徒然エッセイ&観劇記
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2002年04月23日(火) 『ベスト・ミュージカル〜4Knights〜』石井一孝・吉野圭吾・岡幸二郎・戸井勝海合同CD感想

最近出ました、ミュージカル俳優として知ってる人は知ってる面子の合わせ技CDで御座いまして、一人2・3曲ずつ、色んなミュージカルからのナンバーを色んな人の日本語訳詞あるいは英詞で歌っております。
演奏はちょっちチープですが、何故かクラシック演奏だけは豪華っぽかったり、女性のコーラスがいっぱい入ってたりします。まぁ、こんなもんだよにゃ。
ちょっと・・・辛口、なので各俳優さんの熱烈ファンの方はここで御退室願います(汗)あ、石井さんファンは残って大丈夫です(おい)

よぉし、石井一孝君(どうしても君付け)しょっぱなから「レント」のナンバー「シーズンズ・オブ・ラブ」
流石、ソロで歌手活動してるだけあって、手馴れてます。ノリノリです。ポジティブ!!
そう、石井さんの歌声は「陽」なんですわ。何をどうしたって、結局は明るくなっちゃうのです。ですから、「ディス・イズ・ア・モーメント」も、まるでこれから輝ける未来へ向かって新たな決意をするが如く、爽やか!!
もはや「ジキル&ハイド」とは切り離された世界(笑)でも、私はこれはこれで好きですね〜。このCDの中で一番株は石井さん曲かなぁ。

対して「陰」の気を発してるのが戸井勝海。いやぁ、今まで気付きませんでした。「GODSPELL」の時は、ナンか目が笑ってないなぁって思いましたが、こうして歌だけで聞くと、天然で「陰」な歌声な人です。
なので「エニー・ドリーム・ウィル・ドゥ」(ヨセフと不思議なテクニカラーのドリームコートより)は、今にも「暗い未来」に旅立つが如し。子供泣き出しそうです。
その代わり「ブイ・ドイ」(ミス・サイゴンより)は似合ってますね〜。ホントに重いもの背負ってて深刻ですよぅぅ。
それと、戸井さん、今いくつだか分かりませんが、ナンかちょっとオヤジですね。オヤジっていうか・・・声に深みがあるのですよ。これは、10年・20年後に花開くかもしれません。ホントに。

声といえば、吉野圭吾さん。今まで舞台を見て来ても思ったのですが・・・歌に向いてない(死)もう、体や喉の構造上、ムリがあるんじゃないかと・・・何故そんなにムリして頑張るのだ?ダンスが充分出来るのだから、ダンス専門になったっていいと思うのに。
しっとり系を歌うと、ナンかいけてない昔の歌謡曲風。ノリノリで歌うと、ルックスだけのアイドル風。確かに頑張って歌っている。でもムリがある。
ああ、モーツァルト!のシカネーダー・・・頑張ってね!!!

トリは岡さん。あああ岡さん。私はレ・ミゼのアンジョルラスのかっちょよい歌唱と、あまたある女装キャラ歌唱しか生で聞いたことはなかったわけですがぁ〜
今回ちょっと失望(汗)だって、「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」が・・・オペラ座の怪人ならぬ、お○ま座の怪人にっ(@@)
その、ねっちょりとした歌い方が・・・すみません、苦手です。と、思ったら「ラ・カージュ・オ・フォール」でカミングアウト。似合いすぎ!!(><)
「アイ・アム・ファット・アイ・アム」リアル度で言うと岡さんですが・・・市村正親さんの歌唱の方が胸を打つんだなぁ・・・。
「ラブ・チェンジズ・エブリシング」(アスペクツ・オブ・ラブより)やっぱりねっちょり・・・石丸幹二さんのさわやかーんに慣れちゃってるから・・私には岡さん歌唱だと「不倫に走り出す決意をした壮年男子」賛歌に聴こえました(爆)

そんなわけで、ナンだかなぁなCDでした。頑張っても頑張っても、声質や持って生まれたオーラは消せない。
アンサンブル、もしくは脇をやってる人は、確かにそうである理由があるのだと思いました。いいえ、誰もが主役級である必要はないのです。脇が主役を食いまくってしまったら舞台が成り立ちません。
脇役の人たちが、一体どこの位置に納まれば舞台全体を最も輝かせられるか。そのためには、ムリせず脇に引っ込むのも大事なことであり、分をわきまえたアンサンブルは舞台には欠かせない存在なのです。
それに、主役級のオーラを持って生まれてしまった人は、やりたくても脇はもうやれないわけです。皆、自分の性質を知って、丁度いい場所に納まるのが、舞台にとっては大事なこと。その意味で、主役>脇>アンサンブルなんて構図はないのです。

みんな、ムリしないで頑張ってね。応援してまっさ!


