弱Sonファイブ
ちいさな手のひらに ひとつ 古ぼけた木の実 にぎりしめ ちいさな足あとが ひとつ 草原の中を 駆けてゆく パパとふたりで 拾った 大切な木の実 にぎりしめ ことしまた 秋の丘を 少年はひとり 駆けてゆく ちいさな心に いつでも しあわせな秋は あふれてる 風と良く晴れた空と あたたかいパパの思い出と 坊や強く生きるんだ 広いこの世界 オレのもの
締め日。 会社では 年の終わりということで 大掃除が行われる。 その大掃除の掃除班長に 加護が抜擢されていた。 ... フッ。 大掃除のスペシャリストに 全権をゆだねるとは 会社もわかってるじゃねえか。 そこで加護さん 各人員の担当箇所、 掃除用具の一覧表、 大掃除スケジュール、 留意事項等の資料を ワードにて作成して 各担当者に配布。 朝の朝礼で 周知を行った。 午後15時。 いよいよ大掃除の開始時間である。 各員、 掃除に取りかかってもらう。 ... 何人かが そのまま仕事をしているので 「事前にお配りしたスケジュールどおり 今から大掃除ですので ご協力お願いします」 と言って回る。 すると重い腰を上げて 大掃除に取りかかってくれる。 ところが、 「斉藤さんも お願いしますよ」 と言うと、 「...」 斉藤さん、 シャカリキに無言で 書類を書いてる。 ... カチーン。 今日は掃除の日ではない。 大掃除だ。 大掃除の班長は誰だ。 ... 加護さんだ。 大掃除スペシャリスト 加護さんだ。 ふざけんじゃねえ! 「斉藤さん、 斉藤さんの担当領域は 2番デスク周辺です」 「...」 「斉藤さん、協力願います」 「...」 「斉藤さん?」 「わかってるよっ!」 「大掃除です」 「こちとら締めの仕事してるんだ。 今年中に間に合わなかったら どうするんだ? お前が責任とってくれるなら やるよ」 「それはみんな同じです。 そのために事前に スケジュール配りましたよね? みんな忙しいんです。 斉藤さんだけ特別扱いするよう 措置をうけているんでしょうか?」 「...」 「...」 ...護くん。 加護くん。 ... 「なんですか、事業部長」 「ガラスマジックリンは どこやったかいな?」 事業部長なんですから フロアの備品の状態くらい 全て把握しておいてください!
フンパツして 事務のねーちゃんと 白木屋に飲みに行った。 彼女は根がマジメなのか、 加護さんのグウタラぶりが 気に入らないらしくて いちいち突っかかってきてたのだが、 以前 先輩に立て替えてもらった 加護さんのキャバクラ代を なぜか彼女が 取立てに来たことがあり、 なんかそれ以来、 だんだん彼女は 加護さんにやさしくなってきた。 最近では、 「ねーねー キャバクラと風俗はどうちがうの?」 とか聞いてくれたりするので、 「それはフォークで投げるか ストレートで投げるかの差やな」 とか言ってみたりしてる。 お店の人が カウンターにどうぞというので ちょっとゴネたら 空いてるお席にどうぞと言うので、 遠慮なくお好きなお席に座り、 生中2個たのんで カンパイして チョロッと飲んですぐから 彼女はとにかくよくしゃべった。 よくしゃべるんだが、 そのうち75%がグチで あと15%が自分の恋愛観で 残りは仕事の話とキャバクラの話だった。 ちなみにバファリンは 半分がやさしさでできているらしいが、 もし75%がやさしさでできていたら ちょっとうさんくさいよな、 とか思った。 あー、生中苦いなあって思いながら 「もし彼氏が キャバクラに行ってるのを 知ったらどうする?」 って聞くと、 「別にぜんぜんいいよ。 いってらっしゃい♪って感じ」 って言う。 「ふーん、じゃあ風俗は?」 「別にいいよ」 「なんで?けがらわしくない?」 