なべて世はこともなし
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2008年01月17日(木) 水道業者を家に呼んでみる

うちの台所の水道。なぜか水が出ない。いや、出ないわけじゃあないんだけど、ちょろちょろとしか出ない。1パイントのグラスを満たすのに30秒とかかかる。その代わり、お湯は問題なく出る。


つまりね、皿を洗うのとかにはお湯がちょっと熱すぎるという点以外、特に問題はない。が、生野菜をお湯では洗いたくない。まあ、大問題じゃあないにせよ、カイゼンは望まれる…といった程度の問題でしょうか。ちなみに、台所以外の場所、つまり、風呂やトイレでは問題なく水は出ます。


そーゆーわけで、さっさと管理会社に連絡すりゃいいものを、忙しいとか、面倒くさいとかなんだかんだで先延ばしにしてきたわけ(この辺がアイルランドに長く住みすぎとされるゆえん)。それじゃあいかんというわけで、月曜日に管理会社に連絡した。返事はすぐに来た。


「そりゃ、水栓(蛇口)部分の交換だね。こっちで払うから、水道業者に連絡して直してもらってください」


はいよ。…って、管理会社も見もしないで蛇口の交換とか言いきってしまってまあ。いい加減だよなあ。


で、この国では、こーゆー場合に一番いいのは、「知り合いの知り合い」を探すことです。知り合いの知り合いなら、あまりボラれることもないだろうし、来るのは2ヶ月先とか言わずにあんがいすぐに来てくれるとも思える。逆に言えば、突然どっかに電話したってあまりうまく行かない気がするのだ。かくして、会社の近所に住む同僚に聞いてみた。すると、彼女の家に出入りしている個人の水道業者(plumber)のケータイの番号を教えてくれた。


さっそく電話。


相手:「*^&%(#)」


…出たな。妖怪ドブリンアクセント


ダブリンに住んではや8年とか経つけど、未だにホントにとんでもなくアクセントが強い人の英語にはてこずることがあるのは事実。もちろんわかるんだけど、向こうは向こうで、ガイジンの英語は大変だと思い、こっちはこっちで、ダブリンのアクセントのひどいのは大変と思う。非常に分かり合えない人たちであることは疑いの余地はない。


で、結局、この日の夕方4時30分に来てもらうことで同意。あれま、来るのはどうせ来週とか言われるだろうと思っていたから素朴に驚き。そして、会社から帰宅後、家でどうせ時間通りにはこねえだろとタカをくくり、夕食を作り始めたら、なんとまあ、時間通りに来てくれましたよ。ただし、勝手に想像していたバンではなく、ごくごくフツーの乗用車に乗って。


この業者さん、ほぼ手ぶらで部屋にやってきた。「ほぼ」というのは、なんだか大きいポケットの中に何か入っているようなのだが、こーゆー業者さんの必携の道具、スパナだ何だが入った工具箱を持っていないのだ。こりゃ、今日は、きっと様子を見に来ただけだなと勝手に判断。


で、さっそく流しの下を点検開始。そこはすでに私が点検済み。ちゃんと元栓は開いていた。で、その様子を後ろから見ていたのだが、この妖怪ドブリンアクセントオヤジは、実は妖怪半ケツオヤジ…でもあった。


なんだか知らないけど、ズボンとついでに下着までずり下がって、流しの下に頭を突っ込んでるもんだから、見たくもないケツの割れ目が見えている。そういえば、数年前にも同じ妖怪を目撃したよなあ。とりあえず、こっちは、人参やじゃがいもの皮むきに忙しい。


すると、妖怪半ケツオヤジは、例の恐怖のボイラー室に移動。ボイラー室を点検。そして、今度は、何の意味があるのか知らんが、バスルームの水を全開出しっぱなしにして台所の水道の様子を確認。


以下、詳細は省略するけど(←書くのが面倒くさくなったんだろ)いろいろ試すこと30分、妖怪半ケツオヤジが結論を出した。


「こりゃ、元栓が閉まってるよ。管理会社に連絡してみるべ」


というわけで、管理会社に電話。この場合の「管理会社」は、このアパート全体の管理会社。ややこしいけど、この部屋の管理会社とは全く無関係。


管理会社:「元栓は地下にあります」


はい。では行ってみましょう。地下室へ。


ところで、鋭い人はお気づきかもしれないけど、元栓が閉まっていたら、当然風呂やトイレの水も出ないはず。だけど、風呂やトイレで問題がないというのは矛盾している。しかし、実はこれは矛盾でも何でもないのです。アイルランドでは「中水道」があって、風呂やトイレの水は上水道ではなく中水道。つまり、厳密に言えば、バスルームの水は飲用には適さないのです。私なんかは気にしてませんが、人によってはバスルームの水ではうがいすら嫌がる人もいる。


これは、聞いた話なので話し半分に聞いてほしいんだけど、中水道の水は各家庭に一日分くらいの貯水が義務づけられているらしい。それで各家にタンクがあるんだそうな。きっと一昔前は断水とかが日常茶飯事だったんじゃあないかと思う。ともあれ、台所の水が出ないということは、上水道の元栓が閉まっている可能性があるわけで、話としては矛盾しないのです。


で、場面は転換して地下室。怪しげなドアーがあったので開いてみると鍵はかかっておらず、中に入ることができた。中には電気のメーターや水道のタンクがあり、要するに完全な機械室。が、件の水道の元栓は見つからず。


そんなことをやっていると、警備員がやってきた。偶然なんだろうけど、挙動不審な私たち二人の元にほどなく警備員がやってきたことは素朴に賞賛に値すると思う。この警備員さんが、妖怪ドブリンアクセントがかわいいといえるほどひでーダブリン訛りで


「いや、賭けてもいいけど、元栓は各階にあるよ。鍵はドライバーを使えば開くよ」


この鍵、会社にも同様なやつがあるのでドライバーで開くことは知っていたが、警備員がそーゆーことをバラしていいのかな。


かくして再び場面転換して今度はアパートの6階のホール。各部屋の入り口近くに小さな扉があり、いかにも中に元栓がありそうだ。で、うちの一番近くの扉をドライバーで開けようとする。が、この妖怪ドブリンアクセントは小さなドライバーしか持ってないからなかなか開けることができない。私が家から大きなドライバーを持ってくると、扉は難なく開いた。


おい、プロの水道業者。道具くらい持ってこいよ。


が、その扉の中に元栓はなく、隣の家の前のドアもハズレ。そうして、結局うちから一番遠い場所のドアまでたどりついてようやく水道の元栓を発見。ところが元栓は天井の高さにある。妖怪ドブリンアクセントは


「おーい、椅子持ってきて」


だから、プロの水道業者。道具くらい持ってこい!


