なべて世はこともなし
日記アーカイブ(インデックス)へ|前日の日記はこちら|翌日の日記はこちら
|アイルランド真実紀行へ
| 2002年02月12日(火) |
精神的窓際族。夢は荒野を駆け巡る。 |
お世話になった会社に辞表を出したのが昨日。外はびっくりするくらいの冬晴れのいい天気。とっても寒いのですが、あまりの天気の良さに会社の外で空をぼーっと見上げていると(やっていることはほとんど窓際社員)ダブリン空港に向けて最終の着陸体勢に入ったエアリンガスのB737が飛んで行った。会社の外からどこの会社のどの飛行機かがはっきりと見て取れる日がよくある。その飛行機を真上に見上げながら、「ああ、どこか行きたいなあ」とひとりでぼーっと考えた。
考えただけではつまらないので、インターネットで航空券を探してみた。安かった。そんな折り、私の上司の金太郎(初登場ですね。足柄山でクマに乗っていそうな顔をしたアイルランド人。おなじみの「スーパーアホバイザー」より、10倍仕事ができて、20倍話が分かるので好き。)がやってきて、「お前会社辞めるんなら、年休消化していけよ」というとてもありがたいお言葉。なんでも去年の12月と今年の1月、土曜日に働きつづけたのが3日分の休暇として消化できるそうな。うーん、金はないがどこかに行こうか…そんな気分になってきました。ぼーっと夢を見ていると、さらに私は精神的窓際族の趣に。
昨日とても残念に思ったのは、辞表提出の瞬間。「辞めないでくれ」と泣いてすがられるとは夢にも思わなかったが、少しくらい驚いてくれるかと思ってた。すると、私のサブマネージャー、まさに、「あ、そ」と何食わぬ顔で言われてしまった。まるで女性にプロポーズをするかのようにどきどきしていた私は思いきり肩透かしを食らってしまった。こんなものなのかな、と吹っ切れた気分になった。
そう、自分にとってこの3年近い時間は本当に長かったと思う。大学を卒業して初めて派遣やアルバイトではなく正社員として就いた仕事。何よりも、苦労の末にダブリンで手に入れた仕事。例えやっていた仕事自体がサルでもできるような仕事だったとはいえ、私には一方ならぬ思い入れがあった。でも、会社にして見れば、ただ単に、ひとりの社員がまた去って行く、それ以上のものではないらしい。
アイルランドは好きではないし、ここに骨を埋めるとは到底思わない。それなのにダブリンに新しい仕事を得たこの矛盾。多分、現状では一番いい選択をした(と思いたい)のだけれども、何となくの割り切れなさが残る。自分が何をしたいのか分からないままに、目の前に与えられたことを淡々とこなすうちに何時の間にか26歳になった。
数日前、久しぶりに祖母の家に電話をした。祖母の懐かしい声が響く。
「もうSnigelも25だっけ?」 「26だよ」 「26になるんでしょ」 「27になるの」 「えっ?お前早く結婚しな!」
自分がそんなことを言われる年になったことが信じられない。確かに私が小学生くらいのころ、なんの根拠もないけれど、26くらいで結婚しているような気がした。「オトナ」の年齢だった。自分が、そんな年になっていることがどうしても信じられない。
ふぅ、辞表を出して、精神的には窓際族になったことで、こんなことばかりずっと考えています。多分、誰もが考えていることなんだろうけれど。とりあえず、作者の戯れ言におつきあいくださった皆様に心から感謝致します。たまにはこういうことも書かせてね。
まさに蛇足だけど、この祖母のダンナさんつまり、じいさんも元気に健在です。このじいさん、身内びいきですが、本当に頭と人当たりが良く人に愛されているいいじいさまです。ちょいとばかしお茶目なところもありまして、数年前、どこかの家で酒に呼ばれてその帰り、酔ってチャリンコに乗って自宅に向かっていたそうな。道半ばにクランクカーブがあってじいさんそのカーブを曲がりきれずに、真っ直ぐカーブの先にある建物に突っ込んでしまったそうな。幸い、怪我をすることもなかったのですが。まあ、これだけなら何が面白いのか分からないでしょ。まあ、突っ込んだ建物がフツーの場所じゃあなかったのです。答えは久しぶりに投票ボタンに埋め込みますので押してみてくださいませ。私はこんなお茶目なじいさまが大好きです。
日記才人の投票ボタンです
| 2002年02月11日(月) |
お待たせしました。結果発表です。 |
洪水に見舞われて見事に30分も遅刻をした面接、まあ、たとえ雨が降ろうと槍が降ろうと面接に遅刻をするわけにはまいりません。という訳で、誠に残念ではありますが、面接の結果は…。