「だってお金を払って 女の体を借りてるだけでしょ? 私がピアス買うのと そんなに変わらないんじゃない?」 ... うーん。 なんだろうこいつは。 よくわからん。 「...」 「でも浮気はぜったいダメ」 「ダメか」 「うん、浮気したら即別れる」 「別れるほど許せないんや?」 「当たり前よ、だってそれって 私への裏切りだよ」 「浮気ってどこから浮気よ?」 「うーん、ケイタイに あやしいメールが入ってるとき」 「あやしいってお前、 彼氏のケイタイ見たりすんの?」 「えー、みんなやってるよ。 加護もぜったいやられてるよ」 「じゃあおいらのも見る?」 「...」 「クリスマスとか飾り付けした?」 「去年までしてたんだけど、 今年は仕事が忙しかったし、 ちょっと、ねー」 「仕事関係あらへんやろ? おいらはツリー飾ってたで、 ちっこいやつ。 そんでクリスマスチカチカ光らしてたで、 ひとりで」 「きゃー、さみしーい。 でも私ケーキ食べたよ」 「うーまーそ〜」 「モンブランのヤツでね、 すんごい甘かったよー、 でも食べすぎて気持ち悪くなった」 「そんなときはおいらに電話しろよ」 「クリスマスに 電話できるわけないでしょー」 「クリスマスって ひとりものにはぜんぜん やさしくないよねー」 「うんうん、イルミネーションとか見ると イライラするよ」 「だからおでこに吹き出物できたの?」 「吹き出物じゃなくてニキビだって!」 「ハタチ越えたら吹き出物やって! 会社でアンケート取ったろか?」 「そんなのしなくていい!」 「アンケート取ったらお前 吹き出物って言ったヤツらのケツ つねるやろ、暴力女」 「そんなことしませんわよオホホホ」 ... イテテテテテテテテテ! ... ぷちっ。 コ・ノ・ヤ・ロ・ー! @×@☆... ... ああ、 とうとう会社の女に 手を出してしまった...
わが人生に一片のクンニなし!
や、やっぱりクンニなのか...
君にとっても悪い話やないと思うねんけど、 よかったらクンニなどさせてもらえないでしょうか?
わかったからクンニをさせろ。
行こうと思っていた。 加護さんの日記を 読んでくれてる はるなさんと 動物園に 行こうと思っていた。 しかしその日は豪雨。 ライオンとか オリの端のミゾくらいまで 流されて溺れかけてるに ちがいない豪雨。 百獣の王ライオンも さすがに豪雨には 勝てないとか勝てるとか。 せっかく 待ち合わせに1分でも遅刻したら はるなさんだけ パンダ見るの禁止条例まで敷いて ワクワクして待っていたのに こんな雨では 家を出る気がしない。 ふてくされて 家でメルマガ書きの鬼に 変身していた。 「きらめき☆淑女伝説」 というメルマガが 次号で最終号ということもあり、 ついついサービス精神を発揮して ボリュームたっぷりで発行した。 そしたら キゲンがなおってきたので、 はるなさんに オリジナルカクテルの 人体実験になってくれるよう たのんでみた。 いいよーんってことなので お家まで来てもらった。 んで、 ショートカクテルを 3杯ほど作ってあげれば 彼女はいい具合に 酔いが回ってきて 自然と加護さんの肩に もたれかかって そのあとはグッヘッヘ っていうストーリーだったんですが、 加護さんはなにしろ カクテル道修行中の身。 計量カップで きっちり計らないと カクテルが作れないため、 ちょっと濃い目に、とかの 応用がきかない。 しかも 「おいしい!」 って言ってもらえると ついうれしくて、 持ち前のサービス精神を発揮して 次から次へとカクテルを作り、 数時間後には加護さん、 ただの カクテル製造運搬機 になっていた。 とはいえ加護さんも 男の子であるので、 女の子を家に連れ込んで 何もないと言うのも アレだよねーってことで、 抱き寄せに入ろうとしたんだけど、 フギャーって逃げられて、 「で、何しようとしてたの?」