かくして、その天井の位置にある元栓をまわすと、ジャーという水の勢いよく流れる音が聞こえる。シロート目にも問題が解決したことが分かる。案の定、台所の蛇口からは勢いよく水が流れてきた。


…ってことは、結果から言えば、水道業者など呼ぶ必要がなかったわけ。ま、水道業者を呼ばなかったら、こんな公共スペースの扉を開けるなんて考えなかったろうからなあ。


もうひとつ気になること。前の住人が出て行った時に、わざわざ水道の元栓を閉めていったとは思えない。…ということは、新築で入居して以来、前の住人は元栓を開けることなく出ていったのだろうか。


さて、ここでお会計たーいむ。プロの水道業者を1時間拘束。この国の常識からすると、1時間で100ユーロといったところかな。ま、いくらかかろうと管理会社が払うという約束になってるから知ったことじゃないけどね。


私:「大家に請求するから領収書を書いてくれる?」
業者:「ええ?わし、そんなもん書かんけんね」



出たな、妖怪ダーツゼイ。確かに、領収書を書かなかったら今回の仕事、完全に無税だもんね。そういえば、以前、車の点検を修理業者にお願いした時は…


私:「領収書ください」
業者:「え?領収書がいるなら、料金は2割増しだよ。領収書がないから2割引きにしてあげてるんだから」



…なるほどね、確かに、VAT(付加価値税)が2割を超えてるんだから、無税にする分負けてくれてるなら文句はないわな。ま、そんなわけで、この国での税制は日本のクロヨンも真っ青のザルなんだろうなあという気がする。


ともあれ、領収書をくれないということは、自腹になる。それは困る。


私:「で、いくら?」
業者:「30ユーロ



はい?


それは安いよ。安すぎる。わかった。それくらいなら自腹でもいいよ。そう思って財布を見ると、30ユーロがない。いや、あるのだ。今日の支払いのためにお金を降ろしてきたので、50ユーロ札が数枚。かくして、50ユーロ札を差し出すと


業者:「いや、お釣りがない」


うーん。財布の中には20ユーロ札と5ユーロ札が1枚づつ。とりあえずそれを渡して、あとは小銭を渡そうとすると…


業者:「ああ、いいよ。これで」


ビバ、いい加減王国アイルランド。なんか知らんが25ユーロならいいや。


というわけで、相も変わらず結果オーライなアイルランドでの水道業者体験でした。あ、ひでかす、半額の12.5ユーロ、出せ。




アイルランドの水道業者さんへのツッコミはこちらへ(掲示板へのリンクです)。


2008年01月10日(木) いつになったら終わるやら。歯の矯正。

注:今日の日記、ちょっと力入れて書いてます。文字数にして5000字超。原稿用紙換算で12枚以上、普段の原稿の3倍程度の分量です。お茶でも飲みながらゆっくりお付き合いいただければうれしいです。




いやー、歯ってとっても大きいんですね。


…と言っても「なんのこっちゃ」でしょうから、一から説明しないと。


今年になって毎日忙しいです。連日残業にさらには今週末も含めて土曜出勤までなんだか毎日仕事ばかりしている気がします。そんなくそ忙しいのに、行ってきたんですよ。矯正歯科。そう、まだ、やってたのです。(ご存じない方は、2006年の2月あたりの過去日記を参照。数が多くて、いちいちリンクを張る気力がない(マテ))


30になって歯科矯正というのもなんだかお笑いですが、これを始めたのが2年前。で、ついに、昨日、矯正器具を外すことになったわけ。


朝早くの予約時間を守るために、ラッシュアワーのダブリンを1時間かけて移動(混んでなければ15分)。先生は慣れた手つきでワイヤーを切り(これが結構怖かった。口の中で、パチンパチンとえらい音をたてるんだもん)、一体どんな魔法を使ったのやら、歯をものすごい力で動かしたのに外れもずれもしなかったセラミックをきれいに外し、ついでに歯をきれいに掃除してくれる。


ちなみに、私、何やら知覚過敏とか言われる歯を持っているらしく、歯を機械で磨かれるだけでかなり痛い。これは完全な被害妄想なんだろうけど、なんか、荒く掃除されているような気がする。ま、私が先生だったら、かわいい女子高生の歯はていねいに掃除してあげるけど、30過ぎたオッサンの歯なんかできれば掃除したくないと思うに違いない。ともあれ、掃除の後、上の歯型モデルを作って終了。


じゃ、お世話になりましたと帰ろうとすると、


助手さん:「Snigelさん、今日の午後4時30分にまた来てくださいね」


…なんだよ?経過説明とか、そーゆことなら今やってくれればいいのに。


ぶつぶつ文句を言いつつ、車で会社に向かう。信号待ちの間に八重歯もなくなりまっすぐになった自分の前歯を舌で触れて、一番最初の


いやー、歯ってとっても大きいんですね。


って発言につながるわけです。


今まで矯正用のセラミックとワイヤがついていたので自分の前歯を舌で触るということができなかったわけ(そりゃ裏側は触れたけどさ)。そんなわけで、自分の歯がいかに大きいか改めて気がつかされたわけ。そして、下の歯には裏側からまたワイヤがかけられてしまったことに気がついた。