まあ、仕方がないですよ。自分で過去の日記に書いた通り、面接に遅刻をするなんてどんな理由があろうと論外だと思います。Riffey川が溢れたなんて単なる言い訳に過ぎませんからね。まあ、仕方がないということにしましょう。
なんて言いつつ、実は、
採用
されてたりする。で、本日
辞表
なるものを提出しました。
辞表を提出する瞬間、何となく二の足を踏みました。確かに大した仕事じゃないし、上役の人間との軋轢もあるし…。とはいえ、アイルランドではいつくばって苦労して最初に得た仕事です。感慨深くなるのも分かっていただけるのではないかと思います。辞表を提出した瞬間に、ありきたりな表現ですが、自分の中で何かが終わったのを感じました。この選択が吉と出るか凶と出るか。蓋を開けてみないと分かりませんが。
で、今後なんですが、いろいろ微妙な問題が絡んできますんで、転職の経過の逐一の報告はホントはしたいのですが差し控えさせていただきたく思います。次の会社との契約の問題とかいろいろあるのです。まあ、匿名でやっているとはいえどこでどうネタがばれるか分からないですし、とりあえず落ち着くまでは不要な面倒は避けたいので、この件に関してはしばらくノーコメントを決め込みますのでご了承くださいませ。というわけで、どこに転職するのかとか、そのテの詮索に関してはご遠慮いただけると幸いです。日記にも、今後少し歯切れの悪い部分が出てくるとは思いますが、ご理解をお願いしたく存じます。
それにしても、どういう了見で私なんかを採用したんだろう?そんなにアイルランドには人材がいないのか、それとも、履歴書でトランプをして私を引き抜いたのか。嬉しいとかいう以前にすごくギモンです。どうしても、アイリッシュを含めた20分の3に私が含まれる理由が分からない…。
日記才人の投票ボタンです
| 2002年02月10日(日) |
あなたの知らないアングラトーキョー |
注:今日の日記、良い子は読まない方がいいかもしれません。
数日前の日記と掲示板で、「車を買いたい」などとほざいたことをご記憶でしょうか。やはり車を買った人は少ないのか、情報の集まりはいまいち…というか反応がありません。ゆいいつ、うちの同居人ひでかすが、「この雑誌に日本の輸出代行業者の広告が載っているよ」と持ってきてくれたのが、かなり昔の「メトロポリス」という雑誌。
おそらくたいがいの人は「なにそれ?」といわれるに違いない。この雑誌、東京に住むガイジン向けの無料の英語で書かれた雑誌。私は見たことがないのだが、金曜日の朝早くに、地下鉄の駅を含むガイジンが集まりそうな場所を選んで都内各地いっせいに配られて、あっという間に3万5千部が消えるらしい。なかなか謎めいている。
で、何気なく中を覗いてみると、まずは背の高い「いかにも」という感じのガイジンさんたちのファッション雑誌の趣。すべて英語で書かれており、本当にこれが日本で配られているのか疑わしくなってくる。さらにぱらぱらめくると、催し物の案内や、いろんな広告が出てきて、その合間に記事、で最後の方にTokyo Classfiedという3行広告のページが最後の16ページ、全体の4分の1を占めている。で、この3行広告を何気なく見て、私は唖然としてしまった。その内容のすごいことすごいこと…。ちょっと転載します(さすがにまんまはまずいだろうから、多少変えてます)
Free Japanese lessons and safe sex can be enjoyed with a group of gentle, educated Japanese males who seek woman, 20s to early 30s, of any nationality. No promiscuous or swap parties.
Canadian male model seeks sex friend. I'm good looking, clean, no decease, no fat, have some muscles, all my hair and am funny and nice.
ええと、はっきり言ってこの二つなんてまるでおとなしい方です。こんな広告が目が痛くなるような小さな活字でえんえん続いているわけです。うーん、これはまさに私の知らない東京。だいたい、「日本語のレッスンとセックスをセット」という発想が…うーん、私のコメントなんか無意味だろうから省略。二つ目の広告、「all my hair」ってなんやねん?
