ナナとワタシ
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今日も電話が来ました。ナナから。
「ねえ、明日って忙しい? 時間とれない?」 「とれるよ。なに?」 「映画行かない? このあいだ電車で流れたヤツ」 「ああ、いいですね」 「仕事は?」 「休んじゃおうかな」 「なっちゃんは大丈夫なの? 明日は仕事の予定だったんでしょ?」 「うん。なんとかする」 「あたしひとりで行ってきてもいいんだけど」 「誘っておいてまたそーゆーことを」 「だって無理させるのイヤなんだもん」 「無理してないよ」 「あたしがひとりで見てきて、帰りにじょりぃの家に寄って、あらすじをすべて聞かせてあげるという手もあるんだけど」 「イヤだよ!そんなの」 「ただのいやがらせだよねそれ」 「ただのというか、相当ないやがらせだよ」 「じゃ、行けるの?」 「行くよ」 「無理してる?」 「してないって」 | 略(よもやま話) |
「ねえ、じょりぃさ」 「ん?」 「大事なことはあたしに話してくれないよね」 どしたの突然。 「そんなことないよ」 「いつだって、なにか抱えてるような感じがあるのに、話してって言っても話してくれないし、疲れてるって言われちゃえばそれまでだし」 「なに急に」 「疲れてるんだって言ってくれればまだいいほうだけど。いつもなんか元気ないような顔見るの、なんかさー・・」 「ちょっと忙しかったもんだから。ゴメン」 「忙しいだけなの?」 「うん」 「あたしといても楽しくないからじゃないの?」 「! そんなことないよ。楽しいよ。すごく」
プライドの鬼のナナさまが、一体どうしたことでしょう。
「最近、電話、全然くれないし」
え? あなた誰ですか。誰に話してるんですか。
「あの、ワタシも同じ事思ってたよ」 「メールも、全然くれなくなっちゃったじゃん」
え? どどどどどどーしたんでしょう。こんなこと言うなんて。
「そ、それも、同じ事思ってたよ」 「たまに電話したり会ったりしてもさ、あたしばっかり話してて、じょりぃは自分のことってほとんど話さないじゃん」 「話すことないんだもん」 「このあいだ会ったときは、メエちゃん(妹です)の具合が悪くて心配だとか、○○(友人です)のことが心配だとか話してくれて、ちょっとホッとしたんだけどさ。・・・メエちゃんの具合が悪い話なのにホッとしてるあたしもヘンだけど」 「いえ」 「でもそれも、気付いてみれば、じょりぃの話じゃないわけよ」 「そ、そうなの?」 「別にあたしに話さなくても、きょんさんやなっちゃんに話して楽になってるんなら、それはそれでかまわないけどさ」 「別にそういうわけじゃ・・・」 「でもさ、 あたしは、さびしいじゃん」
!!!!!!!!!!!!!!!!!一体何が!
「え」 「あたしじゃ、じょりぃを、その、なんていうか、癒せる?(笑)存在になれないのかな、とかさ。思うじゃん」 「え」 「話したくないならしょうがないけど。頼りにならないのもわかってるし」 「そんな風に思ってないよ」 「なんかあるんでしょ? 何かいつも考え込んでる風な感じはあるんだもん。 でも、いくら『話してみてよ』って頼んだって、絶対話そうとしないし」 「いや、それは・・・」 「何もないの?」 「・・・・あるのかも。 しれないけど。 ないです」
たぶん、ワタシのナナへの恋心が、ナナにそう感じさせてしまっているので、話しようがないんです。 あとは、カミングアウトを待っているフシもあるんですが、いずれにせよワタシにとって「ぽん」と話せる内容ではありません。
「そうなんだ」 「・・・・」 「・・・あたし、ずっとじょりぃと話がしたかったけど、忙しいのにジャマしちゃ悪いなとか、いつもあたしばっかり一方的にしゃべって切る感じだから迷惑だろうなとか考えちゃって、なんか電話できなくてさ」 「してよ」 「あたしと話したいとか、思うの?」 「思うよ。すごく」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「どうしよう、電話しようかとかずっと悩んでてさ。 って言っても、別にそのことばっかり考えて悩んでたわけじゃないけど。あたしもそれなりにいろいろ忙しいですから」 「うん」 「だから、昨日のメールは、すごくいいタイミングだったの」
昨日のメールというのは、ワタシが送った「みなさん、お元気ですか?」という、こっつまんないメールのことでございます。
「あのメールだってさ」ワタシ。 「ん?」 「何日も悩んで出したんだけど」 「え?」 「なんか、出そうかどうしようか、何送ったらいいかとか、悩んだ」 悩みすぎやねんていうか悩んであれかい!>ワタシ。 「そうなの?」 「うん」 しかもアナタ、返事よこさなかったくせに。
「ねえ、なんでじょりぃは自分のこと話してくれないの?」 「これでも話してる方なんだけど」 でも、みなさんの方がナナよりもワタシのこと知ってると思いますたぶん。 「そうなの?」 「うん。・・・・・それに、ワタシの話って、つまんなくないですか?」 「は?」 「聞いててつまらないんじゃないかなと思って話しづらい」 「どういうこと?」 「わかんないけど。 こう、たまにちょっとだーっと話したりしたあと、いつも『あ、失敗した。しゃべんなきゃよかった』って落ち込んじゃうんだ」 「それは、あたしのリアクションに問題があるということか」 「いや、そうは言ってないけど」 「でもそういうことだよね。なんか、気のない風に『ふーんそーなんだー』って感じなのかな」
そのとおりだおまえ。
「いや、別に・・・」 「なるほどね。でもまあとにかく、もっとココロを開いてよ」 「うん」 「弱いとこも見せて」 「弱いよいつも」 「そうだけどさ」 「どっちなんですか」 「でもいいけど別にじょりぃの好きで」 「あ、はい」
ナナ、調子が戻ってきたようです。
まあ、こんな会話が出来て、ちょっと嬉しい気持ちになったじょりぃだったのでありますが。
上げたら下げる、というのがナナの基本行動でございまして。
この後に
「あたしね、パパのことをこれからすごーく大事にすることに決めたの。パパって、こんなあたしによく耐えてつきあってくれるなあと思って、家庭円満のためにも、パパのことを大事にするってまた決めた!」
という話題になられたりすると、ワタシのココロはなんだか急降下でございます。 いつもなら「そうだよ。パパのことは大事にしなきゃ」なんてつまらない返事をするじょりぃでありますが、本日は
「せいぜい、うざがられないようにね。そんな気まぐれに勝手に決めてさ。しかもしつこくしちまうと見た」
と、憎まれ口を叩いてみました。どんどんっ。かかっ。
なにはともあれ、明日は映画デエトです。
なっちゃんになんて言おうかな・・・・・・・。それがいちばんの問題でございます。
久しぶりにナナから電話がかかってきたので、昨日のつづきは無視して、今日の話を。
・なんかすごい体の調子が悪くて、パパが心配しちゃってさ
・長女が初めての中間テストで、あたしばっかりナーバスになっちゃっててバカみたい
・働きたいけど働けない。どうしたらいい?
