やんの読書日記
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デボラ・エリス作 もりうちすみこ訳 さ・え・ら書房
タリバン政権下のアフガンからあふれ出た難民が 国境を越えてパキスタンに流入する。 そういうシーンはTVでもよく見て知っているつもりだった タリバンは女性蔑視の組織 女に教育を与えず、仕事も与えない 女は悲惨な戦争の犠牲者、哀れな人。 そういう感覚で見ていたが この本を読んで考えが変った。
この本に出てくる女性は そんな組織の中で生きていたにもかかわらず活発で明るい。 主人公の少女ショーツィアはフランスへ行くためには 何が何でもお金をためようと、キャンプ生活をあとにして 1人で男の子として生きていくのだけれど、その生き方が 前向きで明るい。どんなつらい仕事、汚い仕事でも 着実にやりこなし、夢に近づこうと努力する姿は 私の心を暖かくしてくれた。
ぼろを下げて物乞いする女たち、ごみあさりをする子どもたち そんな極限の者と同じ環境にいて、ショーツィアが他の者と 違って見えるのは、やはりフランスへ行きたい 家族にまた会いたい、そういう希望があるためだと思う。
二度と帰らないと誓って出てきたキャンプに連れ戻され またよそへ出て行こうとする日。 アフガンでの援助活動に 参加するキャンプの人たちと合流しようと 決意したショーツィアの姿は輝いて見えた。
戦乱の地でも希望を失わない人がいるということを 知って感動した。 平和な日本で小さなことに希望を失っている人たちに 知って欲しい少女の姿だ。
イアン・ローレンス作 三辺律子訳 理論社
呪われた航海、死をはこぶ航海に続く3作目 少年ジョン・スペンサーの波乱万丈な航海物の完結編だ ドラゴン号で今回はカリブ海へ貿易の航海をするジョン 叔父さんとしたう船長のバターフィールドに全幅の信頼を寄せられている。 今度の航海もまた途中で不思議な人物を船に乗せてしまう。 ホーン、彼がいるとその船は必ず沈むとうわさが立ち、 彼の持ち物である木箱にも問題のものが入っていて、 ドラゴン号はどうなる?と言う展開。 海賊に対抗するために雇われた砲手アビーの夢が 正夢になって、最後は一作目のあの場所へ戻っていくのだけれど ホーンが悪人ではないと分かり、アビーもそれほどの悪ではないため 簡単にお話が進んでしまうのかなと思ったら 最後近くで海賊船に出くわし、残虐な手口で皆殺しにされ打ち捨てられた 帆船との3隻での攻防に手に汗を握った。 海賊船の船長グレースを船倉につないだはずなのに まんまと甲板に現われホーンと格闘のうえ2人は海に飲まれてしまったり 熱病で船長を含め船員がほとんど倒れて、ジョンが最後の地に着くまで 未熟だった自分を成長させていくところはどきどきもの。 最後の最後に初めての航海で難破した場所に引き戻されるところは ジョンの運の強さを感じる。 海の男として生きようと決意したジョンの姿がすがすがしい。
新藤悦子作 こみねゆら絵 日本ヴォーグ社
空とぶじゅうたんと言えばアラビアン・ナイト。 ペルシャじゅうたんのお話だと子どもの頃から思っていたが、 じゅうたんとは西アジアの国のあらゆるところで 女性が職業として、織っているものだというのが この物語を読んで少し分かったような気がする。
部屋一面を敷き詰めるのとは違う、コンパクトで ふわっと投げると本当に空をとぶような軽い織物 じゅうたんの模様一つ一つに意味があり 織った人の気持ちが込められているということが 独立した5つのお話の中ににじみ出ている
好きな相手の言葉から紬ぎだされた糸でじゅうたんを織る娘のよろこび 結婚相手の顔も知らないで嫁がねばらない娘の悲しみ 子どもの頃のじゅうたん工房の思い出 砂漠の旅で出合った不思議な少女 自分をじゅうたんにしてくれと願ってじゅうたんになった若者を慕って、 300年生き長らえた少女の哀しみ
それぞれのお話がじゅうたんを織る人の気持ちにつながっていて 挿絵の不思議で妖しい雰囲気と一体になって 魔法の世界に誘い込まれてしまいそうだ
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