☆言えない罠んにも☆
モクジックス過去にススメ!
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2009年08月24日(月) 衆人環視の

SNSでは何もいえなくなってきた。
配慮が面倒なので 書かない。


年齢が上がって、親から保護されなくなってくると、
一気に政治が切実になってくる。

経済と税制をコントロルしてもらわないと、
現在の生活水準を継続できなくなるのでは、という懸念。

国籍持ってるから外人より優遇、扶養控除制度で優遇、
所得税率、消費税率、デフレ万歳

の現在でやっていけるレベルに設定してるんだから、

そこんところよろしくといいたい。

つまり、いまのように、2人家族で1人フルタイムで稼いだら、毎日のご飯に国産の野菜買えて、服もひととおり買えて、継続的に家借りられて、病気になったら病院で治療受けられる、的な。

でも、渡辺よしみの「みんなの党」のようなの大好き。
のらりくらりとかわかりにくいのとかそんなんしていいの?っていうのがないから。

公明のCM引いた。。。。あんな幼稚なネガティブキャンペーン全面的にだしてるなんて。そのまま小学生のいじめメンタリティ。ほんとひくわ。


2008年04月22日(火) 週末

金曜日は大雨。強風に雷の嵐。

晴れたのは週末だけ。
「晴れたらキャッチボールしようね」って言ってたのに
ずっと部屋で過ごした。

週末が終わる。綺麗な夕焼け、振りはじめる雨。

今幸せなのに、
未来の不幸をおもって泣いたから

晴れて、とっても晴れたのに泣いたから



青空だったのに

今はしあわせなのに


2008年04月21日(月) 次の候補は決まってません

ミクシが高校の先生とか幼馴染みとか、包囲網形成されつつあるので書きにくい。
どっかに引っ越そう
この日記投稿サイトは悪くないけどブログではないし過去の鬱鬱としたのがそのままというのが気掛かり

どうでしょうか

ご意見は携帯かGMAILにください


2008年04月20日(日) わすれないよに

昨日の日記のようなnegativeで厭世的な気分だったのが信じられないほど前向きで高速移動中。
こうなるとnegativeだったのが馬鹿馬鹿しいが、この状態を月曜以降も維持できなかったりというのがおうおうにしてあるので、なんとか今回は持続させたい。

それにしても

適職につけるよう応援してくれると言質を得たのは大変喜ばしい。

恥を忍んで正直に告白してよかった


2008年01月17日(木) 題名未定

濃紺に浮かび上がる真っ白い羽が二枚。

艶々とコーティングがかかった滑らかな表面。

そっと、指先をすべらせる。

これに、しよう。

本を閉じて、キャッシャーに向かう。
値段は覚えていない。
ただ、早く帰って、すべての絵柄を確かめたくって走った。
ぶつかりそうになった人がファーつきのコートを着てたのを覚えてる。
息が白くなってたから、もう、12月に入ってたんじゃないかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

”聖別”という作法がある。
”作法”っていうのが正しいのかは自信がないが、それ以外妥当な表現が見つからない。
お茶の”お手前”てやつの手順の中の、”お清め”ってやつにそっくりなんで、そう呼んでる。
そう、おさじとかを袱紗って布で拭うやつね。お茶は作法っていうでしょ?
だから、”清める手順”って”作法”が妥当な気がするんだけど。
どうかな?
ところで、袱紗って絶対当て字だよね。ね?


ぼくはわくわくしながら聖洗の準備をする。
ガラス鉢にはいった、アロマキャンドル。
ゴブレットとミネラルウォータ。
買ってきたばかりのカード。
ビロードのクロスをデスクにかけ、
カーテンを引いて、照明を落とす。

火災報知機が鳴っちゃいけないから、窓は開けておいた。
カーテンがゆれる。
キャンドルに点火する。
蝋が芯を伝い、透明な池をつくる。
炎が、ふ、とゆれる。
キッチンから拝借してきたイタリアンソルトを一つまみ、炎に振り掛ける。
きらきらと輝いて、炎が揺らめいた。

ぼくは、ゴブレットに水を入れ、ビロードの真ん中にカードを置き、目を瞑る。

「はじめまして、ぼくのカードたち。これからよろしくね。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大枚はたいて買った新築のマンションに、幼いわが子が油性マジック落書きをした。
これって、とりかえし、つくよね?
大枚はたいて買った新車の窓から、幼いわが子が転げ落ちた。
これはどう?

