読書日記

2004年09月23日(木) 吉田精一『日本近代詩鑑賞ー大正篇ー』(新潮文庫)を少し。

吉田精一『日本近代詩鑑賞ー大正篇ー』(新潮文庫)の佐藤春夫の章を読む。
初めの詩は「秋刀魚の歌」。過去に何回か読んでいるはずの有名な代表作だが、一体何をよんでいたのか。
一連目のみ読んで全体を読んだつもりになっていたのだろうか。
三連目にある
「あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児は 」
など詩の背景の物語にまったく気づいていなかった。

谷崎潤一郎との友情、その妻との関係について、これを読んで初めて知った。

ほかには、
木下杢太郎、高村光太郎、室生犀星、萩原朔太郎、日夏耿之介、西条八十、芥川龍之介、佐藤惣之助の八詩人とその代表的作品を取り上げている。

(昭和二十八年六月五日発行、昭和五十一年七月三十日三十一刷)



2004年09月22日(水) マイク・アシュリー『SF雑誌の歴史(パルプマガジンの饗宴)』を少し。

マイク・アシュリー『SF雑誌の歴史(パルプマガジンの饗宴)』(牧眞司=訳・東京創元社4500円)を少し覗く。

東京創元社創立50周年記念出版、野田昌宏推薦

はじめの方の「アメリカの曙」の章で、エドガー・アラン・ポオを「SF短編の父の称号がふさわしい作家」とあるのを目にして「そうだった。」と最近その存在を忘れていたことを反省した。
ポオを的確に最大限に評価している部分を新鮮な気持ちで読むことができた。
本書は、20年代から50年代までのSF雑誌の歴史を詳述。続編はすでに出来上がっているという。その日本語訳の出版も待ち遠しい。

この本を読むことは、わがSF読書遍歴をたどること。この本は自分を映し出す鏡となる。



2004年09月21日(火) 草思社の『草思 二〇〇四年十月号』の目次

充実した内容に驚く。草の思いと書く草思社が毎月発行している宣伝誌『草思 二〇〇四年十月号』の目次はそのホームページ上でも確認できるの間違いないにしてもここで念のため書いて残しておこう。

特集 日本のマンガはどこへ行く

「哀しきマンガ生産工場」長谷川裕
「マンガにはなんだか見えない階級があるみたい」ヤマダトモコ
○「マンガ家はなぜ『狂う』のか」大泉実成
「マンガ家が失ったもの」奥村勝彦(編集部インタビュー)
読み切り

○「働くということ(3)」立石泰則
「日本史の教科書を読んで思ったこと」永栄潔
「中国人の正体ーアジア杯反日サポーターに見る阿Qの姿」綾瀬隆
「ヨーロッパ難民事情ー地中海を漂うアフリカ人“不法入国者”」M・ブラツケ

連載

「東京ポルカ 8」鬼海弘雄
○「お母さんはしつけをしないで 10」長谷川博一
「外交官の仕事 4」 河東哲夫
「身近な野菜のおもしろ観察記 6」文・蝗田草歩 絵・三上修

編集後記

編集長 藤田博
発行人 木谷東男

注ー題名の頭のほうに○が付いているのが読みごたえのあった文章です。わずか百頁にも満たない小さな雑誌、おそるべし。



2004年09月20日(月) 益田勝実・編『南方熊楠随筆集』(ちくま文庫)、読み終わった。

益田勝実・編『南方熊楠随筆集』(ちくま文庫)、読み終わった。

矢吹義夫・日本郵船会社大阪支店副長宛の書簡「履歴書」と松村任三・東京帝国大学植物学教授宛の書簡「神社合祀問題関係書簡」の間に十二編の民俗学論文・エッセイをはさんだ豪華な熊楠アンソロジーである。

今回、特に最後の「神社合祀問題関係書簡」が強かった。
その舞台である熊野といえば最近世界遺産に選ばれたばかりだが、人にも土地にも歴史あり、と改めて実感した。

その原初のままを思わせる風景が実は神社合祀による樹木伐採や自然破壊の果ての姿かもしれないのだ。

官やら役人やら、はたまたそれらの寄生虫的やからが跋扈して自然や森林・幽山さらに前時代から残る各地の神社を「合祀」という大義名分のもと破壊尽くした、あるいは破壊し尽くそうとした。

熊楠の怒りや困惑、無念の気持ちがよく伝わる刺激的な文章だった。
明治の末に書かれたものが現代的な意義を持ち得ていると思う。

いまだによく似たことが近所でも遠所でも行われている。

ところでこの文庫は、表紙を折った裏に熊楠の写真と著者紹介文がせっかく載っているのに、熊楠が「1967年和歌山県生まれ」に誤植されている版です。
(一九九四年一月十日 第一刷発行)


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