やんの読書日記
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2004年06月05日(土) |
駆けぬけて、テッサ! |
K.Mペイトン作 山内智恵子訳 徳間書店
テッサは、女の子 大好きだった子馬アカリや父と無理やり引き離され 再婚した母と継父の黄金屋敷で暮らしている。 継父があまりに母に残酷でお金のことしか頭にないので テッサはグレて夢も目標もない。 そんなテッサに生きる希望を与えたのが アカリの子どもピエロとの出会いだった。
ピエロの世話をするうちに ピエロに乗りたい 騎手になってピエロとレースに出たい そういう一念でテッサはどんどん変わっていく。 見栄えも悪い、のんびり屋のピエロが テッサの気持ちを吸い取るかのように どんどん変わっていき、レースで勝利するようになる。 その過程が読んでいてうれしい。 埋もれていた馬の可能性を引き出す そういう能力がテッサ自身にあったのかもしれない。 それ以上に、絶対ピエロに乗る というテッサの前向きでひたむきな信念が 読者の心をがっちり捕らえるのだと思う。
逆にまっすぐ前しか見えない弾丸のような 性格が卑劣な継父をナイフで刺すという 事件を引き起こしてしまうのだけれど この物語のいいのは そのあと周りの人々のあたたかい手で テッサは立派に騎手として返り咲き 打ち捨てられてだめになってしまったピエロを グランドナショナル大障害という 過酷なレースで復活させたということだ。
信念と努力と強い心 大切なものを愛する心 それを持ったとき人は輝いて見える テッサはそういう女の子だ
ロザムンド・ピルチャー作 中村妙子訳 日向房
エルフリーダ、オスカー キャリー、サム、ルーシー まったくの他人だった5人が 見えない糸にひかれて スコットランドの古い家に集まり クリスマスまでの数日を過ごすことになる それまでのいきさつが上巻に 下巻ではそれぞれが心に持っている 苦難や悲しみを吐き出しながら しだいに家族のように溶け合っていく 5人とも家族と死に別れたり離婚したり 親から疎外されたりして傷を持っているけれど スコットランドのエステートハウスで 過ごすうちに、古い自己を捨て 新しい自分を見つける。 その日がまさに冬至 冬至は季節の変わり目。新しい命の再生の日だ。 5人を取り巻くスコットランドの自然、住む人の心を映す家 人々の暖かさが心に残る。
筋が通っていて前向きなエルフリーダが 家族を突然失ったオスカーを救い 自分の帰すべき家を見つけた 最後の部分が感動的だ
井上靖 新潮文庫
モンゴルの英雄チンギス・ハーン 子どものころの名は鉄木真 母が敵方に略奪されたときにできた子であるために 自分が本当に蒼き狼の子孫であるか 生涯悩み続け それに打ち勝つために 勇気を示し、野心を持ち 結果として大帝国の祖として強大になっていく。
目的のために弟も殺し 実の長男を疑い、母を疎んじ 側室の子を捨ててしまう。 冷徹な男のような印象をうけるが 老齢にさしかかり、側室の死を迎えて 血族の愛を知るようになる。 自分と同じ運命を背負った長男ジュチの死を 知ったチンギス・ハーンの嘆き 生涯背負った、自分の出生のなぞを 振り払うことができなかったのに違いない 名実ともに蒼き狼であると自覚していたにもかかわらず・・・・
全編にわたる緊張感。簡潔で甘えのない会話 これはチンギス・ハーンが常に持っていた緊迫感だと思う
なぜモンゴルが強大になったか 精神的な理由だけでなく 実務的な部分で納得できるおもしろい物語だった
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