婚約のしるしに彼氏からもらったカルティエのリング、海で泳いでたら取れちゃった。
これってショックだけど、
国家の存亡がかかった密約の証かなんかの王様の指輪、うっかりまきあげられちゃった。
こっちよりはダメージ少なくない?

ぼくはね、自分が予想外な状況になったら、なるべく、その状況がどのくらい酷いか
客観的に見るようにしてる。
自分のことを客観的に見にくいときは、近い状況を考えて、比べるとわかりやすいよ。

聖別っていうのは、手に入れたカードを、清めて、いままでの記憶を消し、
あたらしい所有者に帰属させるっていう意味の儀礼作法のこと。

買ったばかりのカードでも、カードに、自分たちの所有者がだれか教え込む大事な手順。
だからちょっとまじめに勉強した人なら、省略するわけにはいかない作業。

難しいものじゃないよ。お布施とかいらないしね。
カードを、火と水で清めて、ひとつひとつに挨拶するだけ。
具体的に言うと、生理食塩水の入ったコップの上に20秒ほど乗せて、
一枚ずつろうそくの火にかざした後、顔の前で名前を呼ぶだけ。

「こんにちは、ハングマン、よろしくね。」
「おっス、エンペラー、たのんだぜ。」
「運命の輪ちゃん、はろー☆」


いや、ぼくはもう少し丁重な表現にしたけどね。

軽い挨拶から始まると、軽い関係になってしまう。
面接と聖別は、第一印象がものを言う。
敬意を込めた宣誓。
もちろん、カードは耳があるわけじゃないから音に出さずに唱える。わかるよね?

ちょっと大変なのは、1枚ずつ、ってとこかな。
現代っ子って疲れてるでしょ?
薄暗い、ろうそくだけの部屋で、22枚のカード全員に挨拶し終えるまで、
睡魔に負けずにいなきゃいけないってけっこうつらいんだよ。
酸素が薄くなって、どんどんまぶたがとじていって。。。

負けたらどうなるって?
ぼくみたいに、カードのコーティングがろうそくの炎で溶けて、曲がっちゃった”HighPriestess”ちゃんを制服のポケットに入れて、持ち歩いたりしなきゃなんなくなる。
いちどへそを曲げちゃったら、なかなかゆるしてくれない女の子みたいにね。
おだてすかして、なだめすかして、ちらっちらっとご機嫌とって。
一瞬の睡魔の代償、だね。


ただ、そうなればなったで、毎日顔を合わせる”HighPriestess”ちゃんにだんだん親近感が沸いてくるんだ。
不思議でしょう?
そんなに人気のあるカードじゃないんだけどね。
知性とか、理知的、ってポジティブなとこがなくもないけど、どちらかというとネガティブなイメージのカードだからね。
それがいつのころからか、この銀色の冷たい月も、陰気くさいすみれ色のローブも、
粘着そうな陰鬱な表情も、ちょっとゴスロリなティーンエイジャみたいでかわいくなってくる。
”Fool”や”Sun”っていう、明るくって陽気なカードが、大味で単純すぎるように感じてくる。
不思議でしょう?
あ、や、その、ロリどうのこうののとこは、あくまでも、この子に関しての話だからね!

制服のブレザーの胸ポケット。
それがちょっと歪んだぼくの”HighPriestessの”定位置。

いつも身に着ける自分にとってのラッキーカード。
タロットの世界ではそんなカードを「スペシャルカード」と呼ぶ。
ぼくのスペシャルカードはこうして決まった。
もうちょっと景気のいいカード(スター、とか、マジシャン、とかね)にするつもりだったんだけど、
そこんとこは内緒。”HighPriestess”ってやきもち焼きだからね。

そんなわけで、ぼくは彼女にカーブをつけちゃったんだ。
世の中に、取り返しのつかないことはわりとたくさんある。
できれば、すこし時間を戻してなかったことにしたいけど。
できないことはできないよね。

それに、もし完全に燃えちゃってたら、ほかの21枚(小アルカナは挨拶いらないんだ)にも
お別れしなくちゃいけなかった。
延焼して火事になってぼくまでこの世とお別れ、って可能性だってあったんだし。
そこまではひどくない。
そうおもえば、なにも騒ぐような話じゃないって思えてくるでしょ。

それに、ぼくは、結構このスペシャルカードを気に入ってる。
この子はぼくが守ってあげなきゃいけない気がする。
みんなはもっと、一目惚れしたり、選びに選んだりして自分のスペシャルカードをきめるけど、
accidentally
そういうのも、あるよね。
(つづくー)