午前10時半というかんぜんな社長出勤の時間帯に出勤。すると、受付嬢嬢と呼ぶにはちょっと年齢がアレなんだけどさが…


受付嬢:「ああ、Snigel!矯正装置取ったんだね。良くなったね」


と言ってくれる。いい人だよ。この人は。


その点男はダメですね。同僚の男でこの事実に気がついた人は…絶無。人を褒めることができない世のダメな男どもは女性の爪の垢を煎じて飲め!と言いたい。私は、そういう鈍感な男にならないようにいつも努力してるのです。で、いつもこんな会話を会社でしてます。


私:「あ、髪形変えた?いい感じじゃん」
相手:「…髪を洗ってないから束ねただけなんだけど」

私:「あ、髪形変えた?いい感じじゃん」
相手:「…昨夜洗っただけ」

私:「あ、髪形変えた?いい感じじゃん」
相手:「…前髪自分で切って大失敗しちゃったと思ってるの」



…うん、私のように観察力がないくせに下手に誉めようとして失敗するより、最初から褒めないほうが正しいわ。


閑話休題。ごくごく正直に言うと、私が矯正装置を外したことに気がついた人は女性ばかりとはいえ、女性でも気がついていない人のほうが圧倒的に多い。つまりさ、八重歯を治すための矯正なんて完全に自己満足に過ぎなかったということ。


私が女性から見られるようになるためには、あと50センチ身長が高くなって(そりゃいくらなんでも大げさか)、あと10キロくらい痩せて、顔のすべてのパーツを取り換えたら見てくれる人が出てくるかもしれないなあ。…すいません。ちょっとトイレで泣いてきます


で、2台のコンピュータを自分の会社の机の上に置き(一台は通常業務、もう一台は新品のコンピュータの設定)もの凄い勢いで仕事をする。が、休み時間一切返上しても午後3時30分までの5時間で一日分の仕事を終わらせることができるはずもなく、中途半端な状態のまま、再び車で矯正歯科へ。渋滞とは逆方向だったため先ほどは1時間かかった道のりを30分で走る。それにしても無駄だよな。なんでさっき一回で済ませてくれなかったんだ?


で、もう慣れたとはいえコドモにまぎれて待合室で待つこと30分。ようやく自分の番がやってきた。助手さんがやってきて、


助手:「はい、これがSnigelさんの矯正前の歯型」


と言って矯正前の上下の歯型を見せてくれた。なるほど、矯正前と矯正後、当たり前といえば当たり前だけど、目に見えて歯並びが良くなったわ。あ、なるほど、こうやって人の財布から4000ユーロ(64万円)もふんだくったことを正当化しようとしてるな。…こういうひねくれたものの見方はやめるべきですね。はい。


助手:「それから、これが固定器具(retainer)ね。詳しい使い方はあとで先生に伺ってください」


と、渡されたのはボクシングのマウスピースのように上の歯にかぶせる器具を渡される。前から見ると針金が1本渡されているだけながら、上あご(口蓋)の部分、はえー話が口の中の天井にまで器具が入るようになっている。


…え?まだこんなもんつけるの?


聞けば、むこう3か月は食事のとき以外はずっとこの固定器具をつけていなければいけないらしい。それからしばらくは少なくとも寝るときはこの固定器具をつけていなければいけない。で、ようやく気がついた。この日、午前と午後の2度も矯正歯科にいかなけらばいけなかったのは、模(かたど)った歯型からこの固定器具を作らなければいけなかったからだ。なるほど。


で、この固定器具をはめてみる。まず、上あごにものすごい違和感。たとえて言えば、チェルシー(キャンディね)の大きいのが4つくらい上あごにくっついている感じ。なんか、吐きたくなる。それだけでも嫌だが、それ以上にとんでもないことに気がついた。


…話せない。


もちろん話せますよ。だけど、頭の悪い女子高生のような舌足らずな話し方になってしまう。そりゃそうだ。話すとこの固定器具に上あごのかわりに舌が当たるのだ。もともと声が高いのに、このアホな話し方だと、本当に情けないくらい頭が悪そうな話し方に聞こえる。それ以上に、何を言っているのか不明瞭。


先生:「大丈夫。すぐに舌が慣れるから。そしたらフツーに近い状態で話せるよ」


ホントかよ。このホームページでいつも言っているように、アイルランド人の言う大丈夫ほど、大丈夫じゃないものはございません。


かくして、数ヵ月後のアポイントメントをとってこの日は終了。で、せっかく町の近くまで来ているのにこのまま家に帰るのはもったいない、セールもまだ続いているんだしというわけで、そのまま車でシティセンターに向かう。


ところが、夕方のラッシュアワー、しかも雨という悪条件が重なって、道路が大渋滞。30分という、おそらく歩いても同じくらいだろうという時間をかけてJervis Shopping Centreの駐車場に5時45分着。


そして、センター内のDebenhams(デパート)へ。ここ、通りを挟んだところにあるRoches Storesという店を1年半ほど前に買収したために、通りを挟んだはす向かい側Debenhamsが2軒あるというあまりまともじゃない状況になってしまった。日本のデパートならば、売り場を大改造して「本館と別館」といった感じの気の利いた店づくりをしただろうけど、そんなことができなかったこの店、当然の帰結として、Jervis側にある手狭な店が閉店することに。ま、そんな事情で、閉店投げ売りセールでもしているんじゃないかと踏んだわけ。


店に着いたのは5時50分。まずはキッチン用品の物色を開始。ところがすかさず店員が


店員:「6時で閉店です!」


…まだ10分あるだろうが…という正論はこの国では全く通用しません。この国で6時に閉店ということは、6時に店員が家に帰る支度を始める…という意味のようです。日本のように6時になったら蛍の光が流れ始めるという意味ではないのです。しかも、きょう日、日本のスーパーやデパートで6時に閉店なんかするところないだろうなあ。