本日のお題はおもにこの3点。
まあ、最初のは夫婦で勝手に心配しててくれって感じで。 というのはワタシの軽いやきもちでですね、カラダは心配でございます。
2番目も、いつものことという気もしますが、とにかくナナがいちばんヘコむのがこの長女ちゃんの心配事なので、ワタシも心配になったりします。 「なんだか、世間一般の親みたいじゃん」と言ったら 「そうなんだよ」 「つまんないなあ。フツウじゃん」 「そう言われてもさー。フツウになっちゃうよ。あたしのことじゃないんだもん」 まあそりゃそうだ。
ただ、体調悪いし、長女ちゃんのことで悩んでいる割には、やけにハイ。 声の感じがいつもと違って、最初誰だかわからなかったくらい。 ちょっと心配するじょりぃ。
本人も「なんか、すごく落ち込んだりそわそわしたりするのまた」なんて言ってまして。 「5月病じゃないの」 「うん。パパもそう言ってた。でももう6月だよー」 「それでも5月病言いますねん」 「うん。パパもそう言ってた」
パパはいいからさ。なんて思いませんよもちろん。
そして3つ目のお題、「働きたい」。
しかし、単純に「働けばいいじゃん」で済む問題ではなくてですね。
家賃収入があったりして、「これ以上稼げない。扶養から漏れる」状態な上に、固定資産税が年間100万以上かかるらしいのです(実家の土地建物について)。 それらのバランスを考えると、中途半端に収入があるとかえって損しちゃったりするらしくて、じりじりしているらしいんですね。 しかも、なんだか精神的に余裕がないのか「このままじゃお金に困っちゃう」なんて言い出す始末。
「お金に困るってことはないでしょー」 「なんでそう思うのよ」 「金持ちそうよ、キミんち」 「ないよ。まあ、困ることは確かにないかもしれないけど、遊びに行ったりできなくなるよ」 「え!」 「じょりぃとだって、今までみたいに出掛けられなくなるよ」 「ワタシと出掛けるときはお金の心配なんかしなくていいですから」 「そういうわけにもいかないでしょ」
うう。じりじり。
で、なんか仕事ないのー、みたいな話になりまして。 当たってみるけど・・・と最初は言ってみたじょりぃですが。
そんな条件で見つかるかいな、という条件をづらづらと挙げるナナ。 おまえ、働く気あるのか。
いちばんのネックは時間と、「給料でなく、雑費や交通費として処理してくれるところないかなあ」という点。 要は中途半端に増えた収入で源泉徴収の計算されちゃうと、パパの扶養から外れてかえって損だからということなのですが。
あれこれふたりでない知恵を絞ってみるものの、相手(勤め先)のあることですから答は出ず。 それに、ワタシとしてはいまいち賛成できません。 中途半端なごまかしは、いずれ露呈することになっております。
「無理だよ。節約したまえ」 「節約ってキライなの。なんか、みじめな気持ちになるんだもん。節約するくらいなら稼ぎたいのあたしは」 「だって稼げないじゃん現状では。だったら節約するしかないね」 「おかずを1品にするとか?」 「わはははははははははははは」 「しょっぱいおかずにしなくちゃね」 「わはははははははははははは」 「笑い事じゃないから。高血圧になっちゃうしさ」 「貧乏太りしちゃうかな」 「で、黒いTシャツとか着ると、あちこち白く粉ふいちゃうんでしょ」 「?」 「しょっぱいおかずのせいで、塩分取りすぎで、塩の結晶があちこちに吹き出しちゃうの」 「わはははははははははははは」 「ちょっと、マジメに考えてよー。あーあ、高校生なら援交できるのになあ」 「援交?」 援助交際ですか。 「うん」 「すればいいじゃん」 したきゃするがいいさ。 「やだ」 「どっちよ」 「あたし、じょりぃの取引先の、あの愛人プロジェクトの会社に勤めると考えただけでも嫌悪感がするのに、援交なんてできるわけないじゃん」 「なんで嫌悪感?」 「不潔だから。いやらしいから。はたで見ているだけでもイヤ」 「すごい潔癖性」 昔はもっとちゃらんぽらんだったのにな。 「じょりぃこそ、よく当事者のひとりとしてウワサされてて、仕事できるね」 「仕事ですから」 「あたしは絶対にイヤ」 「そうですか」 「スナックとかもイヤだしなぁ」 「できそうなのに」 「昔ならできたかも。でも今はダメだな。コドモの顔が浮かぶと」 「コドモのためにやってる人もいるよ。本気で働く気がないんだよ結局」 「そうかも。でもお金稼がないと」 「弱ったね」 「あ、わかった。女の人と援交しようかな」 「 え?」 「同性愛の女の人に援助してもらうの」 「・・・・・なんで?」 「女の人なら、パパもやきもち妬かないだろうから」 「そういう問題〜? 妬くんじゃないの?」 「そうかな。大丈夫って気がするけど」 「じゃ、すれば」 したきゃするがいいさ。 「できるの?」 「そういう商売もあるみたいだし、ネットでは『援助してください!』みたいなことを出会い掲示板にしゃあしゃあと書いている人もいるから、キミもそうしてみれば?」 「マジ?」 「うん。反応あるかもよ。してみる?手伝ってあげる」 「・・・ヤダ」 「なんだい。弱虫。口ばっかじゃんさっきから。けけけけ。」 「だって援交なんて、そもそもあたしがするわけないでしょ」
あ、ムッとしちゃった。 いや、若い頃のキミが、そのまま今の高校生になっていたら、わからないよ。 なんて、本人には言え・・・・ますね。 言ってみればよかった。
で、またあの仕事はどうだ、これはどうだ、なんてひとしきり話した後。
「ワタシが援助しましょうか」 大胆発言じょりぃ。 「え?!」 「帳面にはつきませんよ。源泉にも関係ないよ」 「えーーーーーー? で、でも、・・・・・・・・ど、どうなのそれって」 「どうなのそれってなにが?」 「友として、どうなのよ」 「別に、いいんじゃないの」
めずらしく声に動揺が見られるナナ。 「ど」の声がでかかったです。 ナナを動揺させることができるとは、ワタシもやるもんだ。
「ワタシが出掛けたいときに一緒に出掛けると、『お出かけ手当』がもらえるってだけだよ」 「んーーーーーー。でもさー」
怒ったり気を悪くしている様子はないようです。笑ってるし。 でも当然、「うん、じゃ、そうする!」なんてことにはなりませんけど。(あたりまえだ)