2008年01月12日(土) うぇざーめーる 4

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ひさびさの成田空港は暗雲のなかにあった。
明るすぎない陰翳、これが普通だったってこと、うっかり忘れてた。
明るいだけの場所じゃ、繊細さは育成されないよ、ね。

ぐっすり寝たのに、まだ眠い。
搭乗口を出て、ロビーのラウンジソファーでケータイの電源を入れる。
もちろん、ビジネス書とかedgeとか読んでるスーツの人じゃないから、
未読10通、とかあるわけない。

けど、きゃさりんからも、来てなかったんだよね。

なーんか、やる気なくしちゃって、もう、冬中、ここですごそうか、なんて
考えて、ガラス越しに、つぎつぎ飛んでいく飛行機見てたんだ。

パイロットさんもお疲れだよね。
無防備な笑顔ばっかし。テロの格好の標的じゃねーの?
殺されて泣く前に自衛しろよなー。

斜め前のシートでも、ひとりでガン寝してるやついるし。
ずっと寝てんな。
もう、乗客全員降りたぞ。

だんだん、苛立ってきたのが自分でもわかってた。
メールがこなくて、期待削がれて、すねてるんだ。
子供だよなあー。

顔をひざにつけて、すごい厚着で寝ている乗客の足元には
大荷物があった。ひざと顔の間にはハードカヴァーの本が
よだれの被害を蒙っているようだ。

かえったら、睡眠導入剤か、安眠作用のある鎮静剤を処方してもらうことを
決めた。

ケータイは、沈黙のまま。

履歴に並ぶ名前。

”Catharine”
”Catharine”
”Catharine”
”Catharine”
”Catharine”
”Catharine”
”Catharine”
”Catharine”
”Mark J”
”母”
”Catharine”
”Catharine”

ガラスのウィンドに、なにかがちらついた。
子供をつれた、年配の女性がうれしそうに言った。

「るしあちゃん、雪ですよー」

ロビーの乗客が浮き足立った。
東京は、この日まで、雪が降っていなかった。


天気というのは、世界共通の話題だ。
最も純粋で、最も罪のないニュースだ。
日照りは農業従事者にとって死活問題だし、
ハリケーンは、一晩に何百人もの命を奪う。
しかし、「いいお天気ですね」という挨拶が、何かに取って代わられる日なんて
くるのだろうか?

ぼくは、空を見る。
二人のたった一つの、共通の話題。

ちらちらと、グレーの雲の間から、白い粉末が舞い散る。

ぼくは、おでこに手をやって、眉間のしわを伸ばす。
無理やり口角をあげて、ケータイを持ち直す。


Date:Dec,25
Title:None
To:Catherine
”雪ふったー。なりたついたー。”


空を見る。
地面に足をつけてるのは大事だけど、
空のこと忘れて、地面ばっかり見てると、
足が地面にひっついちゃう。


床で、懐かしい、着信音が鳴った。

一年位前、ゆりかもめで鳴って、ハラハラしたこの音。

厚着したコートから、細い腕が伸びる。
その腕を、コートごと抱きかかえる。

薄く目をあいて、また目を閉じる彼女。
右手にはきっちりケータイを握っている。
ずるいなあ、もう。
大荷物ごと、担ぎ上げて、背負う。

静かに、前を見たまま言う。「ひさしぶり、きゃさりん。」

返事はない。
わざとらしい寝息。

曇り空は夕焼けもなく、夜に包まれ、雪は止みかけていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー
8月。ぼくは、また、異動の辞令を受けて、太平洋岸の中核都市にある研究所にいる。
クライアントに気に入られて、過労死寸前の毎日だ。

あの、12月の帰省で、実家の母がぼくのズボンを洗濯してくれた。
母は年越し蕎麦を手打ちし、茶殻を撒いて畳を掃く。
そして、クリスマス商戦に挑んで、ヒートポンプつきのドラム式洗濯機を購入していた。
ぼくのズボンや下着は、湿気の多い曇り空でもいつもふっくらと仕上がっていた。
ズボンのポケットに入っていたケータイも、ふっくらと息絶えていた。

バックアップはなかった。
ケータイでやりとりするのは、ジャンクなプライベートだけだ。
親類の連絡先は母がすべて知っていた。
友人は、ケータイ以外のアドレスを知っていた。

キャサリンのアドレスは、そらで言えた。

あの卒業前の日、階段を駆け下りる彼女を、つかまえて、聞き出したアドレス。

「いいよ」の声もまだず、彼女は言い始めた。

「けいえーてぃーえいちわいあっと…」

C、じゃないんだ、と思ったっけ。

蝉の鳴き声がうるさい。
窓の下を、太った男性が汗を拭きながら小走りしている。
ノースリーブの女子高生が3人アイスを食べながら歩いている。
こっちの女の子はピザガールはやらないんだ。

けいえーてぃーえいちわいあっと…

もう、何十回も、入力しては消し、入れては消した文字列が現れる。
デリート。

だめだ。指が覚えてる。

ぼくは、キャサリンに、何を伝えるつもりなんだ?

