前回からの続き。今度は男性キャラについて。 --------------------------------------------------------------------------- 男の場合はどうですか。 新谷 男のキャラはね、肉弾派のキャラがいないんです、僕の場合。なぜかっていうと、自分がマッチョ系の人間にあこがれたことがないし、マッチョ系の人間が体を鍛えたからといって、それで、強大な力を得ることは絶対にないわけなんで。極端な話、大山倍達ですら、上からICBMを使えば一巻の終わりなんで。(笑)そうすれば、山にこもって石割っているやつよりも、こっちが側で赤いボタンを押したほうが勝ちっていう。最終的な勝ち負けの段階で言ってしまえば、肉体は関係ないっていうことが自分の論理の中にあるんで。 ―――そういう意味では、武器やメカのほうは信じているんですね。 新谷 そうですね。武器とかメカ、その脆弱さも知っていますけれども、最終的に勝ち負けっていう図式でいくと、そっちのほうがいくらでもアイテムを交換できるわけで。男のほんとの強さっていうのは、どっちかっていうと頭脳のほうだと。つまりその、どのくらいのアイテムを使いこなせるかっていうことになってしまう。ただし、これはもし文明が完全に消滅してしまって、こん棒で殴りあわなきゃならないって状況になった場合、非常に弱いけれども、でもそうなったら、俺はきっと、どうやって一撃で倒せるこん棒にするかという(笑) ―――そっちのほうに全力をかける。(笑) 新谷 相手と距離を置いたほうがぶんなぐれる、とかね。こん棒の先端だけがとびだすとかね。 ―――マッチョ派から見れば、そんなことをしている暇があったら体を鍛えれば(笑) 新谷 だからどうしても僕のキャラクターにはマッチョ系は出てこないです。 --------------------------------------------------------------------------- こん棒というところが、この漫画家らしいや。 だってさ、普通そこは素手でしょ。素手 人間最後の武器っていったら普通は拳でしょ。最終決戦っていったら、普通は素手でどっちかが倒れるまで殴り合いでしょ。そこを生身の身体ではなく、こん棒という道具を持ってくるあたりが、いかにもこの先生らしいですな。文明滅亡のその時までも、あくまで道具にこだわるあたりに、新谷かおるという人の特徴を見た気がする。 ここで道具に頼るなんて、往生際が悪い・潔くないと思うか、賢い・知恵があると思うかで、好きか嫌いかも別れていくのだろうな。 私も、マッチョか頭脳派かどっちか選べと言われれば、頭脳派をかな。人間は道具を使う動物なのだ。ヒトが他動物と違うのは、道具を作り出し使うところにあるのだ。いかなる状況においても、可及的すみやかに道具を生み出し、それを使いこなして活路を見出せる男は格好いい。好みをいったら、工具箱の似合う手先の器用なタフネスな男がいいな。あー、該当する男性をご存知の人は、すみやかに管理人まで連絡するように。 そしてこの漫画家さんの話は、マシンにしてもシャトルにしても飛行機にしても、スキーにしてもなんでも、それを作る者と乗りこなす者の話で、いかにアイティムをうまく使いこなすか、どれだけのアイティムが使えるというところが勝負となっているんだなと思った。 潜水艦乗りや、パイロットなんてのはもともと超優秀な人達なので、頭脳はあって当然だし。あとはそれをどう乗りこなすか、どこまで乗りこなせるかというところが、この人の話の核なのだろう。 それにしても、何故自分がスクライドにはまりきれないかというのが、よくわか・・・以下略。 13話までなら、文句なしで好きなんだけどな。女がなぁ、金持ちの扱いがなぁ、民主政治がなぁ。ロストグラウンド私物化しているし。資産家設定や科学者設定どうでもよくなっているし。残された問題放置して、殴り合いで解決しちゃっているし。それに男の傲慢が・・・。いや、スクライドに男、男と男ばっかりで五月蝿いと言うのは、大島漫画に少女少女と少女ばっかりで五月蝿いというのと同じくらいカンチガイ発言というのはわかってはいるけれど。そして、好みと評価は異なると以下略。 つづく。