「なんかおかしくない?それって」とナナ。 「かわいそうなじょりぃには、一緒に遊びに行ってくれる友人がいないからキミがついてきてくれる、その手当さ」 「だって友達いるじゃん」 「いるけどさ」 「やだよーそれって。じょりぃのメリットないし。あたし、よくやってくれたね、て思ってもらえないとお給料ってもらえないよ」 「ワタシが出掛けたいと言ったら、何をおいても出てきてくれて、ワタシはその日はキミにまったく気を使わないで好き放題いばってのんびりするのさ」 「背中かいて、とか言うつもりでしょ」 「もちろん」 そんなこと思いつきもしませんでしたが。 「やだよそれ」 「条件にいちばん近いと思うけど」 「そうだけど、イヤ」 「そうだよね」
そうですよね。 そう言うとは思ったんですが。 ちょっと反応が見てみたくて、言ってみてしまいました。 底意地の悪いワタシでございます。
ナナだって、「同性愛の女性と援交しようかな」っていうのは、ワタシへのカマかけだったに違いない。 あいにく動揺しませんよワタシは。 けけ。 やれるもんならやってみやがれ。 けけ。 ていうか、ホントにただ単に「女なら出掛けてもパパに怪しまれない」というだけの理由かもしれませんが。
でもあれですね。 どうせならもうちょっと思い切って 「その日はワタシの好きにさせてもらうよ。なにしろ援交だからね。ふふ、ふふ、ふふふふふふ」くらいは言ってみたかったですね。 言えるわけないですけど。
しかしなんというかですね。 ナナには昔から「囲われ女(ワケあり)」とか「身を売る女(ワケあり)」っぽい雰囲気がありましてですね。
買ってみたい。
なんて思ってしまうわけですね、ワタシとしては。 なので、先日の花魁の話は、本当にツボでございました。 自分で言ってるんですからね。「あたし遊女」と。
買ったからといって、あんなことしたりこんなことしたりするつもりは毛頭ないんですけど。 そればっかりは、お金で買うと虚しいですからねえ。 でも、いつもワタシに「たいした態度」をとり、「じょりぃ、あたしのこと好きなんでしょ」的高慢ちきな態度をとるナナに「買ったから、悔しいだろうけど、今日はキミ、ワタシの所有物ね」というような屈辱感を味わわせて、それでもやさしく宝物のように扱って、失礼なことなどは一切しないんだけどでもプライドは傷つけちゃうみたいなはぁはぁ。
スミマセン。妄想の世界に取り乱してしまいました。
ワタシがこんなに妄想をたくましくしているときに、ナナは一生懸命内職のことなんか考えているんだろうなと気付くと、津波の前の引き潮のような勢いで現実に引き戻されるじょりぃでありました。 がくっ。
| 2003年05月29日(木) |
手紙でひと悶着-その1 |
ワタシが元気なかったときに、ナナが「悩みがあるなら話してみてよ」みたいなことをしきりに言ってくれたときがありまして。(いつも言ってくれるんですが、特にしつこく)
なんで元気なかったかというと、ワタシがナナに対して、ウソをついているもんですから(ナナをスキってコトとヘテロじゃないってこと)、どうも、話の内容によってはワタシの歯切れが悪いんですね。 なので元気なく聞こえたらしく、ワタシの方もけっこうなストレスだということで。 で、「今はまだ話せないんだけど、いつか聞いて欲しい話があるんだよね」みたいな手紙を書いて渡したのです。 会話だとうまく出来ないんですよワタシ。ナナに対しては。 で、その手紙を読んですぐに電話かけてきてくれたのはいいんですが、ナナがなんか茶化したり「タマリンに相談すればよかったのに」とか無神経なこと言いやがったので、ワタシもなんだか恥ずかしくなりまして「もう手紙の話はしないで」「燃やして捨てて」ときっぱり。 ワタシのめずらしく強い態度に、ナナもビックリしたらしく、その日はなんとなく気まずい雰囲気で電話を切りまして。
こっちもスネスネモードだったのでそのまましばらくいぢけていたのですが、ナナが電話をくれまして。 あまり気が進まなかったのですが、電話に出ました。
最初は手紙のことには触れず、なんてことない話題で、軽く話をしてぎこちなく笑っていたふたりだったのですが
「あたし、知らず知らずのうちに、人を傷つけてることとか多いのかなあとか思って」と、ナナ。
「そういうこともあるかもしれないけど、みんなそうでしょ?」
「てゆうか・・・あたし、じょりぃのこと傷つけてない?」
「・・・・そんなことないよ」 (そんなことあるけど。もう言わないもんね)
「傷つけてると思うよ」
「傷つけてることにしたいんだね」
「・・・ていうかさ・・このあいだの手紙のことでさー、あたしはじょりぃを傷つけてしまったのじゃないかと」
「・・・・・」
「なんか、せっかく書いてくれたのに『わかんない』とか『表現がおもしろい』とか言っちゃって、ちゃかしちゃうようなことも言ったりしちゃったし」
「・・・・・」
「1回読んだだけで電話しちゃったから余計わかんなかったのかも」
「気にしてないよ。わかんないもん書いちゃった私が悪い」
「ホントに傷ついてないんですか?」
「傷ついてないよ」 <うそつき
「だって今日も元気ないし」
「元気はないみたいだね」
「・・・・」
「・・・・」
「実はあたしが傷ついているのかも」
「何に?」
「こいつ何にもわかんないや、何言ってもダメだってあきれられちゃったのかなって」
「そんなこと思ってないよ」 (そんな風には思ってない。勝手にいじけて拗ねてるだけ)
「そうかなあ」
「思ってないよ」
「あのあと何度も読み返してさ」
「!燃やして捨てろって言ったじゃん!」
「いいの?ホントに?」
「うん」
「そうしてほしいの?」
「うん。そうしてほしい」
「・・・まあとにかく読み返してさ、そしたら少しずつじょりぃの言いたいこともわかってきたような気がして。・・でもわかんないところもあるんだけど」
「・・・・」
「そうしてるうちに、あたしはじょりぃに悪いことを言っちゃったんじゃないかと思って、心配になって。傷つけたなと思った」
「傷ついてないよ」<頑固
「あたしに話してくれようとしてたんでしょ?」
「・・・・」
「・・・・」
ここでじょりぃ、正直に告白。
「・・んー・・・キミに話したいと思って手紙書いたのに、タマリンに相談すれば?みたいなこと言われたので恥ずかしい気持ちになったのかも」
「そうか。そうだよね。そう思ったよ」
「じゃ、聞かないでよ(笑)。言いたくないよ、こんなこと」
「言って違うとイヤだから、言うまで待った(笑)」
「ずるいな(笑)」
「そう。ずるいんだよ、あたしは。そういうとこ」
「あんな手紙書いて、バカだった」
「あたしに失望したんでしょ?もう今までみたいにつきあえないやとか思ってる?」
「思ってないよ」
「あたしは思われてるのかと思った。なんとなく・・・。気になって、電話したいとずっと思ってたんだけど、仕事忙しそうだし、悪いかなとも思ったりして」
