雑 記
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2013年05月23日(木) 使用停止避け読書記録

しあわせのパン。
読み始めてすぐに安心できた。
とんでもない逸脱の予感もなく、淡々とお話が進んでいく。
最初から最後まで裏切られなかった。
日々を通してゆっくりと積み重ねられていく共通の記憶。
赤の他人、しかもたった二度しか会ったことのない二人が突然に北海道に移住してあったかいパンと美味しいコーヒーの店を始め……

あり得ないといえばその通りですが、この本は、そんなところに問題を見るべき本ではありません。
他人の縺れた糸を解きほぐすことで、自らの縺れも解かれていく、そんな話です。
喫茶店やホテルなど不特定多数の人々の集う場所での人間模様を描いた作品は多いです。
このお話もそういったものの中の一つなのでしょうが、軽い読み物にありがちなコミカルさはなくて、じんわりと染みてくる、そんな感じでした。
よいお話だったな。


次、珈琲店 タレーランの事件簿。
事件簿というタイトルからして、謎解きですよね。
タレーランという名の珈琲店のバリスタの、心の傷にまつわる事件を主軸として、ちょっとした事件を絡めつつ物語が展開していきます。
大変有能なバリスタであり、謎解きの達人であるヒロインと、ヒロインの淹れるコーヒーの味に魅せられた『僕』が少しずつ深く絡んでいき、思わぬ展開があって最後には……ネタばれは止めておきますね。

このバリスタ、客に一線を引いているという設定からなのでしょうが、会話文がしっくり来なくてですね。
人物像が掴めなくて、ミステリだからなのか?などとぼんやりと思っていました。
家人Aは気にならなかったと言っているので、これはPLの感じ方の問題かもしれません。

それと、読んでいて、おややや?と首を捻ってしまったのですが、トリックが……結構わかってしまったんですよ。
解こうしたわけでもないのに、あ、って。
PLは、基本、ミステリー読みながら謎解きするということをしません。
しないといいますか、『できない』ような気がします、そりゃもうひしひしと。
どきどきしながら読み進めて、『さて、みなさん』で終わるのが好きというのもあるけれど。
はまっていたのが新本格と言われるミステリーだったので、なおさらに謎解きは困難でしたしね。
この本は、なぜだか作者の意図が分かってしまって(笑)
ああ、ここはこう勘違いさせようとしてるな、ってね……
どうも、私はこの類いのトリックは割と強いのかもしれない、と思えてしまった哀しい一冊かも。
と、思って読了した後に解説を読んだら、『このミス』応募作で、一席にならなかった理由が、トリックが弱かったからだと記されていて、あ、そーいうことかと。
手直しして出版されたようではありますが、PLの波長と合ってしまったのでしょう。
最初に分かってしまったトリックが形を変えて使われているので分かりやすかった、かなあ。
だからといってこれが駄目なわけではなくて、面白かったですよ。
そこは書いておかないとね。


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