前回からの続き 長い座談会の中には、エヴァの話題を離れて、漫画家新谷かおるの製作スタイルを垣間見る発言もでてくる。なにしろこの座談会は6時間にも及ぶ長いものなのだ。自宅でおこなっているため、途中から佐伯かよの先生も加わり、話はさまざまな方向に飛び、つきることはない。 それにしても新谷夫妻は仲がいい夫婦ですな。松本零士・牧美也子、富樫義博・武内直子、弘兼憲史・柴門ふみなど、夫婦で漫画家というのは多いけど、ここの夫婦は、佐伯センセが新谷かおる公式サイトの記事を作成するわ、掲示板のレスはつけるわ、風間真のせっけんを売るわ、(ホントに売ってんだよ)思いっきり家内制工業ではないか。私もそのせっけん欲しいぞ。しかも通販担当の新谷摩乃ちゃんって、これ、もしかして娘さんですか?まさに製作受注発注を一家できりもりする町工場のようである。 そんな家族経営の新谷プロであるが、新谷マンガのキャラ造詣について、本人の口からこんな発言があったので、ここに丸写しにしておく。各人参考にされたし。 引用 『新世紀エヴァンゲリオン JUNE読本 残酷な天使のように』 発行:マガジン・マガジン ---------------------------------------------------------------------- ―――新谷先生、かおるというのは本名ですか? 新谷 そうです、本名なんですよ。 ―――それは親は?今は女性でも男性でもどっちでもありみたいな。 新谷 生まれるときに、男か女かわかんないから。 ―――準備しといた。 新谷 準備しといたんだけど、どっちでもつけられるよにって。ただ単に非常にぞんざいに。 ―――でもそれで女性っぽくなったっていうことのはなかったですか(笑) 新谷 だから、しばらく少女マンガ描いていたじゃない(一同笑) ―――本名で描ける少女漫画。でも和田先生も、いまだに少女マンガ誌でやり続けているという、貴重な。ついに、柴田昌弘さんも行ってしまいましたから。 和田 摩夜峰央だって行っちゃったもん。俺一人になっちゃった。不思議なもんだね。 ―――そういう意味では女性性というものもないと。 新谷 どうなんだろうな。作家というのは、女性と男性の両面をみんな持っていますからね。 和田 男だけ出る、女だけ出る、マンガ描いているわけじゃないので。 新谷 もちろん男性の完成で描いていかなきゃならない時もあるし、女性キャラを描くときにはやっぱりできるだけその女性キャラの身になっセリフも吐かさなきゃなんないし。だけど、例えば、不得手な女性っていうのは、キャラに出て来ないですよね。自分の性格からあまりにもかけはなれている女性像で、仮にそういった女性がいるっていうことは認識していても、「わからんね、この手の女は」っていうような女は。 ―――ある場面で、どういうセリフを言うかわからないとか。 新谷 わかんないですね。そういうのはね。 和田 出てきても、要するに深い性格にはなってにないよね。 新谷 いわゆる上っ面をなでた程度の。 (中略) 新谷 だから確実にセリフがあって、その物語を左右するようなセリフを吐いてくれるようなキャラクターには、そういった自分が嫌いなタイプの男性、またあるいは自分が非常に嫌いなタイプの女性というのは、登場してこない。何本も何本もいっぱいお話描くんだけれども、ずーとそれこそ最初っから俺のマンガ読んでいるファンの中には、すでにそれを見抜いているのがいて、「どんなふうな、どんな状況で、どんな家庭環境で育って、どんな過去をひきずってても、あなたの描く女性キャラっていうのはこうですね」って行って来るのがいるわけ。 ―――そこはかわらない。 新谷 そう。 和田 うちにも言ってくるのいる。やっぱり長いことやっていると読まれちゃうよね。 ---------------------------------------------------------------------- 「わからんね、この手の女は」というセリフ回しが、新谷っぽい。 ああ、あの漫画書いている人のしゃべりだなぁとへんなところで納得してしまった。 新谷マンガ女性キャラは、本当にこれ、男の人が書いているの?本当は女の人が書いたんじゃないの?と錯覚するような、非常に女らしいセリフを言う女性が多いですな。描いている人が男という感じがあまりしない。