。
気配を感じたのか、留名は私の目線に気がついた。 彼女は叫ぶことも驚くこともしなかった。 彼女は言った。 「エッチ」 あまりにも使い古されていて、使ってもその言葉の意味するニュアンスがしっかりと思い出されないといった表情で彼女は一歩後ずさり、私の目線を見下ろした。 私の方も、特にそういうつもりで彼女の真下に潜り込み、見上げたわけではない。 しかし、それでも私は男である。 見上げると良くは見えないが見えないが故に想像させるものがあった。(見えないものが見えたというのは表現としておかしいが)
しばらく経って、私の目からは感動の涙が出た。 私の目線を中心に、半径30cm程の湿った円がコンクリートに描かれた。(闇の中にあっても、それはなぜかはっきりと認識することができた) すると彼女は、どこかへ去って行ってしまった。 その様子はまるで速度の速い地面と平行のエスカレーターに乗っているかのようであった。
私は作家だ。 留名というのは私の創り出した架空の人物である。 私はどこかへ行ってしまった留名の名残のようでもある湿った円を見つめ、彼女を想った。 次の瞬間、私はその湿った円の中に溶けるように染み込んでいった。 その様子は温めたトーストの上に乗せたバターのようであった。
―END―
ついしん ある社会人(私は・・・)の友人のHPを見ると、忙しそうでも面白そうな生活を送っていそうだなーと思わず自分のどんよりとした生活と比べてしまい愕然とする。
ついしん2 先月末に受けたある会社の最終試験の日時がやっと判明。 忘れ去られたのかと冷や冷やしていたのでほっとする。
ついしん3 そろそろ漫才の練習をしなければいけない。 ネタは完成していない。
ついしん4 今、午前5時13分だ。
ついしん5 さて、少し小説でも読むか。
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