結局何も見る暇のないまま地上階の紳士服売り場へ(もともと紳士服売り場は地下だったのだが、どうやら売り尽くしが進んでいるらしく地上階に移動していた)。ここでもすかさず店員がやってきて、


店員:「あと5分で閉店です」


こら、まだ5時50分ちょい過ぎだぞ。


はいはいと軽く流しつつ、棚を見てると、お、いい感じのシャツがあるではないか。これ、どうだろ…と思っていると、再び店員がやってきて怒り気味に


店員:「何かお買い上げですか?だったらすぐにレジに行ってください。あと2分でレジが閉まるんですから」


お前ら、いつも人が店に入ってきても無視してるくせに(だから心おきなく買い物ができていいんだけどね)、閉店となると血相を変えて話しかけてくるんだな。そこまでして6時に帰らなければいけない理由でもあるのか?


で、そのシャツ、置いて帰ればよかったのに考えてみれば、店員に急かされてそのシャツを試着もせずに買うことに。よーく考えてみれば、店員にまんまと乗せられたってことになるんじゃないだろうか。


で、あと2分で閉まるはずのレジには数人が並んでおり、2台のレジはフル稼働中。ひとつのレジの係が私に


レジ:「現金でお支払いですか。クレジットカードですか」
私:「クレジットカード」
レジ:「ではこちらへ」



で、クレジットカードで払おうとするとレジ係、ものすごく非難めいた口調で


レジ:「あなた、現金で払うと言いましたよね」


カチンときた私、ものすごくゆっくりと


私:「いいえ、言っておりません。現金は持ち合わせておりませんので払えません」


はい。自慢になりませんが、このとき所持金はおそらく小銭のみで5ユーロを切ってましたから。小学生の財布と中身はほとんど変わらないそんな私は32歳。


で、他の客の会計が終わるまで待たされて、2分で閉まるはずのレジで5分以上待たされてようやくクレジットカードで支払い完了。バカヤロー2度と来るか!と怒り心頭だったのだが、ふっと気がついた。


そうだ。変な固定器具をつけてるんだった。で、目立たないように独り言を言ってみた。


…うん、客観的に何を言ってるかわからんわ。これ。


そして、それ以上に、この店、どうせあと2週間程度で閉店になるんだった。


と、振り上げた怒りのこぶしをどこに降ろしていいかわからないなんだか凹む状況で、センター内のスーパーマーケットのTescoへ。私は、過去日記で「Tesco嫌いです」 (1)(2)というシリーズ書くほどTescoが嫌い。ことJervisの中にあるTescoは人を憂鬱にさせる不思議な力がみなぎっていると思う。なんかこんなところで買い物をしている自分というのを感じて自己嫌悪に陥るというかなんというか。


そんなことを言うなら買い物をしなければいいじゃん…と思われる向きも多いだろうけど、なんのこたーない、ここで20ユーロを超える買い物をすれば1時間の駐車料金が無料になるのだ。ああ、なんてセコい。


というわけで、全日本Tesco嫌い会の会長に立候補しようと考えているくらいTescoが嫌いな私は、Tescoに落とす金を出来るだけ少なく、つまり、できる限り20ユーロに近い金額で買い物を納めようと頭の中で計算をしながら買い物開始。


で、これでかろうじて20ユーロを超えただろうというかごを持ってレジへ。レジは無人の自動レジではなく有人のところに並ぶ。そう、財布の中に小銭しか残ってないから、キャッシュバックをしようというわけ。


日本のデビットカードに同じような仕組みがあるかどーか知らんが、スーパーとかで買い物をした時に、一緒にお金を引きだろうという魂胆。たとえば、20ユーロの買い物に、90ユーロのキャッシュバックを頼むことができる。すると、口座から110ユーロが引き落とされて、20ユーロのスーパーの買い物のほかに90ユーロの現金が手に入るという算段。これをやろうというわけ。ともあれ、最大の目的は20ユーロちょいを使って駐車料金1時間分を稼ぐこと。


で、レジで言われたこと。


レジ:「19.96ユーロです」


うわっ、うまく計算しすぎた。ちゅうか、4セント、足りないじゃん。


ここで、例によってここで低性能の自前の脳が働く。レジの近くにあるチョコレートバーでも持ってきてむりやり20ユーロを超えさせようか。…そう思ったものの、レジの自分の後ろの行列を見て(←この辺が日本人)その考えを断念する。


で、そのたった4セント不足したレシートを持って別の係のところへ。そう、いい加減王国アイルランド、レシートをチェックせずに駐車券サービス券をくれるんじゃないかと期待したわけ。かくして、係の人は、まじまじと私のレシートを見て…


係:「4セント足りないわね。ホントはダメなんだけど、いいわ、サービス券、あげるわ」


初めてTescoを見直しました。たかが4セントとはいえ、サービスしてくれた係の人、ありがとう。




長いだけに、突っ込みどころが満載の日記です。ツッコミはこちらへ(掲示板へのリンクです)。


2008年01月08日(火) ドイツでもある(?)オヤジの悲哀

私、今日も元気です。


…それがどーしたという方、あのね、会社の自分の机の周りの同僚がそろいもそろって、ゲホゲホやっているのです。風邪が社内に蔓延してます。そんな中で、なぜか私だけが元気というのは十分謎です。ま、元気に越したことはないんですが。


今日の日記には日頃あまり日記に登場しない私の彼女が出てきます。彼女、私の彼女を務めることができるだけあってある意味人智を超越したすごい人(別の言い方をすると変人)なのですが、それ以外では、ドイツ人であり、幸いにして女性であり、ま、その他いろいろです。あ、最初に言っときますけど、今日の日記はオチなしですよ。