特に女性キャラのセリフは、男がこのセリフ吐かせたとは、ちょっと思えないようなものが多い。 女性キャラの感性が、女からみても女らしくて、好感度が持てるのんだよね。 島本和彦も言っていたけど、女性キャラのセリフは、抜群にうまいと思う。 私は女なので、いかにも男が考え出したような男にとって都合のいい女は、男の傲慢が透けてみえるみたいで、そのキャラ以前に、作者の傲慢さにアンチパシーを感じてしまって、反発してしまうんだけど、(谷口監督とか谷口監督とか谷口監督とか)新谷マンガの女性に対しては、そう思うことはないですな。 なのでエログロ話も、女キャラのセリフが、女っぽいおかげで、わりあいに読める。今やっている刀神妖緋伝も、エロくてエグい内容だけど、主役の女の子達の会話が、どこか幼児向け少女漫画を思わせる節があるので、結構に楽しく読んでいますよ。 新谷かおるはかおるいう名前のせいもあって、よく女性に間違えられたりするらしいけど、絵柄が少女漫画画風だからというより、会話に女っぽい感性を含んでいるんで、そっちのほうで、間違えたりする人も中にはいるんじゃないかなと思う。私は、絵はメカが精密でマニアックなこだわりというかコレクター魂が感じられて、あんまり女の人って感じることはなく、むしろセリフのほうに、女性らしさを感じる。そして、セリフは本当格好いいものが多いね。 島本和彦の「新谷かおるになる方法」の中に、松本師匠が大空で戦う男のロマンを描くのなら、新谷は大空で死んでいった男を地上で待つ女のロマンを描く、という解説があったのだけれど、私はこれにはいたく納得した。まったくその通りだと思った。私はこのくだりを読んだとき、それだよそれ、それだよ島本と、床をバンバンとたたいた。 大空で死んでいった男を地上で待つ女のロマン! それだ!松本師匠の女性は、男よりも一段高いところにいて、至高の存在として座し、男の中の男とはいかなるものかと、男のロマンについて語るのだけど、新谷の女性は、女のロマンについて、男に語るんだよ。神崎を見ろ、あの神崎も、女のロマンの前に窮して、答えにつまるところあったじゃないか。これは男性作家にはなかなかできない芸当ではないかと思うぞ。 (脱線するが、自分がなんでスクライドにはまりきれないかよくわかった。ありてい言ってしまえば、私谷口監督の作る女ダメ・・・金持ち特権階級嫌っているっぽい印象を与えるところもダメ・・・民主政治を冒涜しているラストもダメ。だたしこれは嗜好であって評価にあらず。嗜好と評価はあくまで別。) 一方和田さんの話は、男の人が描いたって感じがします。男の人が書いた戦う少女。この人の話読むと、私はルイス・キャロルとアリスを思い出します。 続いて、本人による女性キャラの傾向自己分析も。 ----------------------------------------------------------------------- 新谷 それはしょうがない。だって、描いているのは、ひとりだし、変えようがないから。だからたいてい、俺の描く女っていうのは、自分の意思をどこかで見え核にしてしまう女だよね、こういうふうに生きたい、こういうふうに生きるっていう形を非常に明確に持っている女になってしまう、それが貧乏から出ようが、お嬢様であろうが、あるいは犯罪者であろうが。 ―――なるほど。 新谷 たぶん、俺がそういう女性が好きだから、またあるいはそういう女性だと自分が感情移入しやすいから、たぶんそう描いているんだと思うし。 ----------------------------------------------------------------------- 新谷マンガはスターシステムなので、同じ人が別の漫画に出てきても、気にしてはいけないのである。 あれはみんな、劇団しんたにの団員なのさ。 次は男性について。つづく
で、 神恭一郎は出てくるんですよね? ついでにパタリロも出せ(マヤの好きな漫画はパタリロ)
