「懐夢」
漸く塞いでいた自らの掌をそっと下ろし、ただ眩しい現在に居て、毅然と未来を見渡している。それなのに何故こんなにも鮮やかに過去が旋る?幾枚もの記憶の断片がくるくると舞い落ちる。途切れた物語は今、に何を問い求めるのか。 時間は多くのものを変えてしまっているよね。わたしと君達の両方を。それなのに記憶はそのまま時を止めたままで、壊れた映写機のように同じ場面を繰り返し見せる。虚像のような夢幻のような、身勝手に美化された想い出達。 それでもどんな想い出も想い出と呼ばれるからには正に終焉ったものであり、続いてきたもの続いてゆくものと比べるまでもなく、わたしを長く引き止める事も泣かせる事も笑わせる事も怒らせる事も出来るはずもない。 |
「本質的な色」
黒は本質。白は抑制 白に憧れつつも黒に解放される。 産まれる前、生命を覆っていたのは闇。だから黒に解放されるのか。 其処に在るのは本当に「じぶん」か。 黒い本能と白い理性。 共存し、散在し、マーブル模様となり、時にバランスを失う。 「真実」だと思い込んでいる己を覆うのは理性か。それとも本能。 日々、告白を続ける精神、そこでは限り無く本質的で在りたい。 |
「刻印 LOVE」
愛した記憶、愛された記憶、愛し合った記憶。 それなりに数多の遍歴なれど、 その一つずつに刻印されたのは一人ずつの強烈な記憶。 新しさが彼らを超える事もなく、彼らが持ち去ったままのわたしの憶いは 過去に眠り現在に埋もれ、時々問い掛けたり囁いたりする。 時とはぐれて独りになった時、思い出すのは誰だろう。 きっとそれは人それぞれで、その時どきなのかも知れない。 けれど想う。 強くそして永く想い出すのは多分、愛し合ったひと。 愛をあげなかった人でも愛をくれなかった人でもなく、 それを与え合い、うばい合いもした人。 終わってしまったものに真実など無く、 続いてゆくものこそが真実だと肩を揺さ振り教えてくれて、 貴女以外の事はどうでもいいと、わたしの傷を残らず消そうとしてくれた。 傷付けないものになろうとして自分すらも忘れてしまった存在は哀しくとも、 刹那ではなく、永遠を教えてくれようとしたのはたった一人、あなた。 |
「零」
零には戻れなくとも生きていく限り創められる可能性を手にしている。 命は限り有るものでも、精神は限り無い。 どちらかといえばプライドが高いと少々思うわたしでも、 聖なる希みの前ではプライドなど無くす。 真に望むものがあまりに少ないからだ。 |
「月の素顔」
NEGATIVEとPOSITIVEを漂う。 表裏一体に己の心が溶け合う瞬間を幾つ感じられただろう。 わたしは傷付く事が出来ない。己の硬い殻を感じている。 言葉を失くしたまま、自分の内に在る月を感じている。 精神で掻き消しても、心で疼く月を。 残留する刹那は哀しい。 救いを求めても今、その刹那は此処に無いように。 譬えそれが昨日の事だったとしても、同じ形として決して戻らないように。 |
「標 I MUST LOVE」
お前は常に自分の中の正義に沿って往けばいいんだ、とそのひとは云った。 しるべとなるひとはいつも時を短くしてわたしを残して去ってゆく。 お前なら大丈夫だ、と微笑いながら、その確信の事実を確認もせずに。 自由というのは或る意味、辛い。 |
「独占慾 PLEASE DON’T TOUCH」
事実、自分の大切なもの以外はどうでもいい。 恋愛についてクールに見えるのはそれに執着が無いからで、 こころの熱量くらい自分で把握している。 執着するという稀少。爆発的に生ずる慾。失う軌道。 交錯する感情を冷えた言葉で隠蔽する。 掻き消しても滲む独占慾を、 気付かれないように、驚かれてしまわないように、嫌われてしまわないように。 けれど胸は張り裂ける。喉奥が慟哭で渇く。 怒りに似た光で瞬きもせず、幾ら堪えても言葉代わりに涙が溢れくる。 その手も唇も髪も笑顔も言葉も背中もわたしのものだと。 純粋の脆さ。十六と二十歳の頃に似た。 Please don’t touch.It’s so mine. 未だこころの奥に秘めたあの頃の少女の声は今もわたしの中に息づく。 |
「恋花」
心の中に花が咲く瞬間、多彩な色が溢れ出す。 永久に咲かせる事は可能だろうか。 咲いた瞬間に押花にでもしてしまわなければ不可能ではないのか。 花は花としていつまでも存在したがる。 枯らしてしまったら二度と咲かない私の心の花を自身よく知っている。 非道な程に花はただの枯れ草と化す。 何の感情もなく、ただ心が無に帰るのみ。 |
「物質 PRESENT」
己にとって価値を成し得るもの、それは時に高価な宝石よりも石ころであったり、大きな薔薇の花束よりたった一枚のバースデイカードだったりする。
それらは物質に見えるこころの結晶だからだ。
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「素白 i wanna white」