これ以外にも多く見かけたのが、
「旧ソ連バルト三国ベラルーシ、ウクライナの女性と結婚しませんか。あなたでも必ずできます」
なんて感じの「いらんお世話や!」という広告。挙げ句には、
「マジックマッシュルーム 1g \500」
という店の広告(しかも地図付)に至るまで。私はドラッグには詳しくないのでこれが合法かどうかは知りませんが、これだけを見ていると、間違いなく東京という街を誤解します。…というか、私が知らないだけで、これって多分東京の別の顔なんだろうなあ。
そんな話を日本に数年住んだことのあるアイルランド人にしたら彼は、
「うーん、東京は本当に広くて孤独な街だからねえ」
と、アンルイスの六本木心中(という歌の歌詞)のようなことをおっしゃる(←またそういうオヤジくさいことを言う)。このメトロポリスという雑誌に興味のある方、www.metropolis.co.jp というページがあるようですので一応紹介しておきます(でもリンクを貼る気にはならないので自分でコピー&ペーストしてくださいませ)。が、この雑誌そのもののインパクトはこのホームページには感じられませんでした。はい。欲しい人は、金曜日の朝、ガイジンが行きそうな場所(アイリッシュパブとか)に行ってみてくださいませ。
日記才人の投票ボタンです
| 2002年02月09日(土) |
とても誠意を感じた航空会社からの手紙 |
実は先週の話になるのですが、ブリティッシュミッドランドからお返事が来ました。去年の暮れにドイツに行った際に、ヒコーキは遅れ、接続のヒコーキは逃す(実はキャンセルされてたんだけど)、行きも帰りも荷物は無くなる、傷つけられる…とまあ、散々な目にあったのだ。反面、ホテルを手配してくれたり、スーツケースをその場で弁償してくれたりと、とても誠意ある対応をしてくれたのでそんなに怒ってはなかった。
が、まあ、ちょっとあんまりといえばあんまりだったので、ブリティッシュミッドランドに抗議の手紙を書いたのだ。で、手紙を書いた1週間後に「手紙を受け取りました。返事を書きます」という葉書が来て、その2週間後にちゃんとした手紙が届いた次第。で、この手紙、私は素朴に感動致しました。ちょっと人の手紙を読み違え(わざとかな?)してたりするのですが、その内容たるや、ただのコピー&ペーストメールではなく、ちゃんと書いてくれており、ものすごく誠意を感じました。
航空会社に抗議の手紙を書いたのはこれが二回目。一度目は、やはりフライトがキャンセルになったエアフランス。ちょうど一年前の今ごろの話なのだが、未だに返事は来ていない。シャルル・ド・ゴール空港のカウンターの対応の悪さに本気で殺意を抱き、それ以来「例えタダでもエアフランスには乗らない」と決めて、実際、いくらか余計にお金を出してでも他社に乗っている。
それにひきかえ、ブリティッシュミッドランドは現場でのホテル手配などの対応と、今回の手紙で、例え少しくらい高くてもまた乗りたい航空会社になりました。私が毎日チェックしている「電気売場店員のクレーム日誌」のEach Timeさんがおっしゃるとおり、「クレームは固定客をつかむチャンスだ」というのは本当だなあと思いました。
…と、まあここまで書いたらブリティッシュミッドランドから来た手紙を読みたくなるでしょ?はい。こちらに上げておきました。ただし、A4の紙2枚を.jpg画像として上げているので少し重いです。お暇な方のみクリックしてやってくださいませ。
PS ブリティッシュミッドランドさん、300ユーロしか払ってない客に、90ユーロもホテル代とバス代出して、壊れた荷物を40ユーロで弁償して、遅れた荷物をタクシーで配達して(特にドイツは空港から70キロも離れていると来たもんだ)挙げ句に90ユーロもバウチャー出して…税金まで考えると大赤字ですね。まあ、また乗りますから、その時はよろしく。
日記才人の投票ボタンです
| 2002年02月08日(金) |
人生の縮図?洪水に見舞われた就職の大事な大事な面接の日(後編) |
昨日の日記の続きです。お読みでない方はまずは昨日の日記からどうぞ。
で、冠水した区間を抜けたHeuston駅の前でバスを降りた私。Heuston駅に向かい走りつつ、タクシーを捜す。去年の今ごろ大もめをして倍増されたはずのタクシー。普段はうじゃうじゃ見かけるのに必要な時に限って見つからない。今日も確かにタクシーは走っているものの、空車のタクシーは全く見つからず。