毎年恒例のようになって自分の彼女の実家でクリスマスを過ごすのは何度目でしょうか。もうなんか「いるのが当たり前」のように、本人も彼女自身も、そして彼女の家族もが思いこんでいることがちょっと怖いですが。


この家には毎年伝統があって…というか、毎年同じことの繰り返しなのですが、クリスマスの日に本家に家族が集まるという伝統があります。毎年、同じものを食べて、同じように集まるというのは進化がないと言えそうですが、考えてみれば、日本だって、大晦日に莫迦の一つ覚えのように紅白歌合戦を見て翌朝にはおせち料理を食べるのだから、同じと言えなくもないかも。


ともあれね、クリスマスの日に本家に集まるわけよ。で、今日もまた本家の集まりに行ってきました。落ち着いて考えると、結婚してるわけでもない完全なる「ガイジン」の私、当たり前の顔をしてその集まりに行っていること自体厚顔無恥と言えるわけですが。


初めてこの集まりに参加したのが…うわあああ、もう7年前。ここにね、親類のコドモが3人いまして、7年前に年齢が確か9歳とか10歳だったはず。この三人が親に命令されてちょっとしたコンサートを開いたわけ。バイオリンとか、バスとかのの楽器を使って。ご存じのとおり、バイオリンってのは音を出すこと自体一苦労なわけ(ゆえに私は触ったことすらない)。


そんなわけで、ようやく主旋律できらきら星とわかるような演奏だったのだが、年々歳々レベルが上がってきて、けっこういい感じになったと年々思っていたら、いつの間にかかわいかった3人のコドモは気難しいティーンズになっており、コンサート自体も開かれなくなってしまった(それでもこの本家での集まりにはちゃんと参加するんだけどね)。なんだか、タダのガキだった女の子がドキッとするようなティーンズになったのを見て、別の男の子がいつの間にか地元のオーケストラに参加するようになって(もっと言えば、日本ならオバ様方が大騒ぎするようなかっこいい青年)、こっちは自分がトシを取ったことに対してぞっとするわけです。


ちなみに彼女には姉が一人。つまり、家族構成は男一(父)、女三(母、姉、妹)なわけ。つまりね、父はずーっと女ばかりの環境に耐えてきた…というか少数派の悲哀を味わい続けてきたと思われる。平たく言えば、女三人が徒党を組んだら勝ち目がないということ。たとえば、見たいテレビ番組も違えば、趣味も違う。かくして、この御仁には息子が欲しかったのではないかと思われるフシが多分にあるわけ。


今でも覚えている。ドイツ語が全く駄目だった(と書くと今は駄目じゃないような感じですがそれは誤解)一番最初の頃、いきなり振ってきた話題は、


「戦艦大和と戦艦ビスマルクについて」


…確かにこの話題じゃ娘は乗ってこないわな。


だけどお父さん、何か忘れてませんか。…私たちには通訳がいるという事実を。


最初のころは彼女もなんとなくいやいや通訳をしていてくれていたけれども、最近じゃお父さんが私にこのテのネタを振っても完全にスルー。私は私で申し訳ない気持ちでいっぱいになるんだけど、戦艦大和のことなど興味がないから全く知らない。言葉の壁もさることながら、趣味や興味でも埋めようのない断絶を感じてしまう。ゆえに、どうしようもないのだ。申し訳ないけど。


で、クリスマスの時期に、彼女と二人で持参したコンピュータの中に入っていた日本のドラマをのんびり見る。見たもの:


「パパとムスメの7日間」


普段日本のドラマなど全く見ないのだが、ひでかすが合法だか違法だかよくわからんサイトを見つけてきてそこからダウンロードしたものが偶然コンピュータの中に入っていたのでクリスマスの期間試しに第一話を見てみようということになり、二人してハマってしまい最終話の第7話まで見てしまった次第。


あまりメジャーじゃないドラマだろうからネタバレにならない程度に解説。一言で言うと、ひょんなことから中年オヤジと娘の体が入れ替わってしまうという内容。コドモのころに「おれがあいつであいつがおれで」とかいう本を読んだ記憶があるけど、それと全く同じコンセプト。要するに、ネタ自体はカビが生えたような新鮮味のない話なのです。


だけどね、出演者の好演が功奏してか、そんなカビの生えたような新鮮味のない話ながら面白いのよ。高校生とオヤジとの世代の断絶が良く描き出されてる。で、別にこのドラマの論評をしたいわけではない。一緒にドラマを見ていた彼女が首をかしげるのだ。「なんでこの親子は2年間も何も会話をしてないの」って。


はたしてこれが「よくあること」なのかどうかは私にはわからない。だけどさ、父子関係の歯車がどこかで狂って、オヤジと高校生の娘の間で会話が完全に途切れてしまうってのはまったくありえない話ではないような気がする。…なんだけどそれが私の彼女には理解できないというわけ。まあ、確かに冷静に考えてみるとそうだよね。ひとつ屋根の下に住んでいる親子が2年間も会話がないというのは常識で考えてどうかしている。


だけどさ、それは大げさな話としても、ドイツ人の父子関係を見てもオヤジの悲哀ってのはかなり明確に伝わってくるわけ。そういう意味ではもし自分に子供ができたら息子のほうがいいかな…とか思ったりもして。





オチなしの日記でごめんなさい。苦情はこちらへ(掲示板へのリンクです)。


2008年01月04日(金) ダブリン空港から自宅は、ダブリン空港からフランクフルトより遠かった

あけましておめでとうございます。今年も相変わらず続けていきますのでよろしくお願いいたします。


さてさて。ドイツではまた別の機会に書くとして、まあ、相変わらずでした。で、今日は昨日、1月1日元旦の話。つまり、ドイツからダブリンに帰ってきたときのお話。


…と書くと、またフライトが遅れたのかとか思う方がいらっしゃると思いますが、違うんです。ダブリン空港に着いてからのお話。


フランクフルトからダブリンまでのルフトハンザの最終便。定刻午後10時35分着。これがまたビミョーなんですよね。すなわち、空港からすっと脱出すれば、午後11時30分、シティセンター発の最終バスに間に合う…かも…というわけ。