Le ciel 独善的なヘヴン。 誰も否定しない天国のような場所。 誰も居ない秘所で独り戯れる哀しさ。 空は美しいけれど誰も居ないという空虚な水晶でもある。 Tierra 躍動的なライフ。 憎しみと愛と嫉みとに彩められた天の底。 奈落に似た天国。 大地には醜いものもあるけれど、 多くの生命が力強く胎動している。 例えば傷を負ったとしても、わたしはそれを愛した。 場所に歸りたいのではない。 誰かの居る風景へと還りたいと思う。 けれどあの場所にはもう誰も居ない。 わたしは、ブルー、です。 わたしは、レッド、です。 わたしは、パープル、です。 わたしは、白、になりたい。 限りなくピュアな白になりたい。 何色にも染まれる可能性よりも、 そのままの白であることを選ぶ。 穢れることを畏れないそのままの素白、で。 |
「聖純 PURE」
成長の痛みを知りつつ、穢れとは無縁の部分。 そういうのが誰にもあるはずではないか。 広大無辺の世界に坐する核たるピュア。 愉しみにも見え、悲しみにも見え、それがわたしを手繰り寄せ、惹きつける。 魂が他に共鳴を求める部分である。 |
「宇宙の雫の Rock&Roll Dream」
雨の匂いがする。 夜がわたしを連れに来る。 何かに陶酔できる時間がわたしを洗い、癒し、救う。 愛でし音。闇の雨。やわらかな声のように。 鋭い切先ではなく永劫の黒でもない。 煌びやかな混沌の鏤む透明な膜の中にゆらりゆらりと浮游し観得る、 夢のように甘い匂いのする樂しみ、その深みへと。 さだまらず、決められることなく、命じられず、刹那の極地にて解放する。 わたしの、S.D.R。それ以上のものを。 未知のイノセントへのときめき、今宵は貪慾に堪能しよう。 |
「虚無 NOTHINGNESS」
わたしの底に根付くもの。 悲しみも喜びも無い生がわたしの央に今も坐する。 虚無という言葉はそれだけで、わたしがひた隠したものを露にする。 それは求めるものが無い事に似ているか。 諦め尽くした世界に似ているか。 何も聴こえず何も眼に映らない事に似ているか。 均等を保つ為に遮断した感情。 両極に位置するこころ。愛と憎しみ。喜びと悲しみ。 片方を消そうとすればもう片方も消えてしまう。 屈託の無い幸せで上塗り、他から見えるまま、そのままに。 されど、滲み出す虚無。茫漠とそれは拡がる。 逃れる事は何時か出来るのか。 せめてもの抗いとして、思い込む。 わたしにとって生(あ)るならば必要。 虚無を忘れた刹那のみわたしは生ると感じられる。 多くその刹那を増やしていきたい。 わたしは生きていると永く思い込む為に。 |
「白に折り重なる白の、 BLANC TO BLANC」
──── 誰かにとっての赤は誰かにとっての青でもある。 白地に白字で書けば他に見える筈もない。 そのようにして己が魂魄を言葉として刻んでいる。 誰の為でもなく己の為だけに。 見せ方などどうでもよい。見え方などどうでもよい。 虚像の殻など、必要ない。 さあ、あなたにはわたしが見えるか? |
「電脳空間に息衝くサイバーハート」
私達は此処で何にふれあい、何を失くし、何を手に入れるでしょう 願わくばそれが現実を生きる糧と成りうる事を |
「異空間 ON THe NET」
土であり、空である。 閉じた箱の中に在るわたしの楽園であり、奈落である。 解放であり、拘束である。 過去であり、現在である。 有限であり、無限である。 墓碑であり、子宮である。 暫し現実から遠ざけてくれる音楽であり、映像である。 現実を確認させてくれる進化であり、回帰である。 流せない涙であり、消せない憎しみであり、言い尽くせない愛である。 導き、また狂わせる、闇に浮く月である。 累積した葉の隣には常に零の満ちる、遠隔の、近接の、純一なる混沌。 言葉全て、己を宿した不可視の誠、の権化。 その交響は心であり、魂であり、自我であり、 それは不滅の花薔薇であるが如く。 |
「素晴らしきかな人生 my life」
悔い無き人生であればよいと思っている。 でも「前だけを向いて進め」という言葉にいつも反発を覚える。 過去を振り返らない。そんな現在に何の輝きがあるだろう。 自分の歩んできた道を真っ黒に塗り潰してまで立つ、現在の位置に。 過去を糧にするという事。 過ちがあったなら、似た過ちを犯さないようにする事は出来ないか。 今までの歩み、華麗でなくとも無駄な事は何も無かったと言いたくて。 過去を振り返りながらも、進む事は出来る。 |
「終わらない痛み ENDLESS HURTS」
目覚めた真夜中。雨音が聴こえている。 軋んだ心の隙間を濡らして響く調べ。独りの部屋が心地好い。 闇の中でしか見えないものがあり、聴こえないものがある。 光の中でしか感じられないものがあり、掴めないものがある。 革命は密やかに仕舞われ、心で涙を落とす度、ひらかれる瞬間を待っている。 もうすぐ、朝がやって来る。 |
「生きる理由」
「人生は素晴らしい。」いつか、そう言う為に。
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