そらは抜けるように青い。
積乱雲が厚く重なっている。

蝉の声がうるさい。

カーソルが、催促するように点滅する。

クーラの利いたオフィス。

向かいのオッサン、寝てやがるよ。(古参のプログラマで、今回のプロジェクトマネージャだ。)

昨日打診された1年分のプロジェクト、引き受けちゃおうかなあ。

ねえ、キャサリン。

プライベトのwindowsを呼び出して、使い慣れないメーラを起動する。

ポップアップする白い画面。

点滅するカーソル。

ぼくの指先は、最後に、sendキーを押した。

帰ったら、ケータイを注文しても良いかもしれない。


2008年01月10日(木) うぇざーめーる 3

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ごくたまにだが、彼女のほうからメールがくることもあった。

Date:Oct,15
Title:None
From:Catherine

”ひまひまー あそんでー”



Date:Oct,15
Title:None
To:Catherine

”よし、なにしよう?”


Date:Oct,15
Title:None
From:Catherine

”えっとねえ、しりとり”


Date:Oct,15
Title:None
To:Catherine

”しりとりかあ”

Date:Oct,15
Title:None
From:Catherine

”雨ー”

Date:Oct,15
Title:None
To:Catherine

”め?メイド服”


Date:Oct,15
Title:None
From:Catherine
”曇り空”


Date:Oct,15
Title:None
To:Catherine
”ら、ラジオトープ”

Date:Oct,15
Title:None
From:Catherine

”プリン”

”プリンじゃ終わっちゃうよ?”

”プリン食べたい”

”こんど食べようね”

”いま”

”もう12時だよ?太っちゃうよ?”

”いま、朝だもん”

”もう寝ようか”

”プリンたべたい”

”こんどいっぱいもって行くよ”

”ばーか。だいきらい”

”寝ておちつこう〜”

そこで、返信はこなくなる。
彼女からメールが来るときはだいたい、こんなかんじだ。
ぼくは、彼女からのメールがまたくるように祈る。

そして、ネットでプリンの通信販売のサイトを探し、
彼女宛に10個入りの箱を5ケース、注文する。

彼女がプリンを食べたいわけじゃないってことは、ぼくでもわかるよ。
でも、ほかに、方法が、わからないんだ。
難しいんだよ。
愛情を示す方法ってさ。



ーーーーーーーーーーーーーーー
貧乏な画家が、バレエダンサーに恋をした。
舞台を遠くから一瞬見ただけで、彼女以外のなにも考えられなくなってしまった。
画家は、自分の絵と家財道具をすべて売り払って、
知り合いすべてに借金をして、ダンサーの誕生日に百万本の薔薇を贈った。

ダンサーは、その薔薇を金持ちの道楽だと思った。
見る前に捨ててしまった。

画家は困窮して死んでしまった。



フランスのシャンソンの歌詞だ。
画家がかわいそう?そうかな。単なるナルシストだよ。
せめて毎日1本ずつ贈ればよかったのに。
親愛さは接触回数と正比例する。

ただし、一定量まではね。

冬が始まったからかもしれない。
うす曇の日が増えた。
町はクリスマスソングばかり。
ばかでかい飾り付けが始まる。
ネットワーク障害が増える。(12月と2月に増えるのはきっと、ごちゃごちゃした飾り付けに関係あると思う)
ランチのデリバリーが遅くなる。
実家から、正月には帰ってくるのかと手紙がくる。

クレジットカードが嫌いなのは、ダイレクトメールが来るせいだ。
この時期は、毎日毎日集中攻撃ともいうべき枚数だ。
現金決済が拒まれない日本が懐かしい。

オモチャ広告の多色使いもやる気を萎えさせる。
Saveとかいう字は呪われてしかるべきだ。

町だけじゃなく、オフィスまで汚染は進んでいる。
同僚は朝からネットで妻宛のプレゼントを選んでいるし、
郵便係の女の子はサンタ服でクリスマスパーティのチラシを配っていた。
ぼくのデスクの脇にあった観葉植物は、ごてごてしたベルやリボンを巻きつけられた。

