⊂破壊的衝動⊃
2005年02月23日(水)

父親は、母親の気が狂う度に、実家へ連れ帰り、押し付け、
「あいつがヒステリーを起こすたび、こっちがきちがいそうだ」
とよく言っていたのを鮮明に思い出す。
決まって夜遅くだった。
試験中の妹が親の喧嘩に怯えるので、部屋へ花瓶を持って行き投げつけてきたりした。
それは妹がまだ15歳になった頃で、あの子はあたしのその攻撃を覚えてしまった。
憶えさせてしまった。
出て行っては帰ってきて、連れて行かれては連れ帰られてを繰り返し、
さすがにあたしも駄目だった。
言葉よりも先に手や足が出てしまう。
平和にする言葉を覚えなかった。
攻撃的な言葉と、手のひらの痛み、放り出された冬の夜の寒さ。
叩かれながらピアノを練習した。
トトロの『さんぽ』を弾いた。
何処かへ行ってしまうような音楽だった。
そして今、ここに残るのは父親の暴力的な言葉だけ。
被害の数だけ。
そして妹に憶えさせてしまった、うるさい親の黙らせ方だけ。
解決策も見付からないまま、通院歴はもうすぐ5年になる。
原因も、現状も、何にも変わらない5年のつきひ。
くるくる変わるアメの種類と、素敵に膨らむ病状だけは、
おんなじように憎しみを孕ましてく。

父親とおなじ青い血を、身体中から全部抜き取りたい。
母親と同じだという証拠も残さないように上手に。
あいつは今日も言葉で殴る。
埒があかない。
もう病院へ行くのはやめよう。



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由弥 [御手紙]