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ラヂオスターの悲劇
トマーシ
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2003年05月12日(月)
little wax

 生身の人間と付き合うのを怖がっていてはいけないと、

 時々自分に戒めるのは卑怯なことなのかもしれない。

 

 泥まみれで行け!

 その女は言った。



 その才能 は その傾向。



 “ありのまま”は 作られない。
  

  
 

  



2003年05月13日(火)
Blue Monk

仕事がようやく決まった。

目黒の花屋である。

花など一昨年に薔薇を枯らして以来、触ったことすらない。

薄黄色い薔薇で、二つ三つ花を咲かしたあと、野ざらしに枯れた。

とても素敵な色だったが、花弁が大きすぎたのだ。

そんな気分ではない。

遠のくように幻滅して、それ以来花には触っていない。

面接に行ったとき、店の中はコチョウ蘭のいい匂いがした。

これはこれでいいかもしれない。

近くには僕好みのレコード屋もある。

面接の帰りに寄ってみると、ドアーズがかかっていた。

地獄の黙示録のイントロに使われてた曲だ。

他に本も置いてあり幾つか買いたくなったが、

裏をめくるとそれなりの値がしたので、

止めておいた。

今度からはその本を買うことも出来る。

いささか気が抜けてしまうが、

明日からは僕にも職があるのだ。

そのことを下北沢のミスタードーナッツで記していた。

携帯からもこの日記は書くことが出来るのだ。

でも携帯では、ほんの少ししか書くことが出来ない。

コンクリートに頭を擦りつけるアナグマみたいな按配になってしまった。

これはよろしくない。

でも店を出てみると、

何故だか、下北沢の街は溜息で出来ているように思えるのだ。

慰められ、そのあとヴィレッジヴァンガードで雑貨を見て家に帰った。



薔薇が植わっていた鉢はまだある。ここからまた花が咲くのか、

それとも咲かせるように僕は努力するのか、

他の色々な可能性こそなお暗いが、

寝る前に観る夢のように、

それはあどけない。

力の抜けた気持ちでそれを探ったが、

行き当たったのは

モンクの「アローン イン サンフランシスコ」というアルバムで

ブルーモンクはその一曲目だ。



2003年05月14日(水)
魂の煉獄

 何度もコーヒーを沸かして、それを飲んだ。

 いつのまにか眠ってしまったらしい。

 付けっぱなしのテレビに

 大聖堂の丸天井が映っている。

 マーク・シャガールの絵が梁と梁の間に埋め尽くされている。

 何処の聖堂なのかは記されていない。

 ヴェルディのオペラがずっと流れている。

 その高いソプラノの音で目が覚めたのだ。

 幾つになっても、午前三時に馴れることが出来ない。

 たぶん、何をするにしても、ろくな事は起こるまい。



2003年05月15日(木)
昨日の今日

 昨日は足が鬱血して帰るなり眠っていた。

 久し振りにマニュアル車の運転をしたことが堪えたらしい。

 壁土をボロボロと喰らいたい気分。

 世界がグッと静かになったのだ。



2003年05月16日(金)
マーマレード

 夜中にふと目が覚めた僕はまるでマーマレードの瓶に指を突っ込んだ子供のよう


2003年05月17日(土)
天ぷら

 最後の打者がセンターフライに倒れて、試合は阪神が勝った。

 僕はジャズを聴きながら夜をやさしを訳して読んだり、

 これを書いたりしている。
 
 なかなかなもんじゃないか。

 呼び鈴みたいなものが目の前に垂れていて、 

 僕はそいつをピッと引張ってやることが出来る。

 可能性なんてそんなもの。

 傾いた地平は誰かが直してくれるだろう。

 でも僕がけつまずくものもあるわけだ。

 たぶんそいつに気分を良くしている。

 かかっているのはポールデスモンド・ジェリーマリガンの双頭カルテット

 これから僕はお出かけ。

 明日は休み。

 なかなかなもんじゃないか?

 平凡なポーンフライのことを天ぷらということを

 ふと思い出した。



2003年05月18日(日)
La Plas Belle Africaine

 叶えられなかった祈りより叶えられた祈りに

 より多くの涙が流される。

 〜聖テレサ

 何年かぶりにこの言葉を思い出した。

 ちょうど歯を磨いていて

 古い歯が抜け落ちるみたいに。

 カポーティの遺作の扉の言葉だ。

 僕はこの小説がカポーティの中では一番好きだ。

 多分ディッケンスが好きな気持ちと同じ気持ちで、

 この小説が好きなんだと思う。

 因みにカフカの「アメリカ」もまた同じ気持ちで好きだ。

 総合小説が好きなんだろうか?

 自分に希望の持てる発見だ。

  

 目が覚めると、

 そこは原宿の吉野家だった。

 店員に肩を揺さぶられて気がつくと、

 そこにはまだ半分だけ牛丼が残っている。

 食ってる途中に記憶が飛んだのはさすがに初めてだ。

 仕方が無いので、それを平らげる。

 肉は残っていなかったが御飯は味がしっかり染みこんでうまい。

 着信を調べると

 結構ギッシリ埋まっていて、

 昨日のめんつはみんな今ごろ温かい自分のベッドで

 うとうとしているわけだ。

 今更掛けなおす気にもなれない。

 重たい体を引きずって外に出る。

 今度は間違えずに恵比寿に着くことが出来た。

 バイクを置いた場所へフラフラと歩いているときに

 さっきの聖テレサの言葉を思い出したのだ。

 それはウットリとした百合の花みたいに綺麗だった。

 鼻唄まじりに帰路に着く。

 道路はまだ車が少ない。

 こんな唄だ。 

 ♪窓を叩く雨、より時雨強く
 
  目を覚ました恋人の夢うつつ・・・

 僕の為に取っといてくれたんじゃないかと思うくらい素敵な歌じゃないか。

 そいつを次に目が覚めた時には伝えておこう。

 だが次に僕の眠りを破ったのは違う友達からの電話だった。

 本当は眠っていたかったが、かなり面白そうなお誘い。

 日比谷公園でアフリカンフェスタをやっているというのだ。

 これは行くしかないね。