街の喧騒に我慢ができなくなったころ、ぼくは頭痛を患って2日休んだ。
ちょうど、クライエントがクリスマス休暇に入る日だった。

クリスマスのクの字も入ってないようなヘビィなミュージックをヘッドフォンで聴いた。

道は目の前にある。
道はいつだってある。
手をのばすだけでいいんだ。
いつだって手に入るさ。

部屋は落ち着く。
少なくとも、赤や緑はない。
グレイのカーテン、ガラスのデスク、黒のマシン、ピアノ、ベージュのリネン。

本棚がすこし色にあふれて来た。スキャンして捨てよう。

つやが消えたシルバーのケータイ。
浮かぶブルーの文字。

同僚から。
ネットワークの仕事はやっておくから、ゆっくり休めだって。
彼女に振られたんだな.

母親から。
ネットで注文したシャンパンのセットがとどいたらしい。
過分なプレゼントに驚いていますって、値段調べたのか。

そして。

”げんきー?”

元気じゃないときほど、この、ありふれた挨拶というのは心に突き刺さる。
「元気じゃないんだ。鬱か、ホームシックか、ありふれた罠にひっかかっちゃったんだ。
 元気じゃないんだ。」

涙が出た。
これはもう、ほんとうに、明日にでも、カウンセラのとこに行かないといけないな。

返信画面になったら、何を書くかふっとんだらしい。

”帰るんだ。明日帰るよ。”

3時間くらい、床で寝ていたらしい。
ケータイは左手の近くに落ちていて、頬では涙が伝った後がカピカピになっていた。

のっそり起き上がって、マシンの電源を入れる。
ヒゥィーン。静かに立ち上がるマシン。冷たく輝くディスプレイ。

やっぱり、クリスマスは嫌いだ。
ディスカウントなら3回往復できる金額でエコノミィを予約して、コートを着た。
冬服、いらないっていったの、誰だ?

TAXIに乗らなくていいのにほっとした。地下鉄は比較的通常の姿を留めていた。

空港は、幼稚園みたいだった。サンタにトナカイに
巨大なクリスマスツリー。
困惑しているビジネスマンは皆専用ロビーにいた。
静けさに20ドル払うのはけして高くない。
もっと賢いのはこの時期空港を使わないことだろう。

ただ、ぼくはもう、それほど苛立ってはいなかった。
スターバクスのコーヒーのおかげか、成田行きのチケットのおかげか。
飛行機が吸い込まれる雲の先を見つめていた。
テラスに出た。
息は白くなってすぐに消えた。

”10年に一度の大寒波らしー。”

行くときすれ違ったピザガールはノースリーブにマフラーをしていた。

ヘッドフォンのボリュームを上げた。
心地よい眠りがきた。





2008年01月09日(水) うぇざーめーる 2



その日、展望台から東京湾を見て(彼女は、どうしてお台場が、「台場」と呼ばれるようになったのか、幕末の政情を詳しく語りながら教えてくれた。)、上映中の映画かなにかのキャンペーンでやっていた展覧会(大砲や潜水艇や日本軍の航空艇っていう、ゴツイ企画だったんだけど、ぼくと同じくらい、彼女も興味を示していた。)にいって、お昼をたべることにした。

レストランを5つくらい回って、6つ目についたエスニックレストランにはいろうと、ぼくは懇願した。
彼女が自分から、ここに行きたい!という言葉を発するまで、あと10件は回らなくてはならないように思えた。

彼女は、席について、すぐにメニューを取り、「おなかがすいた」といって、チキンとナシゴレンのプレートランチを注文した。そう、インドネシア料理の店だった。
ぼくは、ちょっと迷って、ポークチョップを注文した。
メニューが取り払われると、彼女の顔が目の前に現れた。
そういえば、向かい合って座るのは、初めてだった。

なんとなく、目が合わせづらくて、料理がきてから、ずっと皿ばかり見ていた気がする。
急に、自分の歯並びが気になった。
彼女は、いくつかの話を早口で息継ぎせずに話して、そのあと、数分間黙り続けていた。

口を開いたのはぼくだ。
「結婚式、何時から?」


ぼくは、わりと古いところがあって、仕事とか、課題とか、義理とか、そういうのは、プライベートよりも優先させてしまう。
いや、それより優先させるべきプライベートがないからなのか、
プライベートがそれほど優先されるべきものだとおもってないからなのか、
まあ、とにかく、彼女は、結婚式に遅れてはいけないと、おもったのだ、強く。