実際先月に預託荷物なし(手荷物のみ)でこれに挑戦したら街で走る羽目になったものの、結局なんとか最終バスに間に合った。終バスに間に合うかどうかって金銭的にはえらい違いになるわけ。空港から一日有効のバス券を使えばおよそ5ユーロ。もっと言えば空港から町までローカルバスを使った時には90分券で1.7ユーロで家に帰れる。それに対し、タクシーは40ユーロ。ね、だいぶ違う。


というわけで、できるだけ早く空港から脱出したい。ところが、預けた荷物が待てど暮らせど出てこない。ようやく出てきたのは午後11時5分。こりゃ間に合わないわ。あまり好きじゃないけどタクシーで帰ろう…と思って出口に向かって唖然とする。


タクシー待ちの行列がターミナルビルの外から中まで伸びている。


こりゃ下手したら1時間待ちとかになるんじゃないかと思い、低性能の自前の脳を活用して考える。あ、そうだ、町までバスで行ってそこからタクシーに乗るというテがあるわ。そうすれば、このばかばかしいタクシーに乗るための行列をパスできる。ホントに度胸のある人は、長期滞在者用の駐車場に行く無料シャトルバスに乗り、そこから流しのタクシーを捕まえるという離れ業もありますが、作者はそのようなことは推奨しません。推奨しないんだってば。


というわけで、747(ダブリンバスが運行する街までの直行バス)のバス停に行くと…うわっ、こっちも5−60人は並んでるわ。で、通りの向こうのAir Coachのバス停も同様。一体全体どうなっちゃったんだ。この空港。こんなに大人数の人が待っているのを見たことがないぞ。


根本的な問題としては、なんでこんだけ運行本数の多い空港なのに鉄道がないのよ?出発地のHannover空港なんて、ホントにローカル空港なのにS-bahn(ドイツの近郊列車)が毎時5分と35分にHauptbahnof(中心駅)と空港からきれいなパターンダイヤで出ているぞ。たとえいつも空気だけを運んでいるような感じでも。


ともあれ、747はすでに乗車中で、列がゆっくりと動く。が私の数人前になって、ダブリンバスの係員が


係:「手荷物のみのお客だけ!スーツケースのある人は次のバスに乗って」


と言い出す。なんかイラついた私は41(ローカルバス)のバス停に移動。確か11時15分にバスが来るはずだと思ったわけ。


ところがこっちにも軽く5−60人の人が待ってまして。何が起こったのかは知らないが、いくら正月とはいえダブリン空港のバス停がこんなに混んでたことは見たことないぞ。


で、41が待てど暮らせど来ない。ついに11時30分になる。終バスが11時45分ごろ通過予定なのでこれ、バス停にいる人を積み残すことになるぞ…と思っていたら、ダブリンバスにしては上出来としか言いようがない、なんと臨時バスがやってきた。人が殺到する。


バスはバックしてバス停の正しい停車位置に止まろうとしたが、さっきの係員が誘導に来ないし、乗客がドア付近に殺到したのであきらめて本来の正しい位置から大分離れた場所で客扱いを始める。おーい、マジメにバス停付近で待っていた私の立場はどーなるんだよ?


かくして、その臨時バスに人が殺到しているのをちょっと出遅れた感じで見ていると、遠くの方にSwordsからきた41がわざとバス停から離れたところに停まってお客を降ろしてさっさと発車しようとしている(よくやるんだよ。こいつら)。


ゴルァ、待てい!!と25キロ超のスーツケース、およびラップトップコンピュータを持って死力を尽くして走る。こんな莫迦なことをしているのは私だけと思ったら、後ろに10人以上の人が同じようにスーツケースなどの荷物を抱えて走ってる。客観的に見てかなり笑える光景です。


で、ようやくバスを捕まえて運賃を払い乗り込むと、この運転手さんが仕切る仕切る。


運転手さん:「はい、スーツケースは必ず棚に入れて。ほら、そこ、通路に置かない。いや、そこは車いす用のスペースだからダメ。ほら、そこが空いてるでしょ」


そんなことをしているのを見ていたら、さっきの臨時バスが行き先表示もないまま私の乗ったバスの横をかすめて発車していく…何のために走ったんだ。オレ。


そんなこんなで、バスはようやく発車。日付が変わって15分くらいして市内のちょっと手前のバス停で降りる。もうこの時点で着陸してから1時間30分が経過。移動距離はわずか10キロ。ヒコーキならパリくらいにとっくに着いてるよ。


で、バス停で降りて、とりあえずスーツケースをバス停の陰に隠し、タクシーを捕まえる。あ、アイルランドの流しのタクシー、特に夜間は当たり前のように乗車拒否をするんですよね(タクシー近代化センターでも作ればいいのに)。荷物があったら面倒くさがってタクシーが止まらないと思ったわけ。その作戦が功奏してか、すんなりタクシーを捕まえることに成功。


で、スーツケースを載せようとしても、運転手は降りてこようともしない。仕方ないから自分でトランクを開けてスーツケースを積む(結構空しい)。で、乗って気がついた。運転手さん、えらい爺さん。


私:「XXX(うちの住所)までお願い」
運転手:「あい?」
私:(ゆっくりと)「X X X」
運転手:「YYYホテル?」



誰もそんなこと言ってねえよ。ちゅうか、この爺さん、今にして思えば、志村けんがコントでやるようなじいさんだったな。


私:「わかった、道は教えるから取り合えずZZZに向かっていって」


かくして、タクシーは動き出したのだが、何だか知らんがこのじいさん、教習所もびっくりなくらい安全運転。40キロ以上は出さないのだ。そのうち自転車に乗ったじいさんが歩道から追い越してゆく(これはウソ)。


さらに、まっすぐ行けばQuayに出るという交差点で、わざわざ左折。もしかして、ボろうとしてるのか?いいよ。別に。チップはもちろん払わないし、苦情を言うよ。


とか考えてたら、今度は、なんだか車線をずっと割って走ったり、やたらと中央線に寄ったりとか、まともはとても言いかねる運転をする。


もしかして、この運転手、酔ってる?