「うん」
「なんか、お互いの考えてることがずれてたよね」
「そうみたいだね」
「あたしが『タマリンに相談すれば?』って言ったのはさ、あたしはてっきりじょりぃが仕事のことで悩んでいるものだと思いこんでたもんだから、だとしたらタマリンのことはすごく信頼してるみたいだし、頼りになる人みたいだし、その人に聞いてもらえばいいのに、話せばラクになるのにって思って、ああいう風に言っちゃったの」
「うん」
「仕事の事じゃなかったんだね?」
「仕事のことでそんなにクヨクヨしないよ、ワタシは。それにいずれにせよ、ワタシはキミに話そうとしてたんだし」
「・・・やっぱり責めてる」
「責めてないよ(笑)」
「話してみてよ」
「もういいんだ、そのことは」
「なんで?解決したの?」
「解決はしないけど、自分のことだし、自分の中で折り合いをつけた」
「ホントはあたしが頼りにならないから?」
「違うよ」
「じゃ、話してみてよ。アドバイスをすることも解決することもできない自信はすごくあるけど(笑)。でも話せばスッキリするかもしれないよ」
「話すと混乱するよ」
「誰が?あたしが?」
「どうかな」
「手紙の中にもあたしの負担になるからってあったけど、あたし、きっと負担にならないと思うよ」
「うーん・・・」
「・・・実はあたしのことが嫌いだけど、しかたなくつきあってるとか?(笑)」
「まさか(笑)」
「じゃあ、負担にならないし、びっくりしないよ。何聞いても」
「・・・話したいことは第一段階と第二段階に分かれていてね」
「うん」
「第一段階の話は負担にならないけど、第二段階の話は負担になると思う」
「なんだそれー。・・・あたしのこと嫌いとかいう話でなければ、負担にならないし、ショックも受けないと思うけどなあ。例えじょりぃが『実はパパを愛してる』と言ったとしても、そりゃ解決しろって言われれば困るけど、負担にはならないよ、きっと」
「そうかなあ。・・・でもパパを愛してるって話ではないよ(笑)。念のため」
「なっちゃんやきょんさんには話せないことなの?」
「・・・なんで聞くの?」 (またそういうこと聞くんだから)
「だって、特になっちゃんとはつきあいが長いんだし、いろいろじょりぃのこともわかってくれてるじゃないですか」
「うん」
「きょんさんだって、毎日一緒に暮らしてるわけだし・・・そういう人たちになら話せるんじゃないの?」
「・・・・」 (どういうつもりで聞いてるんだかなあ)
「話せばスッキリするんじゃない?」
「二人には話す必要のないことなんだ」(だって、既に知ってることだしね。ヘテロじゃないって話は)
「話す必要がない?」
「うん。それに、誰でもいいから話したいと思っているわけじゃないし」(手紙読んだんだろー?)
「そうか」
「あたしはじょりぃが・・・なんていうか、あたしとのつきあいかたを変えちゃうんじゃないかと思って、すごく不安だった。傷つけちゃったと思って、それも気になって気になって。こんなに他人に対して気になったのは初めてかもしれない」
「・・・ごめんなさい」
「他の人なら放っといたと思うけど。めんどくさいし。つきあいがなくなるならそれはそれで別に構わないしって思うし。でも、じょりぃのことは気になってしょうがなかった」
「・・・」
「それに、じょりぃの悩みは、もうあたしの悩みになってるし。じょりぃの手紙にあったのと同じ事だよ。じょりぃの悩みが解決するまで、あたしもずっともんもんとしちゃう、このままじゃ」
「・・・申し訳なく思っております」
「実は双子なのかな?(笑)」
「なんだそれ(笑)」
「お互いの悩みが自分のものになってしまうから。・・・腹違いの双子とか」
「そりゃ無理だ(笑)」
「でもほら、体外受精で代理母とか使えば」
「卵はひとつしかないんだからそれは無理でしょ」
「えー、だって、同じ父親と母親からそれぞれ受精させて、代理母にそれぞれ入れちゃえばさー」
「それは『兄弟』とか『姉妹』と言わないかい?双子でなくて」
「・・・・・?あ、そうか。ホントだ(笑)」
---このへんで、だいぶゴキゲンが直ってきたじょりぃでありました。
しかし、まだまだ続きます。つづきは明日。
| 2003年05月24日(土) |
淫靡心誘発塔(なんだそれ) |
とある、塔の中にふたりで登ったときのこと。
この日は月曜日だったかで、ふたりの貸切状態。 灯台みたいに狭い塔なので、なんだかこう、ワクワクします。 何か素敵な間違いが起きたりしないでしょうか。しないでしょうけど。
この塔の中、延々と続く階段の、踊り場ごとに小窓があるんですね。 外がやっと見られるような、ホントに小さい窓なんですけど。 いったい全部でいくつあったんだろう、小窓。 小窓があるたびに外を見るふたりなんですが。
窓がちっさいので、すごく接近してしまいます。 ワタシはなんか、下心があるように思われるとイヤなので(ていうか、あるからそう思っちゃうんだよな)、ナナがまず小窓を見てから、その後に見るようにしていたんですけど。
「ねえ、あの吊り橋ってどうやって行けばいいのかな? 見える?」 とか 「○○山はどれ?」 とか 「あれは県庁?」 とか 「あの川はなんていう川?」 とか。 けっこういちいち呼ばれます。つまんないことで。 そんなこと知りたいんですかあなた。 いちいち一生懸命答えるワタシもワタシですが。
一緒に小窓から見ようとすると、ホントに接近してしまいます。 人の顔の大きさくらいしかない小窓なんだもの。 そして呼ばれて一緒に見るたびに意識してしまいます。 いちいち何かを期待してしまう自分がイヤになったりもします。
ナナの方にはワタシが期待しているような気持ちはさらさらないことは、わかっちゃあいるんですが。 わかっていても、勝手に期待したり勝手にしょぼくれたりですね。
でも、期待しちゃいますよやっぱ。 説明終わってもしばらくそのままにしてるし。 たいていワタシから離れてしまいますが。下心に気付かれるのがイヤで。 で、ナナが歩き始めてから、あらためて窓にへばりついてみたり。 なんていうか、ふたりの行動がちぐはぐで、思いだしてみると笑えます。 2プレイヤーでするゲームを、一人で両方動かしているときのようなちぐはぐさ。(わかりづらい例え)
「なんだか楽しいねー、ここ」とナナ。
「うん。すごく楽しい。どこまでもどこまでも登ってって、帰ってこられなくなるほど登っていきたい」
なにげに気持ちを伝えてみるけなげなワタシ。と、自分でけなげ言うのも気持ち悪いですけど。
「(笑) でもここってさ、なんかいやらしい気持ちにならない?」
「え」 え?