「無理して食べなくてもいいんじゃない?」

彼女は、四苦八苦していたナシゴレンをほとんど残して、ふわっと走って行ってしまった。


「ばいばーい」か。

だれもいなくなった、向かいの席を見ながら思った。
ぼくはいろんなことを、きちんと考えすぎるのかもしれない。


空港は、特別快適でもないけれど、苛立つほどの状況にも遭わなかった。
願わくば、人の数が10分の一くらいになると良い。
スタッフも含めてね。

飛行機のシートについて、酔い止めとミネラルウォータを飲むと、すぐに寝ることにした。
つく、数分前に現地の気候さえ、わかれば良い。
機内のサービスにはそれ以上期待しないようにしている。
睡眠をとるのが一番効率いい過ごしかただって思うんだ。


−−−−−
ロスアンジェルスは、晴天だった。
そして、それから毎日、空が曇ることはなかった。

ぼくは、そんな晴天を窓からみながら、ずっと仕事をしていた。
寒くもないし、暑くもない。
ローラスケートで来るピザ配達の女の子は、いつだってノースリーブだ。

だから、その日、いつもと違う色の雲が現れて、
夕立じゃない、雨が降ったときには、なにか、こう、何もせずにはいられなかったんだと思う。

Date:July,11
Title:None
To:Catherine

”雨だー”




キャサリンからの返事はすぐに来た。
3ヶ月ぶりにとは思えないくらい、シンプルなのが。


Title: Re None
From:Catharine

”あめあめー”



彼女が何をしているのかは、想定する根拠がまったくもって足りなかったけど、
梅雨明けが近づく日本の湿度が思い出されて、
ぼくは、また、ふっ、とひとり笑ってしまった。


----

つぎに、彼女にメールをおくったのは、8月。
サマーバケーションで、社員の家族を満足させるイベントを次々こなさなきゃいけない月だ。
独身にとっては面倒なだけなイベントだけど、”パパ”してるやつらには違う。

奥さんと、はしゃぎざかりの息子や娘たちを持った社員たちは、ここぞとばかりに自分の
「お父さんっぷり」を競う。
森のキャンプ場で、牧をわり、鉄板をならべ、サヴァイヴァル術を、子ども達に吹き込む。

僕は、ビールを片手に、彼らのアシストを楽しんでいた。
神経質なプログラマたちが一斉に”アメリカン・ダッド”に変わるのは可笑しい。

さすがに皆、難しい本を読むのを嫌わない人間ばかりなので、BBQくらいで失敗するはずはなかった。
味覚がどうこうは、ぼくも含めてさっぱりな奴も多いけど、
少なくとも、ボリュームやラインナップは完璧だった。
ビールの合間に、肉だけ食べていた僕が(肉以外にも、シーフードやベジタリアンメニューなど
いろいろあったんだけどね)、同僚の突き出た下っ腹を見て、この瓶でさいごにしようと決意した瞬間だった。

森の周りの空が急に、黒くなり始めた。
あとほんの数分、”アメリカン・ダッド”たちの判断が遅れたら、肉も、ぼくらも、びしょ濡れになって、
きっと、子ども達の夏休み日記に、”ワーストメモリー”と題して記録されてしまうことになったに違いない。

豪快な夕立。
森で味わうのも、ひさびさに体験する”ワイルド”なOFF。

あ。

稲妻が走った。

景気の良い雷鳴。

こういうのも、たまには楽しい。

避難し終えて、安全な場所でエキサイティングな光景を見っていうのは、夏休みの思い出にぴったりの
イベントだ。興奮を隠せないファミリーたち。

ぼくだって、エキサイティッドな気分になったよ。
そう、誰かに興奮伝えたいな、って思うくらいにね。

日本から持ってきた、ちょっと時代遅れなフォルムのケータイを取り出す。
時計以外として滅多に使われるときはないけど、今日は大いに役立ってくれる。
数文字のひらがなが、日本にむかって、とんでいった。


ーーーーーーーーーーーーーー


いつも、春風のように軽くて暖かい返信が来るとおもったら、大間違いだ。
ハッとするような雹のように冷たくて硬い欠片が刺さるときもある。
木枯らしのように世知辛い文章の日もある。


たとえばぼくが、同僚の結婚パーティで酔った勢いで送ったメールに来た返信はこうだ。


Date:Sep,21
Title:Re:のんだー
From:Catherine

”理解不能。文章につき再考を要す”

