日英双語育児日記
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2011年11月11日(金) |
英語の改良を夢みたイギリス人たち |
この日記を書き始めるさらに前から---2002年夏から---準備していた著書が、ようやく完成しました。
『英語の改良を夢みたイギリス人たち--綴り字改革運動史 1834-1975』 山口美知代 著 開拓社 2009年6月刊 412ページ ISBN-10: 4758921415 ISBN-13: 978-4758921411 税込4620円
出版社サイトです。
ひとことでいうと、英語の綴りはネイティブにとっても難しく、それを不満に思って、あの手この手で綴り字改革を試みた(けれども結局は失敗に終わった)イギリス人がたくさんいたのだ、という話です。
英語の綴りが、不規則で覚えにくいことは、日本人が英語を学ぶ時にも大いに苦しむところです。psychology(サイコロジー、心理学)をプシチョロギーなどとローマ字読みして覚えた記憶は誰にもあるのではないでしょうか。
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大型書店以外では店頭取扱が難しく、また、価格も高めで恐縮なのですがー。
もしご関心を持っていただけましたら、ぜひ、お近くの公立図書館、ご勤務先図書館などにリクエストしてくださいませ。よろしくお願いします。
またお読みいただいた感想など、お聞かせくださいましたら、とてもうれしいです。よろしくお願いします。
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【「あとがき」から】
「・・・2002年に最初の論文を書いたときにはTが一歳、Sが〇歳だった。やがて子どもたちは日本語と英語の話し言葉を習得し、文字にも興味を持つようになり、ゆっくりと書き言葉の世界に入っていった。以前、子どもが生まれたから綴りや読み書きについて研究するようになったのかと友人に聞かれたときには、そんな単純な話ではないと思ったが、やはり根底でつながっていたに違いない、と今では思う。子どもたちの言語獲得の過程、読み書きを学ぶ過程を目の当たりにするなかで私は、綴り字改革論者たちに改めて共感したり、また、その机上の空論的な部分に気がついたりすることも少なくなかったのである。」(377)
【内容】 英語の綴り字は、ネイティブ話者にとっても覚えにくい厄介なものである。これに不満を抱き、もっと規則的なものに改良しようとした綴り字改革論者(スペリング・リフォーマー)は、いつの時代にも現れた。19−20世紀の綴り字改革論者たちは、「初等教育効率化のため」、「科学的音声言語研究のため」、「国際語としての英語の地位を確立するため」とそれぞれの目的をかかげながら、試行錯誤を重ねた。本書では、教育行政文書、OED編纂者たちの手紙、帝国教育会議議事録などをもとに、その姿を描きだす。英語グローバリゼーションが進行する今日敢えて、英語改良計画の言語文化史を明らかにし、そこに映し出された自意識とコンプレックスの意味を問う。
【目次】 序章 国民統合の言語から国際語へ--英語の自意識とコンプレックスを映す綴り字改革運動
◆第一部 基礎教育の効率化をめざした綴り字改革論者たち--読み書き能力獲得と国民統合の一九世紀
第一章 代表的綴り字改革論者アイザック・ピットマンの生涯--速記考案者の読み書き改革 第二章 ロンドン学務委員会の請願運動--綴り字改革運動と『読み方教授法報告書』 第三章 綴り字改革公開会議に集まった人びと--基礎教育、言語研究、社会改良のために
◆第二部 言語の科学的研究を志した綴り字改革論者たち--一九世紀の言語学者・音声学者を中心に 第四章 世界の民族と言語を探求したロバート・レイサム--比較言語学隆盛の一九世紀 第五章 言語学会公認の「英語綴り字の部分的修正案」--OED編集の時代 第六章 一九世紀イギリス音声学の発展と綴り字改革論
◆第三部 「世界語」に完璧を求めた綴り字改革論者たち--二十世紀の展開 第七章 簡略綴り字協会と国際語としての英語--大英帝国のなかの綴り字改革論 第八章 綴り字改革関連法案の審議 第九章 バーナード・ショーの遺言と英国アルファベット公募 第十章 初期指導用アルファベット導入の顛末--ジェームズ・ピットマンの実験
結びにかえて
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