「薄暗くて狭いところを、こう、身を寄せて登ったり降りたりしちゃってさ。多くのカップルがここで気持ちを盛り上げるのだろうね」
「そ、そうなのかな」
「だからまわりにラブホがいっぱいあるのかな」
「え」
「きっとみんないやらしい気持ちになるんだよ」
「なるほど」
「じょりぃは?ならない?」
「え」
え?
一気にノド乾いちゃうから、そーゆー振りはヤメテ。
ナナから、突然の質問。
「ねえもしさー、余命あと何ヶ月って宣告されたら、どうする?何をしたい?」
「(あにゃたに気持ちを伝えたいの、とも言えず)ううううううん・・・そちらはどうしたいの?」
「あたしは・・・家族の気持ちを優先するなら、後悔させないように思う存分看病させてあげるかな。おとなしく入院なりして」
「なるほど」
「でも、あたしの気持ちを優先していいのなら、旅に出たい」
「ひとり旅?」
「んー・・・どうしよっかな」
「それともパパと?」
「それは・・・ありえないな。悲しいことかもしれないけど、あたしの気持ちを優先していいのであれば、最期に家族と一緒に過ごしたいとは思えないんだよね」
「・・・・・・・・」
「最後は自分のことだけ考えて、好きにしてみたい。家族といると、どうしても家族優先になっちゃうでしょ」
「うん」
「じょりぃは?」
「んー・・・死ぬ前に好きな人に気持ちを伝えたいというのが望みだったんだけど、前にその話をキミにしたら『そういうのって、相手にとって負担かも。後悔させちゃうんじゃないの?』みたいな話をされたので、こりゃいかん、却下かなと考え直してるところなんだけど」
「え!?あたし、そんなこと言った?」
「言葉は違うかもしれないけど、概略としてはそんな感じのことを」
「言ったのか、あたし」
「言った」
「・・・言ったかもね。でも伝えたいなら伝えた方がいいよ、と今は思う」
「うん。でもキミの言ったことも一理あるから考えてるんだ、どうしたものか。・・・私も旅に出ようかな(笑)」
「そしたらどこに行くの?」
「オーロラ見に行きたい」
「誰と行くの?」
「・・・一緒に行ってくれる?」
「・・・(笑) いいよ」
「寒いけど平気?」
「あ!そうだった。じょりぃが死ぬ前にあたしが凍死しちゃうかも。そしたらまぬけだー。 ・・・ハワイでオーロラの映像を見る、とかいうのじゃダメでしょうか?」
「もういいです。誘いませんから」
「ハワイでいいじゃーん。ハワイ行きたーいあたし」
軽いノリの会話とはいえ、ワタシの最後の望みより「寒いのイヤ。ハワイ行こ☆」が優先されましたよみなさん。 なんて素敵な会話なんでしょう。 一生そのまま、ワタシを上回る自分勝手ぶりでいてくださいませナナのやろうめ。
「あたし、江戸時代だったら、揚屋の女将になりたかったな」とナナ。
「無理じゃないの」
「なんでー」
「どっちかというと、そこで働かされる方の人でしょ、タイプ的に」
げ。 つい本音を言っちゃったけど、これって失礼なのかな。(失礼だろう) 怒ったらどうしよう。
「花魁とか遊女とか、そういう人ってこと? 体を売る人?」
「う、うん」
「あー。そっちのが合ってるかも。ていうか、合いすぎ、あたし」
「自分でそこまで言いますか」
「家のために犠牲になって、よよよよと涙しながら体を売るんだね」
「・・・・・」 いろいろ想像中。
「で、若くてかっこよくてやさしい呉服問屋の若旦那に水揚げされるのかな」
「すごく自分に都合良く話が進んでいませんか」
「で、呉服問屋の若女将に収まってさ。それでも一生後ろ指さされるのね、『遊女だったんだよ、あの女将は』なんてね。『若旦那もコロッと騙されて・・・』なんて。あたし、うまく騙せるだろうな」
「キミが遊女上がりの若女将になるのなら、ワタシはきっぷのいい辰巳芸者にでもなろうかな」
「いいんじゃないの」
「三味線とか歌とかで、やっぱり女手ひとつで食っていくんだろうか。今と同じじゃんか」
「きゃははははははは。いいかもそれ。あたしも含め、花魁仲間も嗜みとしてじょりぃ姐さんに三味線とか習いに行くの」
「べんべんっ」
「でもなんか、じょりぃ姐さんはやたら厳しそうですね」
「ナナさん、そもそも姿勢がなっとりやせんぜなんてね」
「ムダに説教臭そうだし」
「説教臭いとか言うな」
「ねちねちイヤミとか言ったりさ」
「ワタシのことそう思っていたんですね。その通りですけど」
「いつのまにか、"じょりぃ姐さんのところにお稽古に行かされる"ということは、その揚屋でのお仕置きのような意味合いに変わっていくの」
「わはははははは。『ナナちゃん、お客様にそんな勝手ばかりしてると、じょりぃ姐さんのとこにお稽古に出しちまうよ!』みたいな」
「そうそう。『女将さん、じょりぃ姐さんのところだけは勘弁してください』とか言っちゃってね」
いいですねえ。 立場逆転という感じで。
「で、あたしが呉服問屋の若女将になってからも、ちゃんとじょりぃのとこ通うの。三味線習いに」
「ほう」
「でも、あたしはもう花魁じゃないから、今までのような扱いはされないわけ」
「で?」
「今度は待遇がいいの。じょりぃ姐さんにとっても、いいお得意なわけだから。なんたってあたしは呉服問屋の若女将だし」
「えらい勝手な展開だな。で?」
「それで、ふたりでコソコソ・・・・」
「・・・・・コソコソ?」 な、なにするのかなどきどき。
「あやしい金儲けを始めるの」
「キミ、最後、いつもそれだね」
ある日、ナナとふたりで映画に出掛けたときのこと。 暗くなってしーんとなって、これから予告、という段になって すぐ前列とすぐ後列には余裕で聞こえるような声で、ナナが話しかけてきました。
「ねえ。じょりぃって、幽体離脱できるっけ?」
みなさんに聞こえてしまうには、あまりにも唐突なこの質問。 アブナイよ、キミ。
「は?」
「幽体離脱だよ。魂だけがうろうろするやつ(知ってるよ、そんなこたあ)。できる?」
「できるわけないだろー!」
「そっか。 なんか、できそうとか思っちゃって」
「何?急に(笑)」
「あのね? キッチンとかで仕事してたりすると、たまにふっと、じょりぃのそのコロンの香りがすることがあるのね」
「え?」 ちなみに私はナナ宅のキッチンにはほとんど出入りしません。