酔いが一気にさめた。
文章を見直した。
誤植はなかったが、すこし長すぎて、擬態語とひらがなが多いように感じた。
ぼくの不得意分野なのだが、文学的に見るときっと失格な文章だったのだろう。


また、こんなときもあった。
社内の歓迎会かなにかでボウリングに行ったときだ。マイナスハンディをつけて優勝したと報告したら、

”うれしそうなレポートをありがとう。苛立たしいほど自慢げなあなたの姿が浮かびましたが、顔は思い出せず
 新渡戸稲造で代用しました。”

とかえってきた。

ぼくは、新渡戸稲造を画像検索し、数日間落ち込んだ。


晴れていい気持ちだったのでビーチで昼寝をした、と書いたときはこうだ。

”わたしはPMSが酷くて起きられません。寒くて雨です。”

ぼくはデリカシーがないんだろうかと、反省した翌日、

”台風一過ーーはれーわーい”

と、メールが来た。

気遣い屋な彼女に、ますます申し訳なさがつのった。
東京の天気は世界のどこにいたってわかる。
秋の長雨は、止みそうにないね。



2008年01月08日(火) うぇざーめーる 1

ぼくは、彼女が好きで仕方がなかったんだと思う。
どうにかして、彼女と係わっていたかった。

すぐ会えるような距離にはいない。
会う理由もない。

ネットワークの上にも、彼女の姿は見えない。

メールをする、というのが、会社での仕事上の伝達を含めて、
僕の最も多用するコミュニケーションの方法だ。

無意識に、メール作成の手順を踏む。

開いた白い画面。

「タイトルを入れよ。」

..........

Return

「文面を入れよ。」

..........

カーソルが、催促するように点滅する。

Space
Space
Space
Space

顔を覆い隠すように額に手を遣った。
書くことなんてないよ。

窓の外は、もう、八月も半ばだというのに蝉の鳴き声がうるさい。

”あついー”

クーラの利いたオフィスから、ぼくは、そんなメールを彼女に送った。
それこそ、1年分のプロジェクトを引き受けるときと、同じくらいの勇気を出して。



---

キャサリン。ぼくは、彼女を、そう呼ぶ。

とはいっても、直接声に出して、呼びかけるなんてこと、これまで、あったかどうかあやしい。
まあ彼女は、ほかの友だちにもキャサリンって呼ばれてるし、ぼくがそう呼んだって不自然ってことはない。
よく考えると変な名前だ。
キャサリン。

ああそう、本名じゃないんだ。
日本籍だし、”櫨木涼子”とかいうとっても日本ぽい、平凡でもないけれど、特別変わってもいない氏名を持ってる。
どうしてキャサリンなんて呼ばれているのか、まともに考えたって無駄だよ。
顔つきだって、日本人によくあるレンジの、癖のない、良くも悪くも文字通り”プレーン”な顔だ。(ぼくは好きだけどね!)
美人かって?
「美人に見える」
そう、的確に言うと、そうなる。
彼女は、美人に見える。
いつだって。
そう、そして彼女は、美人であるかのごとく振舞う。
いつだって、ね。

初めて彼女を見たのは、いつだったって?
何年前かはすぐには思い出せないけれど、いつだったかは明確に覚えている。
卒業間近の3月だった。友だちが大学の研究室につれてきたんだ。
そいつはクラブの後輩だって言ってた。
そう、1つ下の後輩だって聞いていたけど、あとで本人に聞いたら、年がちがうので不審に思った記憶がある。
普段何をしているのかよくは知らない。
なにか、いつも、大学の図書館で本を読んでいるようなことを聞いた気がする。
たまに、調査なのか、それとも趣味なのか、突飛な場所に行っていた。(富山の山奥とか、鹿児島の離島とかね)
断片的な情報を総合すると、大学院に籍があったんだろうね。
そう、ぼくは、キャサリンがふだん、なにをしていたのか、さっぱり知らなかったってわけ。
聞かなかったのって?
彼女になにか聞くときは、それなりの聞き方を考えておかないと、答えてもらえないんだ。
とくに、正しい答えがほしいときは、慎重になんないとね。

そうそう、あのときは、研究室のメンバーでいつもみたいに飲んでいたんだった。
男ばっかの研究室だよ。え?うん、ふつうふつう。
そのころ、女の子って、いなかったから。
どっか、ぼくらの知らないところで、おしゃべりしたり、小説読んだりして、先生とか、銀行員とかになっちゃうんでしょ?
接点あるわけないよね。