エリア連載時の少年ビックコミックを買ってみた。 今回買ってみたのは、最終話の4個前の回、昭和61年(1986)5月23日号のもの。 この回はエリア88が表紙でなおかつ巻頭カラーなのだ。 古書集めはやりだすときりがないので、あまり手を出したくはないのだけれど、連載時の雑誌を1冊ぐらいもっていてもいいんじゃないかと思い、1冊だけ買ってみることにした。おかげでまた貯金が減っちまった。こうして除隊するのが遅くなっちまうんだ。 私は連載時の読者ではないので、雑誌をまじまじと観るのはこれが初めてなわけだけど、知っている話も、普段手にしている本と違うと、感じが変わっておもしろいものですな。見たことある絵でも、タイトル文字がはいっているといないのじゃ全然印象が異なるよ。 まずはカラーページ。このカラーページの色彩が古色蒼然としていて美しい。漫画雑誌特有の安っちいぺたぺた印紙のせいか、発色が総天然色フルカラーという感じで、これがたいそう味わい深い。この明るすぎない夕闇っぽい色調がいいんだよね。砂の戦場って感じがしてさ。この色調好き。 話のほうは、最終回に向けて佳境に突入し、劇的テンションが上がっているところ。 サブタイトルは「アスラン燃ゆ」格好いい! この回は、前々回から皆殺しモードが発動し、グレッグが死に、ラウンデルが死に、今週は誰が死ぬんだと、はらはらしたところから話は始まる。こっから先は怒涛の展開なんだよね。 この回の盛り上がり方はちと異常ではないかと思う。 グレッグ大尉に敬礼はするし、サキは目が見えなくなるし、シンは流血のまま王宮を迷走するし、アブダエルは彷徨するし、ミッキーはアフターバーナーの調子が悪いと不吉なこと言うし、ジュリオラは産気づくし、ソリア姫は日記読んじゃうし、マックは末期の酒を飲みだすし、神崎はアスランに中距離ミサイル発射しようとするし、みんなもうてんやわんや。 雑誌だと、コミックスにはない、タイトル文字やあおりの文句や柱の解説が挿入されていて、高揚感をこれでもかというぐらいに高めてくれていいですな。これぞ、リアルタイムの雑誌でのみ味わえる醍醐味。オンタイムの息吹が直に伝わってきますぞ。それではちょっと紹介してみましょうや。 まず表紙からしてあふれんばかりのパッション。 今週号の表紙は敬礼したシン・カザマなんだけれど、そこにデカデカとした見出しがバンバンバンと覆いかぶさって 戦士たちよ・・・Good Luck!! 今、劇的クライマックス!!巻頭カラー エリア88 30ページ と読み始める前からいたづらに期待を高めてくれる。 で、ページをめくると、 巻頭30ページ エリア88 とババーンとタイトル文字が。 欄外には この作品はフィクションです。 の注意書き。 柱には 戦闘巨編いよいよラスト4! のあおり文句。上下左で画面狭しと読者の気分を書き立てる。 さらにページをめくって、見開き2ページ扉絵。 ミッション169 “アスラン燃ゆ!” 今、すべての愛と憎しみに、 終わりの時が迫りつつある・・・!! エリア88 ラスト4 というハイテンションなうたい文句が。なんかもういろいろ凄い。 そして本稿に入ると、柱にこれまでのあらすじ。 <はじめに>サキをおって王宮内をさまよううち、真は神崎と出会う。一瞬発砲をためらった真に対し、神崎の銃が火を吹き、真は重傷を追った。絶体絶命の真。だが、間一髪キムが救援に駆けつけ、神崎は王宮を脱出したあ。一方、空母を守って壮絶な戦死をとげていた。 これだけ長い話を、わずか2行でをまとめてしまおうとするところがいかにも雑誌らしくて男前。 さらに次の次ページの欄外で登場人物の紹介。この狭っちい欄外で、この長大なる話の登場人物の中から、無理やり4人を選んで、強引に紹介するというのが、いかにも雑誌らしくてやはり男前。 <登場人物> 風間真 神崎の策略で88に送られた。88でNO.1の戦闘機乗り。神崎 プロジェクト4総司令。世界制覇をめざす。サキ・ヴァシュタール 88司令。現アスラン国王の長男。津雲涼子 真の婚約者。大和航空社長令嬢。 うまい!いつも風間真の紹介をするとき、なんて書こうか悩むんだけど、神崎に騙されたじゃ、まぬけだし、神崎にはめられたじゃ品にかけるし、友の裏切りにあってじゃ、センチメンタルすぎるし、なんかいい紹介文はないかなぁと思っていたけど、これうまいな。神崎の策略で88に送られた。いい。簡にして要を得ている。これからは私もこれでいこう。 そして神崎は世界制覇だよ、世界制覇、カッコイイな、神崎。世界制覇だ。 次いでサキ。88司令。現アスラン国王の長男。 短すぎて素晴らしい。サキを語るときは、88の司令と、アスランの王子とその2つの側面さえあればいいんだよ。