「たまにあるんだよ。だから、じょりぃが幽体離脱して来たのかなと思ったんだけど」
「すみませんできません」
ていうか、カジュアルに聞いてこないでくださいそんなこと。 ワタシは丹波哲朗じゃないんですから。 あのよとーこのよはーじつづきだー。
「でもさー、幽体離脱ならいいけどさ、生霊だといやだよね(笑)」
「あの、どっちも無理ですから」
「そっか。じゃ、なんでだろな。 ちなみに何つけてんの?」
「カルバン・クラインのBe」
「ふうん」
なんとなく嬉しいような。 恥ずかしいような。
しかし、もしかしたら「コロンつけすぎぢゃないの」という警告かも!と心配した小心者じょりぃは、家に帰ってきてから、きょんに確認。
「ねね、ワタシのコロン、香りすぎ?」
「? くんくん。 なんにも匂わないけど。つけてんの?」
「へい」
「じゃ、つけすぎってことないみたいね。 ところでなんで訊くの?そんなこと」
「(あわあわ)いや、ちょっと確認しただけ」
「ふうん。 なんで今日はつけて出掛けたの?」
「なんでって」 おたおた。
「あ、わかった。お風呂入らなかったんでしょ」 <自信たっぷり
「・・・・入りましたよ」
アナタは風呂入らなかったときにコロンつけるんですか。 にしても、いつになく質問が鋭いきょんでございました。
「ねえ、じょりぃって、友達の彼とか好きになってしまったことある?」
「あるよ」
「どうするの? そういうときって」
「なんも気にしませんが。しょーがないじゃん、好きになっちゃったら」
「あたしはもう、友達の彼って時点で、好きにはならない。対象外」
「ふうん。『友達の彼』って、魅力的な状況だと思うけどなあ」
「・・・意外とヤなヤツだな」
「え」
「あたしは魅力的な状況なんて思えないなー。 それに、もし好きになっちゃって、もしうまくいっちゃったとしても いろいろ気になっちゃって、すごくつらいと思う」
「いろいろって?」
「いろいろさー。 『その子のこといちばん好きだったときより、あたしの方が好きじゃなきゃイヤだ!』とかさー。 どんなことでも自分とその子を比べて、いちいち『あたしとその子とどっちがいい?』って確認したくなっちゃうと思う。 ウザがられるほどに。 でもそんなこと絶対したくないし。 でもすごく気になるし。 どうしていいかわからなくなっちゃうもん」
「・・・かわい〜」
「かわいくないよ」
「やきもちやきなんだ」
「そうなのかなー。でも、だからやかないんだよ。 そういう状況に自分を置かないようにするの。 カッコ悪いじゃん、そんなの。カッコ悪い自分なんて、見せたくないじゃん」
「ふうん。(やっぱりカッコつけのすまし屋だったか) ・・・パパはそういう思いをさせないわけ?ママに」
「させられたことあるよ。 昔つきあってた子のこととか、そんなことまで言うかなーってことまで聞かされてさ」
「んーと、 えっちなことも含めて?」
「まあね。って言うか、それがメインだったかな、その時は。ホントにイヤだった。 なんて・・・あれ?なんだっけ?・・何がない人って言うんだっけ?」
「デリカシー」
「そう。デリカシーのない人なんだろうって、腹が立った」
「なんか、意外とかわいいんだね」
「そういう問題じゃないじゃん」
「知らなかったよ。 全然気にならないし、やきもちなんかもやくタイプじゃないと思ってた。 日頃のカッコつけの成果だね(笑)」
「なんだそれ(笑)。じょりぃは気にならないの?」
「気になるけど、昔のそういうの聞くの、すごく好き。 相手にいやがられるほど詳しく聞きたがったりしちゃう。にやにやと。 で、聞いておきながら、そのあときっちり腹が立ったりして(笑)。 でも聞くと『おお!私の知らないこの人が!』て感じで、なんかワクワクするんだよね。」
「変わってるねー。変だよ、それ」
やきもちの焼き方も100人いれば100通りなのでしょうね。 みなさんはどんなタイプでしょうか。
七輪とアミ使って、いい頃合いにぷくーっと膨らむまで とかいうボケはなしですよ。 言っときますが。
| 2003年05月06日(火) |
期待してしまう「たとえば」 |
たとえば 子供にマンツーマンでついていて ワタシとナナの距離が離れているとき ワタシがふとナナを見たときに ナナもワタシを見ていて しかも慌てて目をそらされる、なんてことが 時々あったりすることとか
たとえば お互い極力身体が触れないようにしていることとか 照れくさくて一緒の写真が撮れないこととか 子供から離れて急にふたりになったとき 子供たちの声がなくなって、しんとして 黙ったままの時間が もどかしいような心地いいようなこととか
たとえば 「じょりぃに話すのがいちばん安心するの」なんて 夜遅くに泣きながら電話がかかってきたりすることとか
たとえば 「パパが先に死んじゃって、 子供があたしの手から離れたら あたしはじょりぃのとこに転がり込むの」 なんて言われたときとか
「だから、絶対あたしより先に死なないで」 なんて言われたときとか
たとえば 「じょりぃのことが心配で 本当に眠れなかったんだから」 なんて言われたときとか
たとえば 「その話、なっちゃんやきょんさんにはしたの?」って いつも何回も訊かれたり 彼女たちと自分との重要性の比較みたいなことを しょっちゅうされてしまうこととか
たとえば 「じょりぃの悩みは、そのままあたしの悩みだから 解決しないでこのままなんてできないよ」 なんて言われたときとか
たとえば 「いろいろあっても 最終的には健康で幸せにしててくれればって思ってるんだよね」 なんて言われたときとか
たとえば 「じょりぃがいなくなっちゃったら、あたしどうしたらいいの?」 なんて言われたときとか
たとえば ワタシにはパパに対して以上に ワガママし放題なところとか
「どうってことないことばかり」と言い聞かせる自分もいるけれど それでも 素直じゃなくてプライド高くて照れ屋のナナに こんなこと言われたりすると どうしても期待してしまうのです
しかし けっこう簡単に いつもこの期待がただの「期待」であることに 気付かされたりして
たとえばこんな会話
「ママに今後、誰かに恋愛感情が新たに生まれることはないのかな?」
「絶対ありえないね」
