僕の家には何かのお店でもないのに看板がある。 普通の家にはない。 どんな看板かというと<父親家出中>という言葉が書かれたものだ。 ちなみに父は三日前に家出した。 実はこの看板は僕のお母さんが昨晩誰も見ていない隙に設置したつもりのものだ。 <つもり>というのは僕が目撃したからだ。 なぜ誰も見ていない隙に設置するつもりだったのかが分るのかって? それはお母さんが夜中家族や近所の人達が寝静まる頃にそれを設置していたからだ。 母は誰に何の為にそれを設置したのだろう? 確かにおかげでこそこそと近所の人達が<あそこの○○さん家の旦那さん家でしたらしいわね>というようなことを話すことはないだろう。 それに近所の人達は誰があの看板を設置したのかをきっと知らない。 たぶん僕がやったと皆は思うだろう。 僕もそう思われたい。 子供がやったことだと思われる方がお母さんの気が狂ったと思われないのでいい。 どうせ家出したことは日が経てばバレるのだ。 バレるなら早い方がいい。 しかし今日中にその看板が外されなければ不自然だ。 僕がそれを設置したとすれば、お母さんがそれに気づいて外さないわけがない。 いや、あの看板を見るなり外すお母さんであってほしいのだ。 だから今夜、僕はあの看板を外すつもりだ。
―END―
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