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「密やかな結晶」小川洋子 2005年11月19日(土) 内容(「BOOK」データベースより)記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。 -------------------------------------- タイトル通り、静謐で硬質で端正で綺麗な原石を見ているような物語でした。 いろいろなものが消えていく島。物質が消えていくのと共に、人々の中からもその物が消えていく。その不思議な感覚は、一人の人間に起きるのではなく、島全体の人に起きるというのがおもしろいことです。もしこれが一人の人間に起きる現象だったら、まったく違う話になっていたんでしょう。 そしてまた、その現象が起きない人間もいるということ。 小説家である主人公の「わたし」の担当編集者もその記憶をなくさない人間だったために、隠れ家に匿うことになります。ここらへんがなかなかドキドキします。 そして、母の残してくれた、消えてしまったものたち。ここらへんはクラフトエヴィング商會を思い出しますね。 記憶をなくさないことから、記憶狩りから逃れるために隠れなければならない人たちと、いろんなものをなくしていってそれを悲しむことすらできない人たち。 これは、どちらがしあわせなんだと思います? 私は、いっそなくしてしまいたい。なくしていく人を見ているのはつらい。 悲しむこともできないくらいに消えてしまうなら、羨ましいとすら思う。 記憶というのは悲しいものです。 |