For you blue...Rou

 

 

- 2005年03月25日(金)

彼女の携帯電話のメール音が鳴った

元気ですか?
とたったひとこと
何年ぶりかの昔の人

その文字を見て
今にも泣き出しそうだった彼女は
堰を切ったように声をあげて泣いた

たったひとり
白い部屋の中で

あと何分たてばあの人は
帰ってくるのだろう

彼女が纏っている白いブラウスに
飲み干したワインが口元をつたって
そっと仄かな染みをつくった

瞑った黒に全てが映り
眩しい光に見えるものはない





...

- 2005年03月23日(水)

どうしたものか
どうやら僕は別れを切り出されているらしい

夜中の3時まで続く君の限りない僕への批判

君のいない生活を思い浮かべる
うん、まぁ大丈夫だ

僕のものになる全ての時間
そして物質的事項

あと2時間は続くこの理不尽な追求

奪われる僕の睡眠と腹を満たす食い物

別れを承諾すれば解放されるのか
そんな簡単なことでもなかったらしい

あぁ、今一瞬寝てしまった
まるで水族館のペンギンみたいだ



...

- 2005年03月22日(火)

偶然を装って乗ったエレベーターで
思いもよらず君に誘われた

玄関を出ると
クリーム色のコートの襟をたてて
首をうずめた君

うまい例えで笑わせようと思ったけれど
言葉は何にも出てこなかった

君は僕より先に歩かないように
それでも僕をそっと先導するように

ふたりはどこかの店に辿り着くのだろう

小さなスペイン料理屋さん
50代の白髪まじりのマスターと
若いが気の利く店員
店内は仄かに暗く
各テーブルに赤く灯った小さなランプ
ささやかな料理とおいしいワイン

そこで僕たちは僕たちの話をするだろう
今まで知らなかった僕たちの

刹那と永遠は工事中のマンホールへ

愛とエゴはこの先の赤いポストへ

孤独と幸福は店の前の自転車のかごへ

思いつくものは全部そこらに投げ入れて
僕は君の半歩先を歩き
それでも君の道案内にそっとついていく








...

- 2005年03月14日(月)

受話器に向かって話す自分の声が
まるでプールの底で聞こえる先生の笛の音のようだった

なのに僕はずっと話し続けることができる

他のやつの声はやけにはっきりとしていて
蝉みたいにうるさい

電話を切っても僕の耳は水が溜まっているみたいだ

もうここに居続ける理由なんてない
丸めた紙をゴミ箱に投げつける
近くを通りかかった君がびくっとこちらを見る

忘れていたものを呼び起こした君
無責任に

あと10日で僕に何ができるのか








...



 

 

 

 

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