そして、涼子さんも、真の恋人で、大和航空の社長令嬢というこの2つの要素さえあれば、後はいらないのさ。 他にもまだまだあるぞ。 愛するものは自分の手で守る、真、88復帰!!コミックス1〜21巻発売中 コミックスの宣伝も忘れない。 新谷かおる先生にはげましのおたよりをおくろう!! あて先⇒・・・ そんなこと言われると送りたくなるじゃないか。 エリア88の感想を送ってください!! あて先⇒・・・ よっしゃ、わかった、送るぜ。 そして、サキがアブダエルに出会ったところで、次号に続く。そのときの柱の文句。 ついにアブダエルに出会ったサキ。光を失った彼の目に、アスランの未来はどう映っているのか!? おおお、続きが気になるじゃないか。 ってな具合。最初から最期まで煽りっぱなし。 雑誌っていうのは、その時の盛り上がりぶりが臨場感たっぷりに体感でき、興奮しますな。期待以上におもしろかった。 あと、一つ発見したこと。私がもっているのはMF文庫なんだけど、どやらこの文庫はページが1枚づつずれていて、とじが左右逆になってしまっているらしい。これは、雑誌はカラーページの後に、1ページ広告が入って、それから本稿に入るのだけれど、文庫は広告ページ分の空き無しで、すぐに本稿を載せているので、1ページづつずれてしまっており、そのため雑誌掲載分とは、とじが左右反対になっているようだ。いつも右側にあるページが左側にあるので、変だなぁと思ったら、どうも1枚ずれているらしい、 これ、とじは雑誌のほうが正しいじゃないのかな。場面転換するところがページをめくるとちょうどくるようになっているので、流れが雑誌のほうが自然。 そして、この広告のところに、非常に妙ちくりんなものを発見したのだけれど、紙面がなくなったので、これについてはまた次回。次号に続く
古いJUNE本の中に、新谷かおると和田慎二の対談があって、その中にエリア88の話題が出ているのを発見した。 JUNEだよJUNE、JUNEだよお嬢さん!新谷かおるがJUNEに出ているよ。こんな本を持っているなんて、すっかり失念していた。 これはエヴァブームのころに出たらしいJUNEのエヴァ特集号である。 タイトルは「かおる×シンジ対談」と、いかにもJUNEらしい。 内容は、タイトルにある通り、新谷かおると和田慎二の佐伯かよの夫人も呆れるいちゃつきっぷりを赤裸々に記したもの。仲良すぎだこの二人、ラブラブじゃないか、そのうち娘さんにネタにされるぞ、というのはもちろん冗談で、漫画家新谷かおる・和田慎二後両名が、『新世紀エヴァンゲリオン』について熱く語ったもの。 エヴァ特集なので話題は中心はエヴァなんだけれど、随所に自らの著作や製作姿勢について語ったものもあったりして、どうしてこれが中々、クリエイター新谷かおるを知る資料として、非常に有益なものになっているのだ。 異色なのはその長さである。 これは新谷邸で6時間にわたって行われた対談を掲載したものらしいのだが、JUNEは編集能力がないのか、紙面があまって埋めれないのか、理由はわからないけれど、対談のくせに、なんと長さが3段組で40ページを越える一大長編になっているのだ。おかげで読むのに、小1時間かかった。下手なライトノベルを読むより時間がかかるんじゃないだろういか。長々と掲載してくれた編集能力のない編集部に感謝したい。 JUNEという性質上、司会者が隙あらばそっち方向に話を持っていこうとするのが、五月蝿くて仕方がないのだが、そこいら辺は慣れたもので、両先生共うまく受け流して自分のペースに話を持っていっている。なので、日頃、同人女は地獄に落ちろと思っているような人でも、楽しめる対談になっていると思う。逆に同人女にとっても、この先生方はお二方とも、露骨に同人女を毛嫌って、嫌な顔をするというようなことはしないので、その点は安心されてよい。インタビューアーがなにかとやおい話にもっていこうとするたびに、私などは場が白けるのではとひやつくのだが、そんな質問にも二人は巧みにきり交わして対話してくれていた。 それにしても、傍から見るやおい女は恥ずかしいね。同属嫌悪でとっても恥ずかしい。 同人女のアニメ感想が萌えばっかしで埋め尽くされているのは、楽しそうでいいなぁと微笑ましい気分になるけど、それがの自家中毒の同人女になると、アニメ考察と銘打って、考察とはほど遠い自分語りをしていて、傍から見ていてとっても痛い。