って 真顔で 言われた。 そうすると加護さん、 なんかめっちゃ 恥ずかしくなってきて、 部屋のすみの方で 小さくなってブルブルおびえていた。 はるなさんと話してるときにも 少し感じていたんだけど、 こんなときに 狙撃兵みたいな質問で 追い打ちをかける女の子の 血液型はもしや 加護さんの天敵の... と思いながら おそるおそる聞いてみた。 「ねーはるなさんって血液型何型?」 ... ガタガタ(゚Д゚) はるなさんはかわいい。 しかし AB型の子だけはキライ。
お昼休み、 近くのコンビニに お弁当を買いに行こうとすると 歩道がすべて ババアで埋まってた。 前列4人、 後列2人。 ババアどもの歩道不法占拠。 お前ら全員、 頭に火ぃつけて クリスマスキャンドルにしたろか! と発作的に思ったが、 加護さんもいい大人、 彼女たちの気持ちもわかる。 どうやら女の子同士ってさ、 タテに並びたくないらしいんだよね、 あたしと○○ちゃんとは いつもいっしょ、みたいな。 だから、みんないっしょだから、 ヨコに並んじゃうんかいなあ? 女の子って いつまでたっても女の子だよねえー。 ... はよコンビニ行かんな、 お昼時で混むやろうが! 左から順番に 空手チョップ食らわしたろか、 アホババア!! おいらだんだん イライラしてきて、 ババアの群れを 迂回して抜かしたろと思い、 歩く速度を速めた。 ババアが 4人から6人に増えてる... 歩道は完全にふさがった。 ... どうする、 どうするんよ、 迂回するスキマないやんけ、 このままずーーーと、 歩道はババアどもに 不法占拠されたままなんか、 こいつらそのまま 暴走行為をくりかえすんか、 高速道路に乗るんか、 料金所まで来たら Uターンするんか、 検問張ってたら 突破するんか、 お前らなんか 全員ムショにぶちこまれてしまえ、 そのまま余生はムショで 過ごしてくれ、 とか思ってるうちに コンビニにたどり着いた。 なんだかすごく 負けた気分だった。
何だろう、 これがウワサの 放置プレイというヤツだろうか。 おいらこのまま放置されて バックで 中島みゆきの「恨みます」とか 生演奏で流れてきて おいらはひとり 体育すわりで 「人生ってよぉ」とか言いながら おでんとか食うんだろうか。 絶対こんにゃくとか 味とかしみてないんだ、 そんでオヤジに 「なあ、もっと煮込んでくれよ」 とか言ったら 「食いさし突っ込むんじゃないよ!」 とか怒られて 「ガタガタ指図すんな!」 とか言ってなぐりかかって 屋台ぶっ壊して 110番されて 留置所にぶち込まれて 頭が冷静になってきたら 「ああ、何てことしたんだ...」 と後悔し始めて、 明日会社行けなかったらどうしよう、 やべっ、あの書類、 承認印押してないよ、 事務のねえちゃん 留置所まで書類持って 来るんやろうか、 そしたらねえちゃん すっげえ他人行儀な声で 「加護さん、こちらに承認願います」 とかいきなり言って 「なんで留置所にいるんですか」 とか言ってくれなくて 挙句の果てに会社に戻ったら ...トントン。 ビックリしたわ、誰やっ!? 「加護ちゃんお待たせ〜♪」 ... あー、ビックリした。 事務のねえちゃんかと 思った... 「となりいい?」 って言うので、 「うん、これ飲みな」 と言って 加護さんのボトルから シングルの水割りを ついであげた。 「なんだか煮詰まってるんだって? どうしたの?」 って言ってくれたので、 お言葉に甘え、 加護さんはとにかく 思いつくままに ダウンタウンマニアのねえちゃんに しゃべりまくった。 