ぼくらは、修士論文も終わってしまって、あとは卒業式を待てばいいだけだった。
気楽な雰囲気が、ぼくの人見知りを解いてしまっていたのかもしれない。
友だちが、つれてきたstrangersは、不快なファクターではなかった。
その女の子たち数人は(そう、”女の子達”だった!)いっしょにソファに座ってキャラキャラわらっていたんだけど、
そのなかのひとり、そう、キャサリンは、ひとりだけちょろちょろ動き回って、
無骨な理学系研究室の、本棚やら、プロジェクト表やらをものめずらしげに見回していた。

しゃべらない人かと思ったら、そうでもなかった。
おだやかな口調。たまに、うっすらと、笑う。
5分ほどだけ、会話した。
ふつうの、とってもふつうの話題のはずだった。
ふつうの、とってもふつうの外見に似合わず、ぶっとんでいた。
地図統計と話してるようだった。

小さな宴会が終わって、彼女たちはスカートを翻して帰っていった。
きゃらきゃらいう笑い声が研究棟の螺旋階段を下りていった。
彼女がいなくなって、あわてて、ぼくは、研究室を飛び出した。
階段を2段飛ばしで駆け下りた。

間に合った。

メールアドレスと名前。
彼女はあっさり教えてくれた。

---

「じゃあ、1週間で、準備してくれるかな」
入社した日、社長じきじきに、アメリカ支社への辞令が下った。
卒業するときに、大学時代に買ったものは、ほとんど捨ててしまったから、
とくに戸惑うような場面でもなかった。
家族に伝えたら、冷蔵庫だけ、妹が取りに来る、といった。
一緒に住んでいないお兄様の住まいが、
電車で2時間のところだろうが、飛行機で12時間かかろうが、それほどかわらないらしい。
どちらにしろ、いつきたってぼくは仕事しかしてないんだからね。

ガランとした部屋で、着替えと布団と、タオルと歯ブラシと、コップ1つ、それに
ミネラルウォータの入った冷蔵庫代わりのクーラボックス。
キャビネトと、1段だけのブックシェルフ、それに洗濯用ピンチ。
スリッパはいらないや。
その日のうちにスーツケースを注文して、布団を捨てる準備をした。
パスポートは幸いにも期限内だった。

総務のきれいなおねえさんがビザも飛行機も、むこうの住居も手配してくれる。
日本で過ごす、残りの一週間、用意された研修用の課題以外、仕事はない。
まあ、研修も、けっこうハードではあるんだけど。

ぼくは、ケータイをとりだした。
どうせしばらくはアメリカだ。
強気になるのは、こういうときらしい。


Date:April,1
Title:None
To:Catherine

”時間あったら、メシ、いかない?”




返事はすぐに来た。



Title: Re None
From:Catharine

”はーい”



出発する前日の土曜日、そのお昼にお台場を指定した。
プライベトで立て続けにこんなにメールを送るのなんて、何年ぶりだ?
キャサリンからは、こんな返事。

From:Catharine

”いいよーぅ”

「やたっ!」つい、口に出てしまった。照れ隠しのために、課題に没頭したら、
その日のうちに全部終わってしまった。

--

ゆりかもめへの乗り換え口で、グレーのパーティドレスに真珠のネクレスの彼女を見たときは、
正直、ちょっと、びっくりした。
ゆるやかになびくカールした髪のからヘッドフォンがのぞいている。
ハイヒールの足をステップに投げ出して、彼女はラジオ講座のテキストを熱心に読んでいた。

休日のゆりかもめは、結構混んでいた。
ぼくらは、ゆっくりいって、2本くらい見送って、ゆっくり座れる車両を待って乗った。
窓側の席に並んで座った。
キャサリンはずっと、窓に張り付いていた。そして景色が 変わるたびに、
貨物船が見えた、だとか、今日はトラックが少ない、だとか、あの倉庫はどこの商社のか、などと、
次々と早口で報告や質問をしてくる。

だから、ぼくも質問をすることにした。

「そのネックレス、似合うね。いつもしてるの?」

彼女が答えた。

「ううん。今日、一時半から、友達の結婚式だから。」


ぼくは、頭の中のスケジュールボードの、本日PMの予定を消した。


2008年01月07日(月) 風邪なのでミクたんとあそぶ日

すいぶんとってー
びたみんとってー
のーとぱしょこんもってー
べっどへ逝こー!(・∀・)


モクジックス過去にススメ!
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