2002年04月22日(月) 「ジーザス・クライスト=スーパースター」ドイツ語版CD+GODSPELL日本版(一言)

言わずと知れた、若かりしアンドリュー・ロイド・ウェーバー作曲、ティム・ライス作詞の出世作の2001年ドイツライブ版。バンドの生演奏で、観客の拍手の音まで入ってます。
まず「おっ」と思ったのは・・・♪JESUS CHRIST SUPERSTAR♪ドイツ人はこれを「イェーズス・クリースト」と読みます。ドイツ語で「J」は英語の「Y」にあたる発音をするので。ジーザスを呼ぶときも「イェーズス」そういえば「イエズス会」って歴史の授業で聞いたことあるなぁ。神さんの呼び方まで言語によって違うとは驚きじゃないですか?しかしこの曲では原作を重んじてか、二度目のサビでは律儀に英語読み「ジーザス・クライスト♪スーパースター♪」と歌っていました。
それから♪Hosana♪での「ホーサナホーサナ♪」というところ。これは日本語だと「王様王様サマサマ」と聴こえますが、元々は「ホサナ」って掛け声かなんか?だったんですね。へー。どんな意味なんだろ。

というちまちまとした違いは置いといて、まずはジーザスが!
アホです。
もう、声質も歌い方も、全てがただのアホな若者風で、ただイっちゃったヤツが間違って祭り上げられた印象(笑)叫ぶところなんか、ただのヒスにしか聞こえない。
これはもう、キャスティングする段階で「アホでいこう」と決まっていたのでしょう。だってジーザスが歌うとこだけ、妙にアホな演奏つけてるし。あっさり死ぬし。
しかしこれは結構深い設定で、こうなると民衆が失望するのも自然だし、ユダが裏切るのも尤もで、ジーザスが十字架に架けられるのは自業自得。
あらあら、ジーザス形無しね。まるでインチキ宗教の末路のよう・・・

対してユダが、歌上手いし、堂々としてるし、絶対コイツの方が正しい。そう思わせるキャラ。
ドイツ版はユダを前面に押し出して、もしかして観客である「キリスト教に失望した人々」の代弁者として機能しているのかもしれません。ためらいつつも、ジーザスを捨てざる終えない。彼が結局は一人間にしか過ぎないことを知っているから。とはいえ、ユダは結局自殺しちまうわけですが(汗)キリスト教圏の未来やいかに?
ところでユダはもともと「JUDAS」という表記で「ユーダス」と読みます。これは英語でもドイツ語に近い読みをするんですね。元々はその頃そこで使ってた言語なんでせうけども。

ジーザスがアホなので、マリアも「何でこんなダメンズにひっかかったの?ご愁傷様」て気がする。この設定でいくと、マリアだけがずっとジーザスを愛し続けた盲目なお馬鹿さん。愛は盲目(笑)堂々たるいい女性なんですけどね。

他のキャストは、日本版と似た声質。演奏はサックスやピアノを目立って取り入れ、アレンジしていますが元が古くさいロックなのでやっぱりチープな感じ(笑)いえ、この作品はこれでいいのです。
それにしても、やはり曲がいいですね〜!曲調、音程と、内容や人物の心情がピタリと合っていて、曲の構成、繋がり、舞台とのリンクの仕方、まっこと素晴らしいです。やっぱ天才だウェーバー!!

しかしかようにジーザスを貶めるとは・・・キリスト教圏に住んでいない私には分かりかねますが、もうキリスト教な人々も、ジーザスを素直に神格化することはスッキリサッパリ諦めてんでしょうか?
フランス人が日本について書いた本で「日本人は仏教徒が多い」て書いていて「そうか?」と思いましたが・・・まぁ、真剣に信じてないにしても、仏教的な「世界観」を抱いているところはあるでしょう。
キリスト教圏だって、もう結構カタチばかりで、教会に行くのもただの習慣であって別に本気で信じちゃいないとか?でも「世界観」はやっぱり一神教なんでしょうね。ジーザス死すとも神は死せず?
しかしこの舞台、日本ではしっかり「神格化」した感じの神々しいジーザス像でやってるというのがまた面白いですね。おちょくるための土台がそもそもないんだから、面白くするにはそうするしかないか。

これに近い、もう凄まじくジーザスを普通の人として捉えてる「GODSPELL」というミュージカルを先日見ました。裏ジーザス・クライスト=スーパースターと呼ばれたとか?
ジーザスがピエロに近い格好とメイクをして、使途達に優しく教えを諭すミュージカル。「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ」「人類皆兄弟☆仲良くね」「求められれば与えよ」などなど。ちゃんと最後は十字架に架けられますが・・・あんまりジーザスと関係無しにとにかく楽しかったですなぁ。
お気楽な歌やダンスとの相乗効果で、「祈り」が「愛」に転化し、ポジティブな分かりやすいパワーとして伝わって来ました。そうだよ、宗教って結局そういうもの。単純に人々の心が癒されればいいのです。

既にただ「話を成り立たせるための一つの題材」と化した聖書。信性を剥奪されたジーザス。
結局元は、やっぱりただの人間だったんだよなぁ、とこういった舞台を見ると思います。
歴史上のどんな偉大な人物も、ただの一人の人間。
どんな凄まじい出来事も、人間の引き起こした一事象。

明日はどんなジーザスもどきが現れ、世の中を掻き乱し、人心を潤して行きますやら。
みんなが、幸せになられたらいいなぁ・・・ってそれはエンジェル!(←劇団四季「夢から醒めた夢」より)


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