やんの読書日記
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2003年10月10日(金) |
A small Miracle 聖なる夜に |
ピーター・コリントン
字のない絵本「天使のクリスマス」の第二弾 雪の降る静かなクリスマスイブに 教会を訪れた旅芸人のおばあさんが 献金泥棒と対決して、教会のクリスマスの飾りを 守るところから始まる。 飾りの聖人たちが飢えて倒れたおばあさん を助けて、食べ物のために売ってしまった 商売道具のアコーディオンを取り返すところが、 やさしさに満ちていていいなあと思ってしまう。 一言も文字が書かれていないのに 聖人たちのささやき、おばあさんの悲痛な叫び、 静かな雪の音、アコーディオンの音まで 聞こえてきそうな、いい絵本だ
2003年10月01日(水) |
マウルスとマドライナ |
アロワ・カリジェ文、絵 大塚勇三訳 岩波書店
カリジェの絵本は生活に根ざしているから 説得力がある アルプスの山で生活するフルリーナやウルスリ、 マウルスが家の仕事を手伝いながら 自然の中で生きていく知恵を学んでいく。 そんなおおらかさと力強さが表われている。 この絵本は、レーベルマンスの「山のクリスマス」の 反対バージョンだ、と思った。 レーベルマンスは町の子ハンシが山へ遊びに行く話し。 こちらは山の子マウルスが町へ遊びに行く話し。 一番いいなと思ったところは マウルスの賢さだ。雪原を越えて、町の友達の家に行くとき、 きれいな色の布切れをつけた旗を目印に雪原に刺しておいたことだ。 帰ってくるときに吹雪にあったのに、この目印のおかげで 友達も一緒に助かるのだ。 生活のにおいがしながらも考えさせてくれる楽しい絵本だ。
2003年09月13日(土) |
J.R.R.トールキン サー・ガウェインと緑の騎士 |
山本史郎訳 原書房
アーサー王の円卓の騎士の中で私の最も好きなガウェイン。 緑の騎士の話は不思議きわまるけれどガウェインの立ち居振る舞いが 騎士として立派ですがすがしい。 本書は、新しい英語で書かれたものではなく 中世のイングランドの辺境で使われていた英語で書かれていた原書を トールキンが現代英語に訳したものだそうだ。 とはいってもトールキンの英語もかなり古めかしい様子。 それをまた日本語訳にしてあるので元の剛健な内容はうかがい知れない。 それでも、トールキンらしさが表れていた。 「この世」を「ミドルアース」としているところだ。 指輪物語の作者は、ケルトの原書を研究していたのだから、 そこのつながりがわかってうれしかった。 緑の騎士の様子が他のものでは緑の甲冑に身を固めているのだが この本では緑色の髪をふりみだした野人の様子だ。 そしてガウェインの持つ楯の模様が五芒星であることが目新しい。 内容を知っていても何度読んでも気持ちのいい物語だ。 ガウェイン万歳!!
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