いや、まさかね。さすがのアイルランドでも乗務中のタクシー運転手が飲酒運転はしないでしょう。


…なんて思っていたら、なんと狙ったようなタイミングで、警察が飲酒検問をやっている。タクシーだから素通り…と思っていたら、悲しいですね、アイルランドではタクシー運転手は信用されてないようで、路肩に停車を命じられる。


警察:「こんばんは。あなたはタクシーですか?」


…見てわからんのか。黄色い天井のサインがお前の目にはいらんのか?


警察:「はい。このストローに息を吹き込んでくださーい。はい、まだまだ、もっと息を吹き込んで。はいオッケーです。呼気中のアルコールは…0ですね。A Happy New Year」


…って、あんた、酔ってなくてこんな運転をしてるの?むしろ、飲酒運転をしてくれてた方がここまでの運賃がチャラになってありがたいんだけど。


私:「タクシーの運転手さんに飲酒検問をするなんて、タクシーの運転手さんが、飲酒運転をするわけないですよねえ」
爺さん:「あい?」
私:「飲酒運転をするタクシー運転手さんているわけないですよね」
爺さん:「いやー、いるらしいよ。わしは乗車前はシャンディ(ビールをソーダで割ったもの)も飲まないよ」


わかった。話しかけて悪かった。だからもう少し早く走ってくれ。


結局無事に家に着いた。運賃は18ユーロ。空港からタクシーを捕まえるより半額程度ですんだからよかったけど、それでも着陸後2時間もかかるってやっぱ異常だよ。


というわけで、今年もよろしくお願いします。ちなみに作者、非常に多忙です。明日、土曜日も休日出勤が確定いたしました(とほほ)。






掲示板のコメントへのお返事再開です。24時間以内を目標にお返事しますので、ぜひこちらへ(掲示板へのリンクです)。


2007年12月21日(金) 年末スペシャル。JADEでの忘年会に行く

もう、例年恒例となりました年末スペシャルです…が、今年は致命的に時間が足りません。明日から冬休み(=元日までアイルランドから逃亡)なのですが、今晩は最後の忘年会(あ、クリスマスパーティーと言われているようですが、どっちかというと、私には「忘年会」のほうが正しい言い方のような気がします)。


で、今は本来仕事をしなければいけない勤務時間内なのですが、その実、3割くらいの人はすでに休みに入っているし、残りの7割の人はまったく仕事をする気がないし…というわけで、堂々と日記の更新に取り掛かりました。本日の日記、いつも以上に推敲、誤字脱字チェックなしですので、なにか文脈がおかしかったり、漢字の間違い、根本的な人生の間違いなどがあった場合もご容赦を。


話は今月のはじめごろに戻ります。私の勤める会社の課の同僚があちこちに電話をかけまくってます。


同僚:「テーブルの予約をしたいんですけど…14日の金曜日なんですが…え?人数?25人です。え?まったく無理?そうですか。どうも」


そんな会話を仕事そっちのけでえんえん繰り返しているわけ。もう少なくとも20件は電話をかけただろうか。でも、ことごとく、無理。当たり前じゃ。クリスマス前の金曜日に25人分のテーブルを直前になって予約しようなどシロート考えでも無理。ついに同僚は私に泣きついてきまして(なんで私なんだという疑問は残りますが)。


私:「私がよく行くレストラン、個室もあるけど、あまり勧めないよ。料理は絶品だけどあまり場所がよくなくて(裏通りであまりいい感じじゃない…だから逆に隠れ家的なんだけど)、建物もボロいよ。だけどどうしようもなかったら当たってみたら」


そう、私のお気に入りのレストランJADE(この過去日記は必読)。個人で行くにはオススメだけど、会社のパーティにはどーなんだろ。例えて言えば、毎年高級フランス料理に行って忘年会をやっている連中を、ホントにおいしい庶民的な居酒屋に連れ出す…と言えば感じが分かってもらえるでしょうか。たとえどんなにおいしくても文句を言いだしそうです。


その後、私は自分の席を離れて数分後に戻ってくると…


(本文とはカンケーないんですけど、ここまで書いた数分後に何と会社で停電発生!その回復に追われた私は結局会社での日記の更新を断念。ここからは自宅で書いてます。あと1時間で日記を書きあげて、ついでに荷造りもして出かけるなんてチメー的に無理なんですけど…)


同僚:「Snigel。JADEに予約、取れた…と思う」
私:「何、その、『思う』って」
同僚:「いやー、すんごい訛りでよくわかんなくて。Snigel、悪いんだけどもう1回電話してくんない?」



やだねー、こーゆーの。絶対相手は気を悪くするよ…と思いつつ電話すると、案の定(確かにわかりづらい英語で)


相手:「予約はできてます」


…そうだよねー。ごめんよー。そりゃ気分を害すよねー。しかも、私だって中国人じゃないんだから、英語で会話するんだから根本的に問題の解決になってないような気が…。それにしても、クリスマス前の金曜日に予約が取れるJADEって一体…。


それにしても、かなり不安になる。いくら他の場所が開いてなかったとしても、あの独特の雰囲気の場所はどう同僚たちの目に映るのだろうか。特に、うちの副社長あたりはそのあまりに庶民的な雰囲気に怒り出すんじゃないだろうか。不安になるが、なんのことはない。私は幹事ではないので私に責任はないのだ!と言い聞かせていると一斉メールが届きまして…


