やんの読書日記
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2005年07月30日(土) カリジェの世界

安野光雅解説
日本放送出版協会

スイスの村の絵本作家
アロイス・カリジェはゼリーナ・ヘンツの書いた文に
挿絵をつけた絵本で有名です
「大雪」「ウルスリのすず」「フルリーナと山の鳥」

どれもスイスの山で家族と暮らし、自然の中で労働の喜び
生命の輝きを自分の体で感じ取っている少年と少女の姿が
とてもいきいきしています。

この本は、挿絵作家でデザイナーのカリジェの故郷スイスを
空想の旅と称して出かけるところから始まっています。
カリジェがスイスの観光ポスターやオリンプックのポスターを
描いていたこと、スイスの村で詩人のヘンツにであって
絵本を共同制作したこと。老年はホームで過ごしたこと
最後の作品はキリストの最後であったこと。

挿絵いりのスイスの空気が感じられるさわやかな解説書です


2005年07月29日(金) ラストサマー

トラベリングパンツの最終作
今度は4人が大学へ進学するため
バラバラになってしまう直前の最後の夏だ。
家族と意見があわずに悩んだり、自分を偽ったり
傷つきたくなくて後ろ向きになってしまったり
そんな少女たちが最後はパンツの力を借りずに
自分の力で解決する。

レーナも、ビーも、カルメンも、ティビーも
家族と離れることは人生の中では当たり前と思っていても
心の中では自分の居場所を探し続けていることが
じわじわと伝わってきた。

レーナは父親と理解しあうことができた
ビーは二年前のつらい経験から解き放たれた
カルメンは2度目の父と母の間にできた子のことで疎外感を味わうが
出産を気に家族との絆を強くした
ティビーは妹の怪我のことで悩んだが結果的に強くなれた。

自分が進学で家を出るとき、心の中に押し込めてきたもの
それを再確認できた。
自分の居場所は家族の中に、
友達の心の中にあるのだということを


2005年07月24日(日) 帰郷 下

ロザムンド・ピルチャー作
中村妙子訳
日向房

海軍婦人舞台に入隊して働くジュディスは
シンガポールに駐在している父母と妹の安否が分からないまま
終戦を迎える。
恋人が二度と帰ってこないと思い込んだ友人のラヴデーが
別の男性と結婚するのを見て、自分も家族を待つことに
不安を感じはじめる。

父母が戦争で死に、
妹だけがどこかで生きていることを知る。
そして妹を見つけ出して、帰郷する。
ここの場面が一番感動的だ。
14歳で離れ離れになり、
二度と父母と再開できなかった彼女にとって妹が生きている、
ということは何にもまして大きな希望だったろうと思う。

自分の属する場所
それがなかったジュディスにとって、
自分の家を持ち家族といっしょに住むことが
幸せになるための最大の目的だった。
あきらめず最後の最後までその幸せを追求するジュディスと
彼女を家族のように思い、接したルイス家の人の
愛情のものがたり完結。


2005年07月20日(水) 幼な子の歌 タゴール詩集

神戸朋子訳
日本アジア文学協会

インドの詩人タゴール
初めて聞いたのは「家なき鳥」を読んだとき
主人公の少女が持参金目当てに結婚させられ
夫はまもなく死に、せめてもの記念にと舅にもらったのが
タゴールの詩集。少女が姑にこきつかわれ、捨てられる
という悲惨な事件があった時でも、手放さなかった詩集。

どんな内容なのか知るまでに2年以上もかかってしまった
タゴールはインドの詩聖と呼ばれる児童文学者
自身は恵まれた環境に育ってはいるが、母親が
幼いときに死んでいて、母の愛を知らない。
自分の娘も幼いときに失い、妻もなくしたタゴールの
心の叫びが著わされている。

母を想う気持ち
娘を失った悲しみを乗り越えて
幼い子へのいつくしみ、親子の幸せが
ちからづよく描かれていて圧倒される。
子どもにこんなにも愛を注ぐことができる
親が今にも昔にもいるのだろうか
母を素直にいつくしむことのできる子が
いるのだろうか。
どこかに忘れてきてしまった、本来の愛の形を
感じることができた。
率直で前向きなそのまなざしが
「家なき鳥の少女」をとらえたのだと思った。

「家なき鳥」という題の詩はどこにあるのだろう・・・




2005年07月12日(火) 帰郷 中

ロザムンド・ピルチャー作
中村妙子訳
日向房

18歳になり寄宿学校を優等で卒業したジュディス
第二次世界大戦がまさに始まろうとするころ
恋をし、大人になっていく自分を知り
前をむいて行こうとするとき
自分にはないもの、自分が帰る場所を見つけようと
思い立つジュディス。

両親と妹は相変わらずシンガポールで駐在員生活
卒業を期に、家族に会いに行こうと計画していたのを
急遽変更して軍務につくために勉強を始める。
そのきっかけを作ったのが初恋の人とのわかれだった。

ナンチェロー屋敷の穏やかで上品な生活がこの巻にも
描かれているが、家族同然に扱ってもらっていながら
やはり自分の家では無いことをさとり、ひとり立ちして行こうと
決意するジュディスがけなげだ。
下巻では厳しい展開が待っているのだろうか。


2005年07月11日(月) 帰郷 上

ロザムンド・ピルチャー作
中村妙子訳
日向房



冬至まで、スコットランドの早春、双子座の星のもとに
などの作者ピルチャーの自伝的小説。
彼女の作品に共通しているのはお金持ちの女性
偶然の出会い、新しい展開
古きよき時代の家族の愛をていねいに
きれいに描いている。

主人公ジュディスは14歳で
イギリスのコーンワルの寄宿学校に転校し
家族は父の勤務先のスリランカへ。
休暇には伯母の家や友人のラヴデーのお屋敷に滞在することになったが
持ち前の上品な明るさ、気立てのよさで誰からも好かれる
娘へと育っていく。
第二次大戦前夜と言う暗い時期
伯母の財産を相続してお
金持ちのお嬢様的な生活に入ったのにもかかわらず
自分の立場をわきまえて、
地に足をつけた賢い生き方をするジュディスが
かわいらしく、さわやかで、たのもしい。
これからどんな大人の女性になって行くのだろうか。
コーンワルの海の風や、花の香りまで薫ってくるような
その表現に癒されながら、中、下も読みたい。


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