最初の方は あんまり日本語になっていなかった 気がするが、 それでもかまわず どんどんどんどん しゃべりまくってやった。 そのうちに お酒のせいだろうか、 おねえちゃんが お仕事上手なんだろうか、 だんだん話に輪郭が出てきた。 例えば... 「akiraってヤツがいてね、 サークルの忘年会で 閉会のあいさつ頼んだら サークルのみんなの前で あることないこと 大暴露されたから殺してやりたい。 どうやれば叩き殺せるかな?」 「えー、 あたし、ヤクザのお客さんと 知り合いだから たのんであげようか?」 「おう! とりあえず電話番号教えてくれや」 「教えてあげたいのは ヤマヤマなんだけどね、 いきなり加護ちゃんがかけたら ビックリするじゃない?」 「えー、そう言って自分 絶対中間マージン取るんやろ? 自分ホンマ、銭まみれの人生やな!」 例えば... るみという女はおかしい。 東京に遠出してくるっちゅうんで でっかいグッチの 紙ブクロ持ってきたから お泊りセットかいなと思たら、 中に絵本2冊とカガミしか入ってへんねん。 これでどうやって寝泊りすんねん。 持ってくる紙フクロまちがえたって、 ふつう重さで分かるやろ、 絶対こいつテンネン。 使えん。 例えば... おいらの先輩のりょうっていうヤツ、 あれヤバイ、狂ってる! マニアやもん。 忘年会の前に なんかエアーガンの展示会に 行くって言うから 先輩やから逆らわれへんし、 しょうがなく付き添いに行ったら 入っていきなり この30万円のエアーガンが欲しい! とか連呼してるし、 そこの店員、ほとんど軍服着てるし、 「スコーピオンは チェコスロバキアのマシンピストルだよ マガジンの装填数知ってる?」 とかいきなり話しかけてくるし、 「4000発くらい?」 って聞いたらブツブツ言いながら プイってどっか行くし、 あいつら全部キチガイやで。 例えば... 「サークルの忘年会って 何のサークル?」 「趣味のサークル」 「趣味って?」 「利き酒とか...」 「ふーん」 「あ、この香りは大五郎や!とか...」 「...」 「いや、ホンマはお笑いサークル」 例えば... ともちんっていうヤツがいて こいつがホンマ見栄っぱりでさ、 乳ナシのクセして 乳見えそうで見えない 服着さしてからに、 ホンマ見せたいねんやったら 男らしく全出しせいよ!って こわくて よう言わんかった... 例えば... サークルのアイドル華子ちゃんが 既婚者と夜の街に消えた。 おいらはもう 何を信じて生きていったらいいのか わからない... 例えば... サークル屈指の女好きの シュウというヤツは 自分のことをMとか言ってる。 自分の女に 「ホーラ、あたしの足で あなたの恥ずかしいところは こんなになってるわよ、 どうしてこんな風になっちゃったの、 言ってごらん。 本当にはしたないわねー」 というセリフを 自分で教え込んだりしてるのはいいとして、 ケイタイカメラにその恥ずかしい画像を スクリーンショット登録して セピア色に加工する のはおかしい。 今度遊ぶ約束したけど 神経がマトモなうちは 絶対いっしょに遊びたくない。 例えば... 忘年会、 1次会が終わって会計したら 6300円足らへんかったやんけ! 誰や、誰が出してないねんや! お前か!それともお前か!って、 ひとりづつ一列に並ばせて ビンタしていきたいわ! 2次会なんか 10000円以上足らんかったわ! 忘年会なんか 二度とやるか!! とかを ねえちゃんに掃き出していると、 頭の中がどんどんクリアになって あとにはシンプルな感情が いくつか残っただけとなった。 ... で、 そろそろお時間ということなので、 すんごくスッキリした気分で お会計の伝票を受け取る。 2時間で 53000円也 ... ふゆはさむい。 |