言の葉
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小話をひとつ
「実は先週の日曜日に見合いをしたの」 2年前に一言もいわず ボクの目の前から去っていった元彼女は 携帯のメールでそう告白した
「なんで昨日食事した時に言わなかったの?」 「だってなんとなくいいにくくて…」
携帯の小さな液晶に浮かぶ文字は 彼女の表情は伝えてくれない
バックライトが消え暗く沈んだ液晶画面に 歪んだボクの顔が映る
見合い
その言葉にこめられた意志と意図に気圧されて ボクは何もいえなくなってしまった
以来2か月 ボクたちは生の言葉を交わすことなく ほぼ毎日携帯で挨拶をかわす
そこには幾ばくかの安心感と 聞けない焦燥が混在していた
「来週の日曜日に映画にいかない?」 久しぶりに彼女に投げた言葉は 「お見合いした人とデートなの」 というセリフで無様に砕けてしまった 「じゃ、邪魔しちゃいけないね、残念だけど」 心にもないセリフが 二人の間の空を回転する
「邪魔してくれないでありがとう 残念がってもくれないのね?笑」
彼女の泣き笑い顔を久しぶりに見た気がした
でも ボクには言えない
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