あーあ
| 2003年05月04日(日) |
音楽で埋める失われた時間 |
ワタシはジャズが好きでございまして。 とはいえマニアの方のような聴き方や蘊蓄ぶりはまったくできないのですが。 単に好き。聴くのが好き。いろいろと感じるのが好き。
ワタシのジャズ好きを知ったナナが、 「亡くなったパパ(父の方です)も、ジャズが好きだったなー、そういえば」と、ある日珍しくしみじみと話してくれたことがありまして。
「パパは道楽者でさ、着るものと音楽にはうるさい人で、あたしはまたそれがイヤだったんだけど。 生前はパパのこと大っ嫌いとしか思えなかったけど、じょりぃと話してると、パパがジャズ聴いてたときのこととか思い出すよ」
「パパに関してあんまりいい思い出ないけど、それでも日曜の午後とかにジャズ聴いてるときのパパはなんとなく好きで。あたしにジャケット見せながらなんかポツポツ話してくれたな、そういえば。興味なかったから、何話してくれてたかなんて、全然覚えてないけど」
「じゃあ、けっこう、コレクションしてたのかな」とワタシ。 「うん。信じられないくらいあったよ。レコード」 「うわ。 今、それないの?」 「家建て直すときに、みんな処分されちゃったみたい。もったいないね」 「ぐうううう。 も、もったいない・・・。今度実家に行ったときに、探してみてよ。 お父さんがどんなの聴いてたか、知りたいな」 「うん。そうだね。一応探してみる。でも期待しないで」
何しろ、蔵のあるような家でしたからね。ナナの実家は。 みーんな壊しちゃって、ナナ曰く「なんでも鑑定団に出せば(笑)値が付きそうなものもけっこうあったのに、叔父がすべて処分してしまったよ。もったいねー」ということだったので、まあ、期待はしていなかったんですが。 相手がナナですから、「ころっ」と忘れられてしまう可能性も大でしたし。
しかしその後しばらくして「かろうじて、これだけあった」と、ナナが何枚か持ってきてくれまして。 「あたしも聴いてみたいな。うち、レコードのプレーヤーないの。じょりぃ、ダビングしてくれる?」 「うん。もちろん。 ワタシも録らせてもらっていい?」 「もちろんどうぞ」
ナナが持ってきたのは、ジョン・コルトレーンが2枚、マイルス・デイヴィスが1枚、チャールズ・ミンガスが1枚、ディジー・ガレスピー&チャーリー・パーカーのものが1枚、渡辺貞夫が1枚、ジュリー・ロンドンが1枚という、モダン系のかーなーりーの充実なラインナップ。 まあ、ジュリー・ロンドンは気持ちアイドルというかお色気入ってるとはいえ、この人の声はいいですよ。 あとはクラシックが1枚。カラヤンによる「ドイツ音楽の旅」。オムニバスだけど、どの曲も素晴らしいです。 そしてなぜか「よいこのクリスマスとお正月」。 「これ、いいでしょ?(笑) これもちゃんと録ってね」とナナ。 ホントいいね、これ。
「コルトレーンだけは名前覚えてるの。曲は覚えてないけど」とナナ。 そんなわけで、ワタシが一番最初に針を落としてみたのが、コルトレーンの2枚のうちの1枚「My Favorite Things」だったのですが。
ワタシはジャズの中でもどちらかというと、モダン系よりも1920年代から1950年代くらいまでの、古めのモノの方がさらに好きなんです。モダンも好きですけどね。 こう、演奏してる人も、聴いてる人も楽しいという点で、昔のやつの方が好みなのでございます。
コルトレーンはモダン系になるわけですが、けっこう難解めな人で、自分から好んで聴いたことはなかったのです。
しかーし。
「My Favorite Things」は、コルトレーンにしてはやさしめの1枚でですね。 特にアルバムタイトルにもなっている「My Favorite Things」は、こう、聴いていて不思議な気持ちになれるというか、浮遊できるというか、穏やかだけど心許ない、という感じで。 知らない方は「JRの京都のCMで使われている曲」と言えばわかりやすいでしょうか。 「そうだ、京都行こう」の名コピーとともに、けっこう長く使われておりますよね。 (あのCMのはコルトレーンによるものではありませんが) メロディは同じものですが、まるで別の曲でございますよ。
「My Favorite Things」・・・「私のお気に入り」でしたか、邦題は。違うかな。 「お気に入り」とはいうものの、なんだか自分をせつなく惑わせるような、そんなお気に入り。 見れば悲しくなるのでいっそどこかへやってしまいたいけれど、手放せない、みたいな。 そんな「お気に入り」。 この曲から受ける、ワタシの印象でございます。
ぶちぶちと、傷のためのノイズがたくさん入ったレコード。 ナナの父親は、どんな気持ちでもって、このレコード聴いていたんだろう、なんて、どうしたって考えてしまいます。 このノイズのうち、一体いくつのノイズを、どのノイズをナナの父親も聴いていたのかな、とか。 ナナがまだ20代の頃に、人生の幕を自ら降ろしてしまったナナのお父さん。 ワタシに彼の気持ちなど到底わかるはずないのですけれど。 もちろん、残されてしまったナナの気持ちも。 でも、こんな風に好きだった音楽を共有することはできるのです。 音楽って素晴らしい。月並みですけど。
何本かダビングしてナナに渡すときに 「どうせレコード聴けないんでしょ。これ(My Favorite Things)、ちょーだい」と、ずーずーしく切り出してみました。 モノに執着のないヤツですので「いいよ」とあっさり言うかなと思っていたら 「やるわけないじゃん(笑)」
そうだよな。と、なんだかホッとしたりして。
最近になって、ナナの気持ちに変化が出てきました。 「あんなに嫌いで拒絶していたパパのことを、最近はなんとなく懐かしく思うんだ。 考えないようにしてきたけど、当時は軽蔑していたパパの気持ちとか行動とか、今はなんとなく理解できるような気がしてきて」 「そう」 「なんか、パパが亡くなったことで、あたし、ずっと自分を責めていたフシもあったのね。 あたしが悪くてそうなったわけじゃ全然ないんだけど、何かできることがあったんじゃないか、とかさ」 「・・・・」 「全然悲しくなかったの。そのとき。それもイヤだった、自分で」 「・・・・」 「でも最近は、自分も許せるし、パパのしたことも許せるっていうか・・・・よくわかんないけど」 「うん」 「じょりぃが前、チェット・ベイカーのことでなんか書いてたじゃない? 最悪の人生になっても、その愚かさの中にもやさしさや愛しさや美しさがあるって。 なんかさ、ふーん、て思ったりしてさ」 「あう」 <恥ずかしいワタシ
