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『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子 2012年03月31日(土) チェスの話、ということだけを知っていて読み始めたのですが、最初のチェスのコマの紹介だけで泣きそうになってしまって。私の涙腺はかなり壊れていると思います(笑) でもその短い文章だけで、その奥の物語が伝わってきて、ぐっときました。最初の方に象のエピソードが出てきますが、少年は乗り物の中で、大好きな象の乗り物にだけは乗らないというところが、彼がどういう人間かをすごくよく表している気がして、好きです。 前半部、チェスと出会い、バスの中でマスターと育まれるしあわせな時間がなんとも言えず素敵です。中盤からは涙なしで読み進めるのが難しくなりますが、これはきっと不幸な物語ではないのだと思います。 小川洋子の作品は、硬質で冷たく、丹念に作られていて美しい、そんな印象を受けます。それが私にとっては少し遠く感じられていたのですが、『博士の愛した数式』と、これは、最初からすっと入ってきました。 何度も思い返して味わいたいような一冊です。 ★★★★☆ |
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