でも自分語りしている分には、被害が無いからまだいい。これが自分は変わっているの、自分は人と違うの、人と違うアタクシ格好いい!と、自意識過剰でなんでもかんでもすぐにパクリだと他人を攻撃しだすあたりから始末が悪くなってくる。そんなに自分は特別な存在か? そして、さらにその上を行くのが、年齢の高い同人歴の長い同人女。アタクシ評論好きなの、アタクシ論文調の文章好きなの、最近の同人やっている子ってアタクシのころとは違って最近の同人事情ってアタクシのころと違って・・・と、やたら通ぶって論客気取りでアニメ評論を書くんだけど、その文がオタ女オーラ全開とくる。同人女は口調というか文体がオタ女臭い。思考以前に文がオタ女文体なんだよな。そして主観が一般論だと思っている。ああ、こうして、同人女嫌いに拍車がかかるんだ。そして同志討ちは痛い。話が横道にそれた。 長さ中身も濃いので、エヴァ好きの人なら言うにおよばず、そうでない人にとっても、和田・新谷両氏が好きな人なら、得るものは多い記事ではないかと思う。 特に、一ファンとしてミーハーに熱っぽくエヴァを語っている部分と、同業者として、作品製作を冷静に語る部分と、両方の側面が交差しているのが興味深い。 とてもおもしろい対談なんだけど、JUNEということで、ふれる機会がない人には永遠にふれる機会はないと思うので、今日は、大々的に紹介してみたい。 まずは、ミーハーなファンの部分。 このミーハーなファンの部分なんだけどね、しゃべりがすごいオモシロイんだよ。 家族みんなで仲良くエヴァを見てる話とか、同人ネタがポンポン浮かんでくる話とか、ベンツでフィギュアを買いあさりにいく話とか。二人すごく楽しそう。 引用 『新世紀エヴァンゲリオン JUNE読本 残酷な天使のように』 発行:マガジン・マガジン ----------------------------------------------------------------------- 新谷 第20話でミサトさんと加持さんのベッドシーンがあった時に、時間帯が6時半だよね、みんな飯食っている最中だよ。うちだって飯食ってて、「おい、エヴァ、エヴァ」とか言ってテレビつけてみてて最後に「ああ〜ん」とかなって、みんな箸が止まったわけ、そこで(笑) <略> 新谷 僕はあれを見たあと、すぐネーム、コンテ切っちゃいましたよ。「エヴァンゲリオン第27話 予期せぬ夜」「新第3テレビ東京」とかいって(笑)でなんかこう、「ああ」とかいって画面が流れ始めめて、例のあの六角形の(モニターの)のところにバババババっとか、それで、ヘッドフォンをかけたプロデュサーふうの赤木リツコさんがマヤちゃんに向かって「画面、止められない?」「オンエア中はだめです」(笑)それで向こうから「局の回線、パンクします!」それでミサトさんが「何よ、これは!」とか言ってやってきて、リツコさんの横っつらひっぱたいて「あんたが作ったんでしょ。責任取んなさいよ!」(笑) ――「視聴率は上がっています」 新谷 「視聴率曲線は、グーと上がってる。「ニールセンサーチもビデオリサーチも突破しました!」(笑)そしたらリツコが落とした眼鏡のレンズかなんかをチャリッとか「フッ」とかなんとか「でも、勝ったわよ」とか言って。で、局長室が映ってね。碇司令があのポーズで「再放送はしない。この番組はこのまま凍結する」とか言って。そしたら加持さんが机のとこに腰掛けて「それが懸命な処置ですね」とか(一同笑いっぱなし) ―― それは絵にしてはないんですいか? 新谷 してない、コンテだけ切った(笑) ―― 完成させる気はないんですか? 新谷 どうしようかなあと思って(笑) ―― 是非凍結解除してやってください。 新谷 幻の27話。 <略> 新谷 あと、碇司令が一番、使途を呼んでいるんじゃないかと。なぜか使途が来る時に碇司令がいないんだよね。 ―― 人二役とか言って(笑) 新谷 俺、そういうの考えたんだよ。碇司令が電話BOXにサッと入って、パッパッパッと着替えて、シュタッとか出ていくわけ(笑)略 使途がこないと、ネルフ解散させられるから。予算がおりないし。 ----------------------------------------------------------------------- なんか楽しそうだな。