就職の面接の時、何はともあれきちんとした身なりをしていること、そして時間を厳守することは面接以前の問題でして。これが守れないような人間は、門前払いを食らったって文句は言えないと思う。で、時刻は2時30分。指定された時間前に到着することを考えれば、もう遅いくらい。せっかくいい条件の面接だったのに…と頭の中には諦めも漂うがまだ諦めるには早すぎる。
で、通りの反対側を見ると、ちょうど進行方向に向かってタクシーがお客を降ろしている。これはチャンスとばかり、飛び出し御免、通りを渡りそのままタクシーの助手席に乗り込む(注:「自動ドア」なんて日本くらいのものじゃないかと思います)。タクシーの運ちゃんに一言
「さあ、行くよ!」
で、タクシーに乗り、行き先を説明。面接まであと30分しかないことを冗談めかしつつも告げると運ちゃん
「XXまであと30分?大丈夫だよ。間に合うよ」
と優しい一言。「た、助かったー」
…と一瞬でも思った私がチンパンジーだった。自分がこのホムペで「アイルランド人の言う『大丈夫』はちっとも大丈夫じゃない」と言い続けてきたのだった。確かに最初の2分はタクシーは走った。しかし、すぐに再び大渋滞に巻き込まれる。
「こんなところが混むなんて。タクシーの運転手何年もやってきたけど初めてだね」
アイルランド、たぶんひいてはヨーロッパ全体に言えることだろうと思うが、こちらには「渋滞抜け道」というものがほとんど存在しない。生活道路は通過車両の進入を防ぐためにあちこちでわざと寸断され、結局表通りを走らざるを得ないように設計されている。で、せっかくタクシーに乗ったものの、結局は渋滞の中。どうやらこの異常気象がダブリンじゅうをパニックに陥れているらしい。ラジオが大騒ぎしている。
タクシーは動きもしないのにメーターだけはしっかり上がっていく。この時点で2時45分。残りの距離と道路状況から考えて遅刻は確定。仕方がないのでリクルートメントエージェンシーに連絡。
「いまどこ?まだそんなとこ?」
…こっちだってタクシーに乗ったり必死でやってるよ!
「…分かった。とりあえず先方には連絡しておくから」
で、タクシーが渋滞を抜け、見たことも聞いたこともないところにある某社のオフィスについたのは午後3時25分。25分の遅刻。…だめだこりゃ。
で、オフィスのドアを恐る恐る開けると、そこには受付も何もなく…。ただ、ドアにいちばん近い席に座っていたおばさんが私を見て目を丸くして…
「あんた来たの?」
聞けばこの前代未聞の大雨のせいでダブリン・ひいてはアイルランド全域で大騒ぎになっていたそうな。一部地区では停電などの被害も出ており、それから道路の冠水などもあるとラジオ等で大騒ぎをしていたそうな(証拠)。
で、この大遅刻にもかかわらず何やらマネージャー用の小部屋に案内された私。ふっと気がついたが、面接用に考えておいた問答集、この騒動で頭の中からスッコーンと抜け落ちてしまっている。
そこに、マネージャーとその手下らしき女性2人登場。まず最初の言葉
「今日はもう来なくていいってリクルートメントエージェンシーに言ったんだけど…ホントによく来たわね」
…そんな人の苦労を無にするような発言を。一気に脱力。
私は何はともあれ常識として遅れたことを丁寧にわび、それからずっと書いてきた今日の洪水の体験を話す。面接官二人、面接を忘れてしまったかのように床で笑い転げている。で、気がつけば、面接なんだか雑談なんだか分かんないうちに30分以上が経過していた。何せ緊張している余裕がなく、しかも、面接の最初でいきなり笑い話で「つかみ」を取ってしまったので、完全に私のペース。ただ、考えてみれば、こんなの面接とは言えないぞ。パブでの雑談以外の何者でもなかった。
で、マネージャーさん
「とりあえず、かなりたくさんの人を面接しなくてはならないので、結果は来週リクルートメントエージェンシーを通じて発表します」
ということで退散。
ちなみに帰りも大変。Clontarf地区の一部がやはり冠水してしまったらしく、道路はまさにパニック状態。バスは全然動かないが、もう時間に押されているわけでもなく、本に夢中になっているうちに家に到着。2時間近くかかった気がするが、まあいい。
で、気になる面接の結果ですが、まあ、これについては後日発表ということで。採用だろうと不採用だろうときちんと報告しますので(約束)。ちなみに20人弱が受けて採用は3人とかいう狭き門のようです。ハイ。
日記才人の投票ボタンです
|