「忘年会の場所が決まりました。Snigel推薦の中華料理店です」


…お前、すでに責任転嫁モードに入ってるだろ。場所の評判が悪かったらオレのせいになるんだろ。


そして、当日。


お世辞にもいい場所とは言えない場所にあるこの中華料理店JADE。予約時刻きっかしに行ってみると、3階のカラオケつきの個室にはすでに数人が来ていた。しかし、どー見ても25人が収まるとは思えない。幹事を捕まえて聞いてみると実は15人ほどしか来ないという。しかも、心配していた副社長は欠席。副社長には悪いがラッキー。


そして、場が異様なほど静か…なのだ。なんだかビミョーな雰囲気が支配している。ウェイトレスさんが来たのでとりあえずビールとワインを頼む。数分後、飲み物が届いたのだが、場の雰囲気は変わらず。それをウェイトレスさんが気にしたのかカラオケの音量をBGMがわりに上げる。中国の演歌風の怪しい曲が大音量で流れ、画面に目をやると、怪しい中国人カップルが雨の中ひとつの傘の下で向かい合っている。ビミョーな雰囲気にターボがかかる


そのうち誰かがカラオケの音量を下げ、ターボのかかったビミョーな雰囲気は先ほどまでのビミョーな雰囲気レベルになるが、なんか、居心地が悪い。


それから全員がそろったところで、幹事がワインとビールを追加しつつ、メニューをよこせとさっきとは別のウェイトレスさんに言う。


ウェイトレスさん:「メニュー?今日はコース料理になってますよ」
幹事:「聞いてねえよ!」



そう、どうも意思の疎通が全くできてなかったらしく、レストラン側はコース料理を出す予定で、幹事はそんなことを聞いてなかった模様。ますます空気が…。


ウェイトレスさん:「マネージャーを呼んできます」


そこにやってきたのはマネージャー。いつもの中国人のおじさん。この人、話し出したら止まらない人なのだ。ちなみに、私はドアを背にして座っており、つまり、ドアのところに来たマネージャーさんからは私の背中しか見えない。


マネージャー:「ここのコース料理はオススメでして、パーティーのお客さんにも喜んでいただいてまして、うちは中華料理店で唯一なんとか百選にも選ばれてまして、ニューヨークタイムズにも記事が載り(ホントかよ…とえんえん続く)」


マネージャーさんの必死さが伝わってくる。中華料理屋さんが裏でどういう食材管理をしているか知らないけど、たぶん15人分の用意した食事が無駄になったら被害甚大だろうなあ。が、しかし、みんなの反応は結構冷やか。マネージャーさん、劣勢に立たされる。


そこで私は冗談で、演説中のマネージャーさんにカラオケ用のマイクを渡す。


マイクを渡されたウェイターさん、アイルランド人ばかりのテーブルにある意味顔見知り(常連)の私の顔を見てそれこそ地獄に仏を見たような表情を見せまして…


マネージャー:「ああ、毎度ー」
幹事:「知り合いかい!」



やむなく私はマネージャーさんの側に立つことに。


私:「いや、ここの料理はホントにおいしいから(←これは誰にでも胸を張って言える。ホントにおいしい)、マネージャーさんを信じていいと思うよ」


この一言でとりあえずその場は丸く収まる。


が、それからが悪かった。忙しかったのかこの日に限って何だか知らんがサービスが遅いのだ。中華料理の偉大なところの一つはスピードだと思うのだが、なんだか遅い。さあ、小一時間近く待ったろうか。スターターが来るまでに。











こちらスターター。いや、だいたい中華料理なんだからコース料理にしなくてもよさそうなものだが。一部写真に撮れてないのもあります。だってピラニアのいる川に肉を投げ込んだような状態になったもんで。


それから、メインコースが来るまでも長かった。隣の席にいたマネージャーは私に真顔で


「まさかこれで終わりじゃないよね」


…大丈夫ですよ。メインコースはちゃんと来ますよ。…たぶん。


また、それからかなりしばらく待ってようやくメインコースがやってきた。いつも頼む綺羅星のごとき定番商品がこれでもかというくらいに出てきました。














いつも通りおいしかったです。特に豚の角煮は絶品…なのに、アイリッシュには評判が悪かった。


それから先のことは書きたくない。酒がまわってカラオケが始まると収拾のつかない状態に。システムディベロッパでいつもおとなしいおじさんが急にマイクをつかんだら離さない妖怪マイクオヤジに大変身。最初のビミョーな雰囲気はどこへやら。みんな歌う。歌う。私はこっそりと写真とビデオの撮影にいそしむ。


ところで、ここのカラオケ、日本の曲も数ページありますが…




歌える曲なんかねえぞ(ちゅうか、アイルランド人の前で日本の曲など歌う気はないけどさ。それ以前に、誤字脱字が例によってツッコミどころ満載状態です。


かくして、終バスを逃した私はLUASとタクシーを乗り継いで帰宅。


翌朝。聞いたところによると多くの人たちはカジノに行ったらしく、疲れ果てた表情。で、疲れ果てた表情の連中に昨日の乱痴気騒ぎの様子のビデオを見せると…


「Snigel、お前よー、酒の席にカメラを持ち込んじゃいけないよ。もう、お前、ITのパーディーには出入り禁止」


…だそうです。もちろん後半は冗談なのですが、酒の席にカメラを持ち込むとあまり快く思わない連中がいるようです。そりゃそうだ、私のカメラに納まっている模様を会社のイントラネットに乗っけたりしたら、いいお笑いの種になりそうだわ。ホントはここに晒し上げにしたい気分だけど、新年早々クビになるのはイヤだから今日のところはやめておきます。


数時間後、副社長室に呼ばれまして…


副社長:「Snigel君。昨夜はみんなを変な中華料理屋に連れていったんだって」


…やっぱオレのせいかよ。


時間切れです。皆様、よいお年を。さよーならー。





作者はたぶん1月1日までこのページの管理を放棄してます。それでもコメントを下さるというありがたい方はこちらへ(掲示板へのリンクです)。




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