新谷センセ。クリエーターだけあって、妄想が想像でなくて創造だ。和田センセは和田センセで、 ----------------------------------------------------------------------- 和田 うん。でも、基本的にキャストの匂い好きなんだよね。だから出来のいいキットの面を見ていると気持ちいいぞ、結構。いやらしいと言われればいやらいいんだけど(笑)それでもきっど見ているだけで楽しいっていうのはあってね、やっぱりワンフェスやらジャフコンに行っちゃうんだけどね。まあ、買った数は多いよ、おかげで(笑)新谷先生と知り合ってから買う量がほぼ3倍になったよ(笑)いつもだと、電車で帰るから持てる範囲って限られたんだけど。 ―― あっ、車ですか。 和田 そう、新谷先生のベンツのワゴンで行くわけよ(笑)だから二人でバックシートいっぱいに詰め込んでね。(笑)「あー、この人と付き合っているとまずい」と思いながら、毎回行くんだよね(笑)で、新谷先生も拍車がかかったらしいね、結局(笑) ―― やっぱり友達がいるとね。 和田 ワンフェスの会場に向かう時は、お互いに「今回は自制しよう」って言いながら行ってね。でも行くともう、キレて走りまわっているんだよね(笑) ―― 「やっぱり文化の極みだよね」とか言いながらシンジとかおるは二人でフィギュアを買いあさっているというオチが(笑) 和田 実は、お互いに、シンジとカヲルのことに気がついてなかったんだ(笑)まったく気がついてなかった。で、ある時に「見た?この間の」「そうなんだよね、カヲルだしねえ」とか、かおるさんが言うから、「シンジだからねえ」って(笑)はっと気がついてね。お互い気まずくなって「はああぁ」って、「わああ、やめよう、この話は」っていう(笑) ----------------------------------------------------------------------- と、こんな調子。金のあるオタクは怖い。 同業者としての視点からの発言もいろいろある。例えば、 ----------------------------------------------------------------------- 新谷 だから見ている最中に、同業者というかいわゆる制作者のほうに自分の感情がスッと入っていくというか。 和田 こう持ってきたか・・・と。 新谷 ああ、そうかこうやったこか、でもこれやるとよぉ、後のオチがつかねえぞ、とかなんとか言って。 和田 ここまで持ってきてどうやって引き止めるんだとかね。 新谷 どうやってまとめるんだ、これ、あと4話しかないじゃんと。 和田 数えちゃったね、あれから(笑) 新谷 20話以降、はっきりいって数えたね。 和田 ここまでしかない、どうするんだ、どうまとめるんだ! 新谷 ちょっと待ってくれ、ページ足りねえなんて。 ―― 単行本にするとき描き足すか、とか言ったりして。 新谷 プロとしては、当たり前だけどページ数内でピシッとまとめなきゃならない。でもどうやってまとめるの、まだ散らかったまんまだよ。どれとして収束してないっていうね。 和田 ロンギヌスの槍飛ばしたままだし。「あれどうするの取ってくんの?」とかいって。 ―― 伏線張りっぱなしで。 和田 伏線張るには遅いんじゃないか?もうワンクールは、いるぞ。 新谷 ロンギヌスのやり飛ばした段階で、「あ、もうワンクール行くつもりかな?」って。ただその段階で延長が決定したとしても、このクオリティで作ってガイナックスの体力が持つかなって。そういったことがね、フッフッフッと頭の中にね、出るわけ。 和田 そっちの方がドキドキしたりして。 新谷 だって、自分でこの話をこういうふうにして作って行ったら、最後血の嵐だよな。 和田 もうズバズバ殺して行くしかない。私ならやっている。 ----------------------------------------------------------------------- あー、この二人なら、やりそうかも。続く
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