「あたしの両親のこと、ほめてくれてありがとう。パパ(ダンナさま)ですら、言ってくれなかったから。 本当に嬉しかった」
ナナがどんな気持ちで「My Favorite Things」を聴いているのか、もちろんワタシにはさっぱりわかりません。 亡くなった父上の気持ちも。
それでもワタシは「何か」を埋めたくて、復刻版のレコードを手に入れました。 CDでなくて、どうしてもレコードがよかったのです。 ぱりっとした青いジャケットは、飾っておいても様になります。 「My Favorite Things」を聴きながら、青いジャケットを眺めながら、 ある親子の、お互い伝えきれなかったせつない気持ちに、思いを馳せるワタシであります。
「ねえ、じょりぃ、明日って忙しい?」
「うん?普通に忙しい」
「じゃあいいや」
「何?」
「だって忙しいんでしょ」
「忙しくてもなんとかするから教えて」
「(笑) 明日、うちの夕飯をお鍋にしようと思うんですけど、よかったらじょりぃもいかがかなと思ったんですけど、やっぱりいいです」
「なにそれ!行かせて下さい」
「へーきなの?」
「うん」
「でもお鍋にしないかも。あたしの気分次第では。そしたらしょうゆごはんとかでもいい?(笑)」
「しょうゆごはんとは?」
「ごはんにしょうゆをかけて食べるのさ」
「・・・いいよ。食べる」
「あるいは次女ちゃんがチャーハンを作ってくれるかも。最近凝っているから」
「へー、すごいね、2年生で。どんなチャーハン?」
「しょうゆチャーハン」
「またしょうゆですか」
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2年前の冬の、ある日の電話です。 ちなみに無事、おいしいお鍋をいただきました。 しょうゆチャーハンも(ナルト入り)。 おなかいぱーい。 げふ。
本日まりあさんと電話で話しましたら、「ナナさんのコーナーが薄いんじゃない?」とご忠告をいただきまして。 ありがとう、まりあ。見ていてくれているのですね。 こう、冗長な割に、盛り上がりがない、ということだと思うのですが。 なのでちょっと濃ゆくしてみようかと、意気込んでいるワタシでございます。
ナナとは、あちらの気まぐれ次第で突然交友がまた途切れることもあるかも、と杞憂している気弱なじょりぃは、ナナと接触のあった日は、なんと、ちまちま記録しておいてあります。 こう、会えなくなってからも、それを読み返して自分を慰めよう、という魂胆です。 立場が弱すぎる上に、せこいですね。 なんというか、こう、ナナとワタシの関係に、アメリカと日本の力関係の縮図を見るような思いであります。
せっかく記録があるので、こちらの「ナナとワタシ」では、その記録からの抜粋文章を「ぼこっ」と載せてみたりするので(もちろん、語尾の表現や細かいところはいじってあります)、前後関係がほっとんどわからないかと思いますが。 ご勘弁ください。
以下、去年の2月の出来事です。
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3時頃ナナんち着いた。 いつもは末子ちゃんが「あがっていいよ」と玄関を開けてくれるのですが、今日はママが開けてくれたので 「末子ちゃん、寝ちゃってるの?」と聞いたら 「うん。ぐっすり。・・・さみしい?(笑)」 「うん。さみしい」 「帰りの車の中で“今日、じょりぃちゃんが来るよ”って話したら“あたしのお友達のじょりぃちゃん?”て楽しみにしてたんだけど。義妹のうちで疲れたみたい」
というわけで、久しぶりにふたりでゆっくりとおしゃべり。 末子ちゃんが起きないように、ひそひそとしゃべる。いい感じ。 3/8はどこに行こうか、という話を主にしていて。
「あたしは○○園という梅林もいいかなあと思って、電話して調べておいたんだから」<大得意のナナ 「へえ!どこに電話したの?」 「○○市の商工観光課というところ」 「ということは、このへんのタウンページにも載っていないのでは?」 「そうだよー!わざわざ番号案内で聞いてまで、調べたんだから」<大得意パート2 「それはそれは」
ということで、××村のいちご狩りと、○○の梅林(紅梅がちょうどいいらしい)とどっちにしようねーなんて話したり、温泉宿の話をしたり。 △△温泉のとある宿は“るるぶ”に「相撲で館内が統一されており・・」と書いてあったのを見て、二人で爆笑。
じょ「相撲で統一って、どんなやねん」 ナ「あははははは。 それはもう、相撲なんでしょ」 じょ「おかみが客を張り手で出迎えるとか?でもそれじゃ。押し出しちゃうよね」 ナ「客室には、浴衣の代わりに。まわしが置いてあったりして」 じょ「フロントには行司がいたりしてね」 ナ「料理はもちろん、ちゃんこ」 じょ「食事の前には稽古、と時間割が決まっている旅館」 ナ「客室の柱とか、張り手練習用の専用のが使ってあったりして。いろんな客が使い込んだ跡が汗染みとともに残っていたり」 じょ「そして部屋には畳の代わりに・・・」 一緒に「土俵!」
もはや笑いでしゃべれないふたり。
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・・・・・・・。
せっかくなので、甘い雰囲気のものとか、意味深な感じのものにしようと意気込んでいたのに、 つい、笑えるものをチョイスしてしまいました。 もっと、こう、ねっとりしたコーナーにしたいんですけどね。どうも恥ずかしいですねやはり。 って、「ねっとり」ってイヤですね。 そもそもワタシとナナの関係が「あっさり」しているんだから無理な話でございました。 やっぱり薄いな、こりゃ。
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